御医者様コンビSSです。
もうなんというか…仕掛け人は常にアンバーですね。
この子は基本、たのしい事のためなら何でもやらかす子です(笑)
*attention*
・白昼夢設定お医者様コンビ
・アンバーの所為でちょっぴりトラブル
・相変わらずの残念クオリティ
・終着点が行方不明になった結果のぶった切り
・ジェイドは強引。そしてある意味鈍感らしい。
・ともあれ、ナハトさん、本当にすみません…!
以上が大丈夫な方は、追記からどうぞー!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
御医者様コンビSSです。
もうなんというか…仕掛け人は常にアンバーですね。
この子は基本、たのしい事のためなら何でもやらかす子です(笑)
*attention*
・白昼夢設定お医者様コンビ
・アンバーの所為でちょっぴりトラブル
・相変わらずの残念クオリティ
・終着点が行方不明になった結果のぶった切り
・ジェイドは強引。そしてある意味鈍感らしい。
・ともあれ、ナハトさん、本当にすみません…!
以上が大丈夫な方は、追記からどうぞー!
―― メンゲレには、目の前で起きていることが、信じられなかった。
ジェイドにしては珍しく、半開きになっていたドア。
一体どうしてだろう?そう思いつつ、声をかけようとしたのに……
メンゲレには、それが出来なかった。
出来なくなったのは……半開きのドアから見えた、光景の所為。
一瞬、時間が止まったような気さえした。
いっそ、止まってしまえばいいと思った。
―― どうして?
何時もの、彼の机。
見慣れた緑髪の彼に口づけているのは……
黄色の髪の、参謀部隊の統率官の姿。
ほんの少し背伸びをした体制で、重なった影。
―― どうして?何で、彼が……?
ドアの方に背を向けているジェイドの表情は見えなかったが、
アンバーは穏やかな笑みを浮かべていた。
そして、何よりショックだったのは……ジェイドが、拒んでいなかったこと。
普段の彼なら、本気の拒絶なら……きっと、ジェイドの方が上のはずなのに。
彼が拒んでいるようには、見えなかった。
もしかしたら、ほんの一瞬だったかもしれない。
でも、その"一瞬"は、メンゲレにとってあまりに長すぎた。
メンゲレは逃げるように、その場を去った。
ドアを閉めて、座り込む。
息が荒くなるのは、走ったせいか、それとも……?
「なん、で……」
小さく、呟く。
鮮明に焼きついてしまった、今の光景が頭から離れない。
まるで、カメラのシャッターを押したかの如く記録されてしまった、先刻の光景。
ずきずきと、胸が痛んだ。
―― 嗚呼、女々しい。
どうしてこんなに、傷ついているのだろう。
"信じていたかったから"だろうか。彼の言葉を。
―― ずっと傍に居てください。
命令にもよく似た、その口調で。
彼は、求めてくれた。自分が傍に居る事を。
穏やかに微笑んで、時に妖艶な表情で翻弄して、
優しく触れて、キスをして、だきしめて。
その行為も、全て虚像だったのかもしれない。
―― あくまで興味の対象。
途中から見方が変わった、と言っていたジェイドのその言葉が
もしかしたら、偽りだったのかもしれない。
もしかしたら彼は、"飽きてしまった"のかもしれない。
そんなことない、あるはずないと信じたいのに。
そんなネガティブな思考に落ちてしまうほど……
今し方メンゲレが目にした光景は、衝撃的なものだった。
***
その日以来、メンゲレは極力、ジェイドと顔を合わせないようにした。
彼に話しかけられて普通に会話ができるほど、メンゲレも大人ではなかったから。
そして何より……
ジェイドがいつも通りなのが、かえって辛かった。
メンゲレと目があった時、後ろめたそうな顔でもしてくれれば、
その方がよかったのだろうか?
否、それでもメンゲレの気持ちが晴れることは恐らくないのだろうけれど……
メンゲレが視線を逸らせば、驚いた顔をするばかり。
その表情が、より一層メンゲレの心を深く抉った。
―― どうして。
僕が気づいていないと思っているから?
だから、いつも通りに接することが出来るんですか?
聞きたいことは、山ほどあるのに、それを口に出すことは出来なくて。
メンゲレは、ただただジェイドを避けた。
多忙な彼のことだ。
少しタイミングをずらしてしまえば、会う機会はなくなる。
互いに顔を合わせることはあっても、話しかけられることは、なかった。
講義の後は誰よりも早くその部屋から姿を消し、
仕事を言いつけられた時にはどうにか口実を作って逃げさえした。
それくらい……精神的に、いっぱいいっぱいだった。
***
そんな日が続いたある日のこと。
何時ものように講義室を出て、誰にも会わないうちに早足で歩き、
医療棟にある部屋に向かっていたメンゲレの手を素早く掴んだのは、むろんジェイドで。
真剣で、やや険しい表情をした彼はまっすぐにメンゲレを見つめたまま、問うた。
「メンゲレ、どうして僕を避けるんですか?」
「別に、避けてなんか……」
「僕の顔を見て、それを言いなさい」
くい、と顎を掴まれ目線を合わせられる。
メンゲレは反射的にその手を叩いた。
ジェイドは顔を顰めて、"何をするんですか"と問う。
「此処は廊下でしょう。やめてください」
メンゲレは出来るだけ冷たい声で言って、ジェイドの拘束を解こうとした。
それでも、やはり外れない。
ほら、これだけ強い力だ。
"あの時"だって、拒もうと思えば拒めただろうに……
そうしなかったのは、やっぱり……?
メンゲレは、思う。
ジェイドは相変わらず怪訝そうな顔をしたまま、いった。
「……言葉で言ってくれないと、わからないでしょう?」
僕が何かしましたか?
そういいながら"いつものように"口づけようとするジェイド。
メンゲレは思い出す。あの部屋で見えた、光景を。
―― 彼とも、同じように……
「嫌……っ」
拒むメンゲレに、ジェイドは驚く。
無意識なのだろうが、自己防衛の術が発動していて。
強い魔力ではたかれて、ジェイドは手を離していた。
メンゲレは自分の身体を抱きかかえるような格好で、その場に座り込む。
その肩は、怯えているかのように小さく震えていた。
ジェイドは暫しその姿を見つめて、小さく息を吐く。
「……とりあえず、部屋に入りましょう。話は、それからです」
そんなところで座り込んでいては迷惑でしょう?
そう言ってメンゲレを立ち上がらせるジェイドの手に迷いはなかった。
また魔力で拒絶されるかもしれない、という危惧はなかったのだろうか。
事実、魔術が発動することはなかった。
メンゲレはほとんど引きずられるような格好で部屋に戻ることになった。
***
「……それで。なぜ、僕を避けるのですか?
あなたのことは大概わかりますが……今回ばかりは、さっぱりわかりません。
僕が、何かしましたか……?」
問いかけるジェイドの声に滲むのは、何処までも困惑。ただそれだけ。
メンゲレは視線を上げて、暫し躊躇った後……言った。
「思い当たることは、何もないのですか……?」
無意識のうちに、咎めるような口調になっていた。
メンゲレのそんな声に、ジェイドは驚いたように目を見開く。
「……思い当たる、ですか……?」
悩むような顔をするジェイド。
しらばっくれた様な表情ではないが、如何せん表情を隠すのが上手い彼のこと。
その表情でさえも偽りであるといわれてしまえば、納得はできてしまって。
―― 信じることができないのも、また辛い。
疑うことしかできない自分を心底恨みながら、
メンゲレは目の前にいる緑髪の彼を、見つめた。
と、その時。
"思い当たること"があったのか、ジェイドの表情が変化した。
「……まさか、とは思いますが……アンバーとの、ことですか」
ジェイドが気まずそうに、問う。メンゲレは小さく頷いた。
それを見て"なるほど"と呟く。
「……貴方が僕を避けた理由は、よくわかりました」
「…………」
無言の、時。
ジェイドは小さく溜息を吐いて、"何から説明すべきでしょう"と呟いた。
そして、その場に座り込んだままのメンゲレに視線を合わせて、言う。
「信じてもらえないかもしれませんが……あれは、事故です。
もっと言うのであれば、アンバーの悪戯」
ジェイドは言う。
弁解するような口調ではなかったが、どこかきまり悪げ。
「もっとも、僕の警戒が甘かった、というのも原因の一つですが……
貴方が心配するような意味は、持っていませんよ」
「だったら、何故……?」
―― なぜ、拒まなかったのですか。
一番の、疑問。
メンゲレの質問に、ジェイドは苦笑する。
"拒んでいないように見えましたか"と訊ねる。
「アンバーの拘束術を解けるほど、僕は強い魔術を使えません……
あれでも、全力で拒んだのですよ。僕だって、したくてしたわけじゃない。
思い人がいるのに、あんなことを……
というか、それを見られていて、挙句避けられたという事態になって、
余計に僕は傷ついていますけどね」
"不覚でした"と言いながら溜息を吐くジェイド。
―― まさかこんなに厄介なことになるなんて。
心の中で呟く。
***
そう、ほんの一瞬の油断だった。
『ジェイドー、暇』
『僕は暇じゃないのです。早く自分の部隊にお戻りなさい』
『だから、暇なんだってば……』
『暇暇、って言っててまたメンゲレに手を出したら容赦しませんよ?』
『本当に溺愛してるね。羨ましい限り』
本気の脅しにかかったけれど、アンバーはコロコロと笑うばかり。
―― その時に気づけばよかった。
アンバーが悪戯っ子のような笑みを浮かべたことに。
書類の片づけに手間取っていたジェイドは顔を上げる事さえしなかった。
『ねぇ、ジェイド』
『なんですか』
『メンゲレ君に手を出しちゃダメっていうならさ……』
―― 君に手を出すのは?
きっと、アンバーは近づいてくるメンゲレの魔力に気づいていたのだろう。
だからこそ、あのタイミングで……
『何を……!?』
『拘束系の魔術なら僕の方が上だよ……?』
ニコリ、と笑って……アンバーは、ジェイドに軽く口づけて見せた。
ほんの少し。軽く触れるだけ。
―― そう、あくまでも遊び。
遠ざかるメンゲレの魔力を感じて"ちょっとやり過ぎたかな"と呟いたアンバー。
魔術が解けるや否や、ジェイドに思い切り叩かれたのは言うまでもないのだけれど……
『いきなり何をするかと思ったら……っ』
『油断する気味が悪いんだよ。軽くしただけでしょ?』
『そういう問題ではありませんッ!』
本気で怒るジェイドに、アンバーは楽しそうに笑う。
『君のそういう顔を見るのが楽しいんだってば。ごめんごめん』
『……今度やったら本気で怒りますよ』
はぁ、と溜息を吐いてジェイドは思ったのだ。
―― 忘れよう。
仕事に意識を奪われていたとはいえ、屈辱的なことだった。
記憶にとどめておくことも、馬鹿馬鹿しいかつ屈辱的。
ならば、さっさと忘れてしまえばいい……どうせ、自分とアンバーしか知らぬこと。
そう思って。
……ジェイドは、気づいていなかった。
彼が、メンゲレが、それを見て大きな誤解をしていることに……
***
その時のことを、掻い摘んで説明してからジェイドは言った。
「だから、事故なんです。油断した僕が悪いのは事実ですが……
不本意を通り越して、不快でしかなかったです。
彼は大切な友人で、仲間ですが、今度同じことをしたら……
今度は、僕は容赦しないと言い切れます」
その言葉に嘘は感じないけれど、メンゲレはその言葉さえも信じきることは出来なくて。
相変わらず俯いたまま、顔を上げることが出来ない。
「……どうしたら、信じてくれますか?」
ねぇ?と問うジェイドの声は、どこか不安げ。
メンゲレが視線を上げれば、困ったような、どこか寂しげな表情の、彼。
揺らいではいけないと自分に言い聞かせても、
目の前で彼の姿を、表情を見ていれば、それは無理な相談。
だからだろうか。
メンゲレは再び伸ばされたジェイドの手を拒むことは、出来なかった。
長い黒髪を梳いて、頬に触れる、ジェイドの手。
「こうして触れることも、キスすることも、抱きしめることも……
全て虚像と、貴方が思うのならば……
貴方が、そんな疑いを持つことが出来ないほどに、深く愛せばよいのですか?」
訊ねる声のトーンは本気で。
メンゲレは身体を強張らせる。
ジェイドはくすり、と笑った。
「……ねぇ、メンゲレ。僕が本当に貴方に飽きたのなら……
こんなに必死に弁解しようとすると思います?
無意味でしょう、必要なくなったものを追うなんて」
「そ、れは……」
一理ある。
寧ろ、その通りと言えるだろう。
無意味なことをするようなジェイドじゃない。
彼が必死にメンゲレを繋ぎとめようとするのは、きっと……
―― でも。
それでも頷こうとしないメンゲレを見て、ジェイドはまた溜息を吐いた。
「それでも貴方が疑うというのなら……それならそれで、構いません。
でも僕は本気なので、手放すつもりはさらさらありませんよ。
貴方に魔力で拒まれようとも、離しはしない」
―― その覚悟だけは、しておきなさいね。
静かに微笑んで、ジェイドはメンゲレの唇を塞ぐ。
「んぅ……ふ……っ」
一瞬、なんてものじゃない。
深く、長い口づけ。
本気だと証明してやると言わんばかりのそれ。
拒もうと必死になればなるほどジェイドの舌に巧みに翻弄されて。
やっとのことで解放したかと思えば、
ジェイドは静かな声で、言う。静かで、強い声で。
「……もう一度、信じてくださいよ。メンゲレ。
僕、もう二度と油断しないと誓いますから」
"油断するな"と言われるのは、メンゲレの方。
―― 嗚呼、いつもと逆じゃないですか。
そう思いつつ、頷きそうになっている自分に気づいた。
―― 誤解の果ての ――
(油断したことが僕の罪だというのなら、その償いはもうしました。
彼に拒まれること。それが僕にとっての罰なのですから)