ワルキューレコンビでのお話です。
先程の小説の続きチックなノリで…
こういう設定、とても好きなのです…←こら
*attention*
ワルキューレコンビでのお話です
シリアスめなお話です
「Hallucination」の続き的なお話です
見せられた幻覚の所為で怯えて武器も取れなくなる大佐殿を書きたくて…←
幻覚への恐怖心で身がすくんでるの、萌えると思います…(こら)
そしてそれを優しくサポートしようとするヘフテンさんが可愛いと思います…!
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
雨でも降りだしそうな空の下……――
ヘフテンとシュタウフェンベルクは一緒に魔獣討伐の任務に出掛けていた。
決して魔獣も強い種類ではないという。
数もそんなに多くはないらしいし、二人で行く必要はないといっていたシュタウフェンベルクだったが……
ヘフテンが一緒に行くといって聞かなかったのだ。
というのも、先日の一件……
シュタウフェンベルクがフロムに幻覚魔術をかけられた一件……
まだあれからあまり時間もたっていない。
シュタウフェンベルク一人で任務に行かせることなど、出来るはずがない。
そうしつこく食い下がって、ヘフテンはシュタウフェンベルクと一緒に出掛けてきたのだった。
足元の悪い道……そこを歩きながら、ヘフテンは心配そうにシュタウフェンベルクの方を見た。
そして、小さく首を傾げつつ彼に訊ねる。
「本当に大丈夫ですか、大佐?」
まだ、精神的に回復しているとは思いにくい。
事実、ヘフテンが傍に居ない時、彼は酷く動揺した様子を見せていたとジェイドも言っていた。
あれから数日たった今でも、何ともないフリを装いつつヘフテンの姿が見えない時の彼は、
少し落ち着きがないように見えると、彼の様子を見ていたジェイドが告げていた。
だから、ヘフテンも出来る限りシュタウフェンベルクの傍に居るようにしていた。
こうして、一緒に任務に行くときも……――
シュタウフェンベルクはヘフテンの表情を見て、小さく頷いた。
そして、少し微笑むような表情を浮かべつつ、言う。
「あぁ、平気だ」
「本当ですね?……無理はしないでくださいね?」
ヘフテンは心配そうにシュタウフェンベルクに言う。
彼はすぐに無理をする。
殊更、自分に迷惑をかけまいとするときは……
そのことをヘフテンはよくよく理解している。
彼の言葉を聞いてシュタウフェンベルクはこくりと頷く。
それと同時……
茂みから魔獣が飛び出してきた。
はっとしたように、ヘフテンは小銃を取り出して、その魔獣を撃つ。
シュタウフェンベルクも魔獣の攻撃を素早く躱し、
自分の武器であるマスケット銃を空間移動術で取り出した。
ヘフテンと一緒に戦うのだ、そんなに魔力の消費はないだろう。
そう思いつつ、魔獣にマスケットを向けた……
―― その瞬間。
シュタウフェンベルクの頭に、ある光景が過った。
目の前に立っている兄達。
それに武器を向ける自分。
冷たいマスケット銃。
引き金にかけた指。
目の前で倒れる金髪の少年……
愛しい、愛しい、副官……――
その感覚がまだ、消えていない。
寧ろ、頭に色濃くその光景が焼き付いて、離れなくなった。
「……っ!」
ひゅ、と息が洩れる音がする。
それが自分の口から洩れたものだと気付くのに少しの時間を要した。
くらりと視界が歪んで、シュタウフェンベルクはその場に座り込んだ。
荒い呼吸が彼の口から零れる。
戦わなければ。
こんなことをしている場合ではない……
そう思うのに、一度落としたマスケット銃を拾い上げることは出来ない。
手が震えて、マスケットが握れない。
触れようとすればそれを拒絶するように体が竦む。
呼吸が上手く出来ない。
シュタウフェンベルクは胸の辺りを掴んで、蹲った。
そのまま、荒く息を吐き出す。
「は、ぁ……はぁ、は……っ」
そんな彼の様子に、ヘフテンも気づいた。
武器を拾うこともせずその場で蹲っているシュタウフェンベルク。
苦しげに息を吐いている彼は、魔獣に囲まれても武器を拾い上げる様子はない。
「大佐!?」
驚きつつ、ヘフテンは一人で彼を囲っている魔獣を小銃で蹴散らす。
そして、彼の傍にかがんで、彼の顔を覗き込みながら声をかけた。
「大佐、どうしたんですか、大佐……っ」
「っ、く……ぁ……嫌、だ……」
掠れた声で呟く声。
"嫌だ"と……
まるで、あの時のようだ。
ヘフテンは、そう思った。
フロムにかけられた魔術で幻覚に溺れる、彼の様子と被った。
完全にパニック状態の彼には自分の声など届かない。
それに気づいたヘフテンはぐっと唇を噛みしめた。
どうして彼がこんな状況になっているのかはわからないけれど、
まさかこのまま放っておくわけにはいかない。
しかし、魔獣はそんな二人を放っておいてなどくれない。
じりじりと迫ってくる魔獣を見て、ヘフテンは緑の瞳をぎらりと光らせた。
「っ、くっそぉ……!」
そういうと、ヘフテンは素早く懐に忍ばせていた爆弾を取り出した。
魔獣の数を、魔獣までの距離を、素早く計る。
そして、そのまま起動させた爆弾を魔獣たちが居る方へ放った。
これで全てを倒せたかはわからない。
しかし、とりあえずすぐに襲ってくることはないだろう。
そう思うと、ヘフテンはそっとシュタウフェンベルクの体を支えて、立ち上がった。
そして、少し大きな声で彼を呼ぶ。
「大佐、歩けますか?大丈夫ですから、少しだけ……
少しだけ、我慢してください……っ」
少しここを離れないと危険ですから。
ヘフテンはそういいながら彼の身体を支えて、一緒に歩き出す。
シュタウフェンベルクはまだ魘されているかのように"嫌だ……"と呟いている。
ヘフテンはそれを見て顔を歪めつつ、そっと彼の身体を支えて歩き出した。
彼が転ばないように、倒れないように気を付けながら……――
***
そうして、二人は魔獣たちと戦っていた場所から少し離れた場所にあった小屋に入った。
誰も使っていないらしいそこは酷く埃っぽかったが、
身を隠しながら休むにはちょうどよさそうだ。
シュタウフェンベルクの体を壁に寄りかからせ、ヘフテンは一息吐いた。
パニックを起こしていた様子の彼も、少し落ち着いたらしい。
先程のような荒い呼吸を吐いてもいなければ、怯えたような呟きを上げてはいない。
まだほんの少しだけ呼吸は速く、啜り泣いている様子ではあるけれど。
ヘフテンはそっと彼の顔を覗き込みながらそっと声をかけた。
「……大佐」
ヘフテンの声にシュタウフェンベルクはぴくりと肩を強張らせる。
そして、視線を上げた。
彼と目が合うと、ヘフテンはにっこりと笑いながら、言った。
「もう、落ち着きましたか?」
「……あぁ」
ヘフテンは彼の言葉にこくり、と頷きながら言う。
しかしシュタウフェンベルクはまだ目を伏せたままだ。
固く握りしめられた拳。
ヘフテンはそんな彼を見て眉を下げると、彼のすぐ隣に座ってから、声をかけた。
「どうしたんですか?」
いきなり武器を落とすなんて、彼らしくない。
ヘフテンの声を聞いて、シュタウフェンベルクは息を飲んだ。
そして、視線を彷徨わせる……
その後に、彼は小さく息を吐き出して、言った。
「……この前、の……」
「うん?」
掠れた彼の声。
気を付けて話を聞いていないと聞き逃してしまいそうだ。
シュタウフェンベルクは小さく掠れた声で、言った。
「この前の、幻影で……見たんだ。
私が、この手で……皆を、殺した」
そういいながらシュタウフェンベルクは自分の掌を見る。
その手はまだ、小さく震えていた。
ヘフテンはそんな彼の言葉を聞いて、少し顔を顰める。
穏やかとはいいがたい、彼の見た幻影……
その言葉を聴いて、ヘフテンは小さく首を傾げた。
「皆……?」
「メルツも、兄さんたちも……ヘフテン、も」
そういいながら、シュタウフェンベルクはヘフテンの方を見る。
その目が見る見るうちに潤んでいく。
はぁ、はぁ、と呼吸が荒くなる。
彼はそのまま、震える声で、呟くように言った。
「私の武器で、皆を……っ」
自分の武器で皆を殺した。
自分の武器で、皆を……――
そういったシュタウフェンベルクは再び泣き出した。
肩を震わせ、怯える彼。
シュタウフェンベルクが嫌だ、と小さく呟いているのは、
さっきマスケットを握ったためにあの幻影を思い出してしまったのだろう。
ヘフテンはそんな彼の様子を見て、少し顔を歪めた。
―― 嗚呼、だから。
だから、彼はマスケットを握った瞬間にあんなに動揺したのか。
だから彼は、あんなに怯えきった表情を浮かべたのか。
魔獣に囲まれていてもあんな風に武器を落としたのはこの間の幻覚の所為か……
「やっぱり……」
一緒に来てよかった、とヘフテンは小さく呟く。
もし、彼ひとりで任務に来て戦っていたら?
その最中に武器を握れなくなっていたら?
……想像するだけで、ぞっとする。
そしてヘフテンは俯いたままの彼にもう一度声をかけようとした。
しかし、それより先にシュタウフェンベルクが口を開く。
「……済まない、ヘフテン」
「え?」
どうしてこのタイミングで謝るんですか?とヘフテンは不思議そうな顔をする。
シュタウフェンベルクは顔を伏せたままくっと唇を噛む。
まだ整いきっていない呼吸が痛々しい。
ヘフテンは彼をせかすことなく、返答を待った。
少し、間をあけて……
シュタウフェンベルクはゆっくりと口を開いた。
「……また、お前に迷惑をかけて……」
シュタウフェンベルクはヘフテンにそういう。
あんな場所で武器を落として。
あんな状態で戦うことが出来なくなって……
またお前に迷惑をかけてしまった。
すまない、と詫びる彼。
ヘフテンはそれを見て顔を歪めた。
彼が詫びることではない。
そもそもの話、シュタウフェンベルクにフロムが幻術をかけたのが問題だ。
それが原因……
そう思うと、フロムのことが更に憎くなる。
ヘフテンは優しくシュタウフェンベルクを抱きしめた。
彼の肩が、小さく震える。
泣いている……ようだった。
思い出してしまった幻覚と、ヘフテンに迷惑をかけてしまったという事態……
その二つがシュタウフェンベルクのことを苦しめているのだろう。
ヘフテンはそんな彼を慰めようとするように、優しく彼を抱きしめる。
そのまま、そっと彼の頭を撫でていた。
「大丈夫ですよ、大佐……
貴方が不安なら、何度でも、何度でも言いますよ。
大佐、貴方が見たのはただの幻覚ですよ……」
何度でもいう。
貴方が安心できるまで。
ヘフテンは優しく彼を抱きしめたまま、何度も何度も、そういってやる。
シュタウフェンベルクは震えながらそっと彼の背中に腕を回した。
そうして触れていると、少しだけ安心できる。
彼は今、此処に居る。
"あれ"は夢だったのだと、そう思えるから……
そうしてヘフテンに抱きしめられているうちに、シュタウフェンベルクは眠ってしまっていた。
眠る、というよりは意識を失う、に近かっただろうか……
精神的な負荷に耐え切れずに意識を落としたように見えて、ヘフテンは辛そうな顔をする。
戦えない。
その状況は、騎士にとって……殊更シュタウフェンベルクのように責任感の強い騎士にとって、かなりな重荷となってしまったことだろう。
「大佐……本当に、あんまり無理は、しないでくださいね」
ヘフテンは寝入ってしまった彼を抱きしめたままそう呟く。
自分が彼を守る……
そう、改めて決意しながら。
―― Flightless bird ――
(恐怖心故、飛び方さえも忘れてしまった鳥のように
武器を握ることさえできなくなってしまった私はどうしたら…?)
(貴方が何かに怯えるのなら僕がそれから守りましょう。
貴方が武器を握れないなら僕が代わりに握りましょう
大丈夫。もうこれ以上、貴方を誰にも傷つけさせはしない…)
2014-6-16 21:24