ベルトルトさんと大佐殿のお話です。
ふと、ああいうやり取りをしているお二人を書きたくて…
何だかんだ照れさせられたりしつつ、お兄様たちが大好きな大佐殿が好きです←おい
*attention*
大佐殿とベルトルトさんのお話です
ほのぼのなお話です
名前だけですがアレクサンダーさんとヘフテンさんも出てきます…!
ベルトルトさんとああいう話をしている大佐殿を書きたくて…
照れさせられたり困らされたりしても、お兄様二人が好きな大佐殿を書きたくて…←
こういうご兄弟の関係が大好きです…♪
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
柔らかな風が吹き込む食堂。
昼時から少し外れたこの時間……
その部屋の一つの椅子に座っている黒髪の少年。
彼はそこにある机に突っ伏して眠っていた。
彼の手元には積み重なった書類。
それひとつ一つに先程まで目を通していたのだが、
その作業が終わるころにはすっかり疲れて……
ファイルに戻すと、彼はうたたねを始めたのだった。
ゆっくりと肩が上下する。
静かな寝息が口から洩れた。
いつもなら彼の傍に居る副官も、今は不在。
彼単独での仕事に赴いているのだ。
滅多にない作業だが、たまにはある。
大佐と一緒に居たい、なんて駄々を捏ねていた彼……
ヘフテンだったが、上官である彼がすばやく終わらせて帰っておいでといってやれば、
"頑張って早く終わらせてきます!"なんていって、張り切って出て行った。
そうして、傍に居て話相手になってくれる彼もいない。
おかげで、すっかり寝入ってしまっているのだった。
そんな彼の傍に歩み寄る、ひとつの影……
艶やかな黒髪が、揺れる。
机に突っ伏して眠っている彼……クラウスによく似た、彼の兄。
ベルトルトはゆっくりと弟に歩み寄ると、そっと彼の肩を揺らした。
「クラウス」
そろそろおきなよ、と小さく呼びかける。
すると小さくクラウスの肩が揺れた。
眼帯に隠れていない方の目がゆっくりと開いて、瞬く。
そしてクラウスは机に突っ伏していた半身を起こした。
そして自分の肩を揺らした相手……
兄のベルトルトを見てぼうっと瞬きをする。
そんな彼の様子を見て、ベルトルトはくすりと笑った。
「おはよう、クラウス。
お昼寝もそのあたりにしておいたらどうかな?」
あまり寝ると夜眠れないよ、とベルトルトは子供に言いきかせるような口調でクラウスにいった。
「クラウスが居眠りは、珍しいね」
朝の寝起きは壊滅的に悪いクラウスだが、昼にこうして居眠りをしている姿はあまり見ない。
そもそも、ベルトルトがこうして彼が仕事をしている場所に訪ねてくること自体が、
そう頻繁ではないといえばそれまでなのだけれど……
クラウスは何度か瞬きをしてから、少し寝ぼけたような声で、兄の名前を呼んだ。
「ん……ベルトルト、兄さん……」
一番上の兄。
彼の名前を呼んだクラウスはまだ若干寝ぼけている様子だ。
そんな彼を見ながら、ベルトルトは目を細める。
そして、ややからかうような口調で言った。
「今日は間違わなかったね、クラウス」
寝ぼけているときに時々兄二人の名を間違うクラウス。
その姿を思い出しつつベルトルトがそういうと、
クラウスは漸く目が覚めたようで、小さく苦笑を洩らして、言った。
「……アレクサンダー兄さんには、最近あってないな……」
間違えようがないかもしれない、とクラウスは言った。
ここ最近、もう一人の兄……アレクサンダーには会っていない。
仕事で家から離れている彼……久しぶりに会いたいな、とも思う。
ベルトルトも双子の片割れである彼の姿を思い浮かべて小さく頷いた。
「仕事が忙しいみたいだからね、アレクサンダーも」
そういいながらベルトルトは風で流れた黒髪をそっと掻き揚げる。
今日は少し風が強い。
陽射しがあるから、その風はとても心地よく感じるのだけれど……
おかげですぐに、髪が乱れてしまう。
そんな彼の様子を見つめて、クラウスは小さく呟くように言った。
「……そうか」
忙しいのなら仕方ない。
クラウスはそう思いつつ小さく息を吐き出した。
そして、窓の外を見つめた。
最近兄弟三人で会う機会も減ったな、と思う。
クラウスも仕事があるし、ベルトルトもそう。
そしてアレクサンダーもそうだ。三人で会うことは決して多くなくなっていた。
三人とも違う場所で働いているのだから仕方がないと思うし、
子供でないのだから恋しいとかそんなことはおもわないけれど……
久しぶりに顔を合わせて話をしたいなとは思う。
純粋な気持ちだった。
そんなことを考えているクラウスのことを見つめ、ベルトルトは目を細める。
そして、くすりと笑いながら、小さく首を傾げて、言った。
「恋しい?それいってやったら飛んでくると思うよ、あの子」
そんな彼の言葉にクラウスは驚いたようにベルトルトの方を見る。
今彼が言わんとしていたのは……
少し寂しいなと思っていることを、アレクサンダーに伝えてやったら?ということ。
それを言ったとしたら……まず間違いなく、アレクサンダーは此処に飛んでくることだろう。
ベルトルトのそんな言葉にクラウスは少し頬を赤くして首を振りかけたが……
すぐに、その顔を伏せた。
「や……うん……」
曖昧な返事になった。ベルトルトの言葉は否定は、出来ない。
最近あまり会えていなくて寂しいと思っていたのは事実だし、何より……
兄二人のことがクラウスも大切だと思っている。
だから"そんなこと考えていない"なんて言えない。
言葉に詰まって視線を彷徨わせるクラウスを見て、ベルトルトは小さく笑った。
そして、ぎゅっとクラウスの体を抱きしめる。
そんな兄の行動に、クラウスは大きく目を見開く。
「でも僕は遊びに来てるんだから今は僕と一緒に居てよ?」
ねぇクラウス?といいながら、ベルトルトはクラウスの頬にキスをした。
クラウスはさぁっと顔を赤くする。
昔はそうして挨拶を交わしたこともありはしたが、それもあくまで全員が幼かった頃のこと……
今思い出せば、あの過剰なスキンシップは少し恥ずかしい。
顔を赤くしたまま口をぱくぱくさせる彼を見て、ベルトルトは楽しそうに笑う。
「ふふ、クラウス可愛い」
「な、な……っ兄さん、私で遊ぶのは……っ!」
やめてくれ、とクラウスはベルトルトに抗議する。
ベルトルトは小さく笑いつつひらりと手を振って、"ごめんごめん"といった。
少し拗ねたような顔をしている、クラウス。
そんな彼を見つつ目を細めると、ベルトルトは"そうだ"と声を上げた。
「今日、一緒に外食でもしない?ヘフテン君も一緒にさ」
ベルトルトの提案に、クラウスは驚いたように目を見開く。
その瞳を幾度か瞬かせるとふっと表情を緩めて、言った。
「そうだな……確かに、良いかもしれない」
「ね?もう少ししたらヘフテン君も帰ってくるだろうし……
そうしたら、三人で出かけよう?クラウスも、もう仕事は終わってるんだろ?」
確認するようにベルトルトは言う。
クラウスは手元に置いていた書類を確認した。
全部、終わっている。
大丈夫だ、と小さく頷くと、ベルトルトは嬉しそうに笑った。
大事な弟と一緒に過ごせる。
その時間は、兄であるベルトルトにとっても嬉しいことで……
「またアレクサンダーに狡いって言われるかな」
そんなことを呟きつつ、彼はくすりと笑った。
今度アレクサンダーが返ってきたときには兄弟三人で何処かに出掛けたいな、と思いながら……――
―― 兄と弟 ――
(幾ら年月経ようとも変わらない関係
大切だと思うその気持ちは、兄も弟も同じもの)
(副官とはまた違う、大切だと思うその気持ち。
それはきっと血の繋がった兄弟だからこその絆……――)
2014-6-12 21:37