シュタウフェンベルクさんとクヴィルンハイムさんでのお話です。
このお二人の関係も大好きで、書かせていただきたくなりました…←
*attention*
シュタウフェンベルクさんとクヴィルンハイムさんのお話です
ほのぼのなお話です
ラストでちらっとヘフテンさんも出させていただいています…←
友人同士であるお二人を書きたくて…←
大佐殿の戦闘スタイル上こういう整備をしてる時もあるかなという妄想です…(おい)
一人で無理をする大佐殿を心配するクヴィルンハイムさんを書きたかったのです…
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かな自分の執務室で自身の武器の手入れをする、黒髪の少年。
床に座り、自分の武器であるマスケット銃を手にする、彼……
シュタウフェンベルクは、眼帯に覆われていない方の青い瞳を細める。
そして小さく息を吐き出すと、マスケット銃に魔力を込めた。
そうして準備をしたマスケット銃を空間移動術で取り出して戦うのが、
シュタウフェンベルクの戦闘スタイルだ。
自分の副官であるヘフテンと一緒に戦う時には消耗がそこまで激しくないが、
一人で戦わなければならなくなった場合……
幾つものマスケット銃を同時に取り出して戦わなければならなくなる。
その時に準備できているマスケット銃の数が少ない、足りないなんて事態は笑えない。
だから、こうして定期的に準備をすることにしていた。
ぼうっと光を放つ、マスケット銃。
込められる魔力。
シュタウフェンベルクはそれを一度、軽く構えてみる。
片手でも操ることが出来る、武器。
腕力は決して強くない彼でも十分な攻撃をすることが出来るそれの扱いに、
シュタウフェンベルクは慣れていた。
―― と、その時。
軽いノック音が聞こえた。
それにシュタウフェンベルクは顔を上げて、"どうぞ"と応える。
その声を聞いて、ドアをノックした人物はドアを開け、中に入ってきた。
そこに居る人物……クヴィルンハイムを見て、シュタウフェンベルクは瞬きをした。
そして、彼の名前を紡ぐ。
「……メルツ」
呼びなれた、その名。
それを聞いて、クヴィルンハイムは小さく頷く。
彼の手の中にあったのは、大量の書類。
ちらと顔を上げた時に目に映った文字から判別するに、
以前自分がクヴィルンハイムに手渡した書類……
自分の代わりに上官であるフロムに提出してほしいと頼んだ書類のようだ。
その返事、なのだろう。
クヴィルンハイムはドアを閉めて、シュタウフェンベルクの方へ歩み寄ってくる。
そして彼を見つめながら、小さく首を傾げて、訊ねた。
「今は、大丈夫でしたか?」
「あぁ、大丈夫だ。
時間があったから武器の手入れをしていて……」
シュタウフェンベルクはそういって頷く。
ヘフテンは今自室で書類の片づけをしてくれているはずだ。
この部屋……シュタウフェンベルクの部屋で手伝いをしてくれることもあるヘフテンだが、
今日はシュタウフェンベルクの命令で、自室で仕事をしている。
というのも、ここ最近、ヘフテンは書類を片付けきる前に自分にじゃれついてくるのだ。
そうして自分を慕い、好きだといってくれるのは嬉しいのだけれど……――
それで仕事にならないという状況は、勘弁願いたい。
無論、ヘフテンはごねた。
嫌だ、一緒に居たい、とごねた。
でも、そこを彼は少し強めに突っぱねて、部屋に戻らせた。
ほどほどにしろという思いを込めて、ちょっとした罰則がわりだ……
まぁ、仕事が終わったら甘やかしてやるつもりではいたのだけれど……
クヴィルンハイムは武器の手入れをしているシュタウフェンベルクの方を見て、言った。
「武器の手入れをしていたのですね?」
久しぶりに見ました、とクヴィルンハイムはいう。
元々攻撃系の魔術をよく使うタイプでない彼は、戦闘に出ることは稀。
だから、こうして武器を目にすることはあまりないのだ。
シュタウフェンベルクの武器も、見たのは久しぶりだった。
そんな彼の言葉にシュタウフェンベルクは小さく頷いた。
「あぁ、また任務に行くことになった時に整備出来ていないと問題があるからな……」
シュタウフェンベルクはそういいつつ、そっとマスケット銃の一つを撫でる。
そんなシュタウフェンベルクの姿を見て、クヴィルンハイムは目を細める。
そして、小さく溜め息を吐き出しつつ、シュタウフェンベルクに言った。
「あんまり無理はしないでくださいな」
そんなクヴィルンハイムの言葉に、彼は顔を上げる。
そして、小さく首を傾げると、呟く様な声で言った。
「無理、って……
私は普通の任務をこなしているだけだが……」
そんな彼の言葉に、クヴィルンハイムは溜め息を吐き出す。
そして、少しずれていた眼鏡を上げて、彼は言った。
「普通の任務、ですか……それだけならば、良いのですけれど」
そこまでいって、クヴィルンハイムは言葉を切る。
そして、持ってきた書類をシュタウフェンベルクに向かって差し出した。
そして、彼を見つめつつ、呟くように言った。
「この前のような事象は、まっぴらですよ」
この前のような事象。
その言葉にシュタウフェンベルクは一瞬悩むような顔をした。
一体何のことだろう、と……
そしてすぐに思い出したような顔をした。
小さく頷きつつ、呟く。
「……あぁ、報告のミスか」
報告のミス。
それは、先日シュタウフェンベルクが向かった任務のことだ。
フロムからの命令で赴いた任務。
報告によれば大したことのない魔獣の群れだとかで、
シュタウフェンベルクは自分の副官を少しでも休ませてやろうと一人で任務に赴いた。
しかしその実、報告されていたよりずっと魔獣の数は多く、
シュタウフェンベルクはかなり苦戦する羽目に陥ったのだ……
怪我こそ大したことはなかったものの、魔力の消費が激しく、最終的に倒れる羽目に陥った。
クヴィルンハイムはそんな彼の言葉を聞いて、少しだけ顔を顰めた。
彼は、知っている。
実際、どうしてそんなことになったのか……
その、理由。
その原因。
だから、彼の"報告のミス"という言葉に一瞬戸惑ったのだけれど……――
「……えぇ、そうです」
小さく、頷いた。事実を述べたところで何ら変わらない。
そう、思って。
クヴィルンハイムは小さく息を吐き出すと、言った。
「まぁ、あの時のミスはミスで済んだかもしれませんが……
同じような事態が発生するのは、お断りです。
ああなる前に……ちゃんと、ほかの者に頼りなさい」
クヴィルンハイムはそういう。
シュタウフェンベルクは彼から受け取った書類に一度目を落とした後、
顔を上げて、クヴィルンハイムを見る。
小さく首を傾げる彼を見つめ、クヴィルンハイムは少し呆れたような顔をした。
「貴方はいつも、そうですから。
いつも全部一人で片づけようとして……
一人で傷ついたり、苦しんだりするんですから……」
全く、見ていられませんよ。
クヴィルンハイムはそういって溜め息を吐き出す。
一人で何でもしてのけようとする彼。
仲間を、殊更ヘフテンを守るためならば何でもして見せようとする、シュタウフェンベルク。
そのためには、どんな無茶だってしてのけるのだ。
彼にとってシュタウフェンベルクは大切な友人。
立ち位置は、副官であるヘフテンや兄弟であるベルトルト、アレクサンダーとは違う立ち位置。
でも、大切な友人を、シュタウフェンベルクを守りたいと願っていた。
彼があまり無理をしないことを、願っていた。
クヴィルンハイムはそう思いつつ、小さく溜め息を吐き出して、
ぽんと軽く、シュタウフェンベルクの頭を撫でた。
「もっとちゃんと、他人に頼ってください。
すべてを貴方だけで片づける必要は、ないんですよ……」
ね、といってクヴィルンハイムは軽く微笑んで見せた。
シュタウフェンベルクはそれを見つめ青い瞳を幾度か瞬かせた後、表情を緩めて、小さく頷いた。
「あぁ……あまり、メルツやヘフテンに心配をかけるわけにもいかないからな……」
「結局考えるのはそちらですか……相変わらずでね、クラウス」
もう少し自分のことを考えても良いのに、とクヴィルンハイムは心の中で呟く。
そして、そっとシュタウフェンベルクの頭に手を置いて、言った。
「貴方らしいとは思いますが……
本当に、無茶だけはしないでくださいね」
「わかった。ありがとう、メルツ」
礼を言って微笑むシュタウフェンベルク。
クヴィルンハイムもそれを見て、笑みを浮かべる。
それと同時、ドアが開いて、金髪の少年が飛び込んできた。
「大佐!お仕事終わりましたあぁ!」
ぴょんと飛びついてくる彼……ヘフテンを抱き留め、シュタウフェンベルクは苦笑した。
お疲れ様、といって頭を撫でてやれば、ヘフテンは嬉しそうに笑う。
―― 嗚呼、こういう時間が。
尊いな。
そう思いながら、シュタウフェンベルクは自分に抱き付いてきたヘフテンの頭を撫でていたのだった。
―― You're not… ――
(貴方は一人じゃないから。
私も、皆も、貴方のことを大切に思うから。
もっと頼ってほしい、一人で頑張るのではなくて)
(私を気遣ってくれる、大切な者たち
彼らと過ごす時間は私にとって大切な時間で……――)
2014-6-7 14:51