信号機トリオでのお話です。
今日はエンスラポイド作戦実行の日、というコトで…
ちょっと焦ってるカナリスさんを書きたかったという…色々すみませんでした←おい
*attention*
信号機トリオのお話です
シリアスめなお話です
ライニさんのことが大切だからこそ焦るカナリスさんを書きたくて…←
普段冷静な方が焦ってる姿って素敵だと思うのです
アネットは基本通常モード(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
静かな、食堂。
夕食には少し早く、昼食には少し遅い、中途半端な時間。
夕方というには早く、昼というには遅い、中途半端な時間……――
黒髪に金の瞳の青年、カナリスは食堂の一番窓際の席に座って、窓の外を眺めていた。
その表情は、何とも表しがたいもの……
白い指先が、コンコンコン……と、落ち着きなくテーブルを叩いていた。
ふぅっと息を吐き出したカナリスは、小さく呟く。
「……遅い、ですね」
そのまま時計に視線を投げる、カナリス。
そして、目を細めた。
もうそろそろ、"彼"が帰ってきてもおかしくない時間なのに……
そう思いながら、カナリスは溜め息を吐き出した。
外は、雨が降っていた。
静かに静かに、降り注ぐ雨。
薄暗いその空模様は、見ているだけでも不安になってくる。
その不安の一端は、今日が"今日"という日であるからなのだろうけれど……
と、その時。
とん、と後ろから肩を叩かれた。
カナリスは驚いたように振り向く。
その視線の先に立っていたのは、赤髪の少年。
「アネットさん……」
カナリスは彼の名前を呼ぶ。
彼……アネットは小さく苦笑に似たものを浮かべて、言った。
「何だよヴィル、落ち着きがないな……」
お前にしちゃ珍しい、とアネットはいう。
そんな彼の言葉にカナリスは大きく目を見開いた。
そして、強く机をたたき、立ち上がる。
「落ち着いていられますかっ!今日は、だって……――!」
そう叫んでから、カナリスは気が付いた。
目の前にいる赤髪の少年……アネットが驚いたように自分を見つめていることに。
カナリスがこうして声を荒げることは珍しい。
だから、アネットも驚いているのだろう。
「……どうした、んだよ、ヴィル……」
「……すみません、でも、僕……っ不安で……」
謀らずとも、カナリスの声は震えていた。
カナリスの言葉に、アネットは瞬きをする。
そして、すっと真面目な顔をした。
そして、そのまま彼のことをじっと見つめる。
「……何が、そんなに不安なんだよ……ラインハルトのことか?」
アネットの問いかけに、正式に言えば彼が今上げた人の名に、カナリスは目を見開いた。
そして……ぐっと、拳を握る。
「アネットさんは、覚えていませんか……
或は、聞いていませんか」
「何を、だよ……」
アネットはカナリスの言葉に、怪訝そうな顔をした。
彼が、何を言いたいのかわからない。
彼が、どうしてそんなに不安そうな顔をしているのかわからない。
でも、何か……
何か、怖いことが起きる予感がした。
或いは、それをカナリスが感じ取っているような……
カナリスは小さく息を吐き出して、目を伏せた。
そして、呟く様な声で言う。
「今日は……ライニが、暗殺されかけた日ですよ……
結果的に言えばあの時の傷が原因で彼は……だから」
何か起きるのではないか。
そう、不安で。
カナリスがそういうと、アネットは目を丸くする。
そして、たちまち表情を歪めた。
「っ、俺そんな話聞いてねぇよ……!」
それなら任務になんか行かせなかった!とアネットは叫ぶように言う。
カナリスは彼の言葉を聞いて、小さく息を吐き出す。
そして、固く拳を握りしめた。
震える声で、カナリスはいう。
「貴方がそういう反応をすることが目に見えていたから言わなかったのでしょう。
要らない心配をかけたくなかったから……」
彼(ライニ)のことですから、とカナリスは小さく呟く。
彼のことは、カナリスも良く知っている。
何かが起きると決定したわけではない。
でも、それでも……
やはり、不安は消えない。
今日は朝から任務に向かっていた。
どういう任務で向かったのかは、アネットもカナリスも聞いていない。
せめて"馬車での移動"でないことを祈っていたのだけれど……
「馬車で移動だったんだから、もう帰ってきてもおかしくない時間なんだけど……」
アネットの呟く声に、カナリスの望みは打ち砕かれた。
カナリスは大きく目を見開くと、自分より背が高いアネットの胸倉を強く掴んで、彼に問うた。
強い、強い口調で。
「何処に、向かったんですか……!」
アネットは、大体彼から任務地が何処であるかは聞いている。
あまりに帰りが遅いとき、アネットがそれを迎えに行くようにしているからだ。
だから、場所くらいは知っているでしょう、とカナリスはアネットに問いかけた。
アネットは彼の剣幕に、少し困惑した顔をしつつ、必至に考えた。
「え、と……確か……!」
愛しい彼に、何もなければそれで良いけれど。
こんな時間になっても帰ってこないのは、やはり心配だから。
アネットはカナリスに、彼の任務地を告げる。
それを聞くと、カナリスは椅子を蹴って立ち上がった。
そして、走り出す。
アネットもそれを慌てて追いかけた。
彼ひとりに、行かせるわけにはいかない。
―― 何も、起きるなよ……!
必至に、そう願って。
***
二人はカナリスの空間移動術でハイドリヒの任務地まで移動した。
しかし、そこにはすでにもう、姿はなくて。
もう帰ったのだろう。
任務はとっくに終わっていておかしくない時間だ。
そう思いつつ、カナリスとアネットは走って彼が帰りに進むであろう道をたどる。
それでも、一向にハイドリヒが乗っているはずの馬車は見当たらなかった。
よくよく考えれば、徒歩で馬車に追いつこうというほうが無理があっただろう。
でも、それでも……
走って、探して、追いかけたかった。
二人はとにかく走った。
「いねぇ……!間違えたのかな、道……」
コッチじゃないのか、とアネットが呟くように言うと、
カナリスはそんなはずはないと首を振る。
彼がいたはずの場所から此処は、一本道だ。
カナリスは走りながらハイドリヒの姿を探すと同時……
馬車が事故ったような形跡がないかも、探していた。
縁起でもないが、そんな事態が起きていたら、それこそ……
カナリスは強く、唇を噛みしめた。
何度も、夢に見た。
死にかけた彼を腕に抱く夢を。
ハイドリヒはカナリスにとっては昔からの友人で、大切な人だ。
恋人であるアネットとは少し違う立場で、だけれど。失いたくない、なくしたくない。
だから、どうか……
どうか、無事でいてほしい……――
カナリスは切実に、そう思っていた。
未だ姿が見えない。
一向に追いつかない。
何か、あったのか。
でも、だとしたら何らかの連絡があるはずだ。
アネットとカナリスが不安を募らせたその刹那……
「カナリス、アネットさん……?」
不意に後ろから声をかけられて、二人ははっとしたように足を止めた。
後ろで呼んだのは、ほかでもない……ハイドリヒで。
この雨の中歩いていたのか、彼の艶やかな金髪はすっかり雨に濡れ、雫を滴らせていた。
アネットとカナリスはそれを見て、唖然とする。
「ら、ラインハルト……」
「……何ですか、お化けでも見たような顔をし……っ」
それと同時。
ハイドリヒは言葉を飲み込まざるを得なかった。
―― アネットとカナリス、二人にいきなり抱きしめられたから。
彼らの唐突な行動に、ハイドリヒは暫し固まらざるを得なかった。
「ライニ……馬車で、出かけたのでは……?」
カナリスはアネットより先に彼の身体を離して、そう問いかけた。
ハイドリヒは驚いたように瞬きをした後、小さく溜め息を吐き出して、答えた。
「帰りに、馬車が壊れたのですよ……それで、仕方なしに歩いて……」
空間移動術を使おうと思ったのだが、任務中に魔力も使っていたため、歩いたというのだ。
途中で倒れたのでは、洒落にならない。
「……おっそいから、心配したんだ!馬鹿ラインハルト!」
アネットは変わらずハイドリヒに抱き付いたままに、そう叫ぶ。
遅いって……と呟きかけて、ハイドリヒは口を噤む。
彼らが心配した理由が、わかった。
今日は……そうだ。
オリジナルの自分が……――
ハイドリヒは未だに自分に抱き付いているアネットの背に軽く手を添えつつ、呟くように言った。
「……心配かけたよう、ですね」
「心配どころの話じゃねぇよ、馬鹿……
主に、ヴィルが心配しまくっててヤバかったんだからな」
お前の所為でもあるぞ、というようにアネットはカナリスに視線を向けた。
確かに、アネットが慌てた主な理由はカナリスの不安げな表情だ。
馬鹿ヴィル、とやや八つ当たりをしてのけるアネット。
ハイドリヒはそんなカナリスとアネットを見てから……小さく溜め息を吐き出した。
「……大丈夫、ですよ。何も起きていませんから」
心配しないでください、とハイドリヒは言った。
主に、カナリスに対して。
敵対する組織に所属してもなお、顔色が変わるほどに自分を心配して、探しに来てくれた彼に。
アネットがこうして飛び出してくることは決して珍しくない。
でも、カナリスがこんな無茶苦茶な行動に出ることは……正直、稀だ。
どれほど彼が動揺したかが、わかる。
「……カナリスも、この通り、大丈夫ですから。
そんなに心配しないでください。
この雨の中、二人そろって走ってこなくても……」
最後の辺りは彼なりの照れ隠しだ。
アネットもカナリスも、それが良く分かった。
アネットははぁ、と息を吐き出すと……
ハイドリヒとカナリスに笑いかけて見せる。
「帰ろう!ラインハルト、ヴィル!
今からじゃ何があったって、俺が守ってやるから大丈夫だよ!」
なっ、とアネットはカナリスに笑いかける。
カナリスは小さく鼻を鳴らして、言った。
「……貴方だと、少々不安ですね」
「ちょっとヴィル!?」
アネットは目を丸くしたカナリスを見た。
そんな彼を見て、ハイドリヒも小さく肩を竦めて見せる。
「貴方はそそっかしいですから」
「ラインハルトまで!俺は、これでも一生懸命考えてるんだぞ!!」
もう!と叫ぶアネット。ハイドリヒとカナリスはそんな彼を見てから顔を見合わせ、肩を竦めた。
その表情は、何処かほっとしたようなもので……――
何事も起きなかったのならば、それで良い。
雨に降られて三人ともすっかりぬれねずみだけれど……
それでも、こうして一緒に居られることが純粋に、嬉しかった。
ほっとした。
それは、アネットだけでなく、カナリスにとっても……――
―― 不安と、安堵と… ――
(今日が今日という日だから不安だった。
貴方が死ぬ夢も見たことがあったから余計に不安だった)
(いつもは落ち着きはらっているヴィルがああも動揺しているのは初めて見た。
彼のことが大切なのだなと、改めて感じたんだ)
2014-5-27 21:24