シュペーアさんとペルのお話です。
人が良いシュペーアさんと案外寂しがりなペル、
そしてペルと仲が良かったシャムでのお話をやってみたくて…←
やっぱりぎゅっとしてる図が似合うと思います、シュペーアさんとペルは…←←
*attention*
シュペーアさんとペルのお話です。
シャムとシュペーアさんの絡みをかいてみたくて…
シリアス?後ほのぼのなお話です。
人が良いシュペーアさんと寂しがりペルのお話を書きたくて…
シュペーアさんも仕事は忙しいだろうからな、と思いまして…←
ペルがシュペーアさんと仲良くなったことにほっとしてるような…複雑なシャム←
二人でぎゅっとしてるのが似合うコンビです…可愛いと思います←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
初夏の風が吹き抜ける賑やかな城下町。
シュペーアは仕事の合間に街に出て、買い物をしていた。
足りなくなった製図用の鉛筆や魔術器具を作るための用具を買っていく。
その帰りがけ、お菓子屋の前に足を止めた。
甘い香りが漂ってくる。
甘党な総統に土産を買って帰ろうか、と思いながら、中に入る。
ここ最近、小さな黒髪の少年に構っていて彼を拗ねさせてしまっているようだし、
ほどほどに機嫌を取っておくべきだろうな、と思って。
適当に菓子を選んでいると……
ふとショウウィンドウに飾られている色とりどりのキャンディが目に映った。
それを見て、シュペーアは目を細める。
それを買ってやった小さな黒髪の少年のことを思い出したのだった。
ここ最近、シュペーアも仕事が忙しくてあまり彼に会っていない。
この前は城に遊びに来ていた彼……ペルだったが、
仕事があるときに来ては邪魔だと思ったのか、姿を見せることはなくなっていた。
元々あまり喋る方ではなかったペルだから、傍にいないからといってそんなに違和感はないが……
ふとしたときに、そういえば……と思い出す。
そんなことも考えつつ、シュペーアは土産がわりのお菓子を買うと、店を出た。
降り注ぐ陽射しが、少しまぶしい。
シュペーアが少し目を細めた、その時。
「お前がペルが言ってた建築家か?」
不意に、そんな声が聞こえた。
シュペーアは驚いて振り向く。
そこには、短い黒髪の少年が立っていた。
「え?あ、はい……」
シュペーアは困惑したように小さく頷いた。
ペルが、といっていたから彼……ペルの知り合いであることがわかった。
それに、目の前にいる少年が着ている服……
その色合いはシュペーアも良く知っているペルが着ているものと似ていた。
シュペーアは小さく首を傾げて、彼に訊ねる。
「……ペルさんの友達ですか?」
「……友達、っつーか……うん」
まぁそうだな、とその黒髪の少年は小さく頷いた。
「俺はシャム。アンタのいう通り、ペルの仲間だよ」
「そうでしたか。僕はシュペーアといいます」
礼儀正しく頭を下げるシュペーア。
そんな彼を見て、シャムと名乗った少年は少し困惑した顔をした。
そうしてふるまわれたことがあまりないために、困惑しているのだろう。
シャムはそんな彼を見て暫し考え込む顔をした後、
シュペーアのほうを見て、小さく首を傾げた。
「……今日は仕事か?」
「え?えぇ……」
でも、どうして?シュペーアは思う。
どうして、シュペーアの仕事のことなど、今であったばかりの少年が気にするのだろう?
そんなシュペーアの様子を見て、シャムは小さく溜め息を吐き出して、呟くように言った。
「……暇があったら、遊びにきてやれよ」
「え?」
唐突な彼の言葉に、シュペーアは瞬きをする。
シャムはそんな彼を見て、小さく溜め息を吐き出した後、小さく呟くように、言った。
「……寂しがってた」
その言葉に、シュペーアは大きく目を見開く。
彼の言葉が誰のことを示しているのかは、シュペーアにもよくわかって……
寂しがっている?
……ペルが?
シャムはそんな彼を見るとやや苛立ったように髪を掻き揚げつつ、言った。
「仕事、騎士の仕事忙しいのはわかってっけど、遊びに来てやってよ。
場所は、知ってんだろ?知らねぇなら、俺教えるし……」
シャムは、そういう。
シュペーアはそんな彼を見て瞬きをすると、小さく溜め息を吐き出した。
「……彼奴、自分から来てほしいとか言わないからな」
シャムはシュペーアを黒い瞳で見つめて、言った。
彼の頭にあるのは、長い黒髪の友人。
シュペーアに懐いている無口な友人……――
彼のことを良く分かっているのだろうな、とシュペーアは思う。
そして、彼を……ペルを、大切に思っているのだろうな、とも。
「……初めて見たから」
ぽつり、とシャムはいう。
シュペーアはそんな彼の言葉を聞いて小さく首を傾げた。
一度だけ見た。
それは一体、何のことだろう。
シュペーアの顔を見たシャムは、小さく溜め息を吐き出してから、言った。
「彼奴が笑ってんのは、一回しか見たことないけどさ……
彼奴があれだけ楽しそうにしてるのは、初めて見たから。
……アンタと、一緒にいるとき、行って帰ってきたときのペルは、
ほんとに楽しそうだから……」
表情こそ変わらないけれど、シュペーアと一緒に遊んで帰ってきた彼は、
必ず何処か楽しそうな顔をしていた。
シュペーアのことが好きなのだろうと、シャムもわかった。
彼があんなにも誰かに懐いている様子を見せることは、今までなかったから。
だから。
来てやってほしい、とシャムはシュペーアにいう。
「……ああ見えて彼奴、寂しがり屋だし、それに……」
そこでシャムは口を噤んだ。
ペル含め、影猫の操り人形たちは何だかんだで色々な物を背負っている。
無論、ペルもだ。
住んでいた国を出て、一人でこの国に彷徨い出てきて、一人で死んだ彼。
だからこそ、きっと彼は寂しがりで。
でも、寂しいとか、心細いとか、そういったことを口にしないことは、シャムにも良く分かっていた。
けれどそれを口にしたところで何が変わる?
それに、ペルが話していないのに自分からそんなことを話すのも、気が引ける。
そう思って、シャムは話を変えて、言った。
「……俺たちが一緒に居ても、彼奴、やっぱ……お前に会いたがってるみたいだから」
そういうシャムは、何処か複雑そうな顔をしていた。
ずっと一緒に居た、相棒。
そんな彼は、自分や影猫の仲間が一緒に居ても何処か寂しげで。
彼が誰を求めているのかは、良く分かってしまって。
だから、遊びに来てやって。
シャムはそういうと、シュペーアの言葉も聞かずに背を向けて、歩いていった。
シュペーアはその背中を見送って、目を細める。
「……そっか」
寂しいかとシュペーアは小さく呟く。
もう一度振り向いたその先にある鮮やかなキャンディを見て、シュペーアは目を細めたのだった。
***
―― そんな、次の日。
「此処、だっけ……」
シュペーアは小さく呟いた。
彼が来ているのは、一人でふらふら歩いていくには少し遠く、薄暗い森の中。
彼……ペルが住んでいるという廃墟がある場所だ。
空間移動術が得意なシュペーアにかかれば、場所さえわかっていればすぐにたどり着ける。
その森の奥に佇む、大きな廃墟。
その敷地に足を踏み入れて、すぐ。
「あ……」
シュペーアは小さく声を洩らした。
廃墟の前にある小さなベンチ。
それに腰かけて、本を開いている、黒髪の少年の姿があった。
長い黒髪が、風に揺れる。
シュペーアはそんな彼を見て、少し躊躇ってから、声をかけた。
「ペルさん」
その声に、黒髪の彼……ペルはぱっと顔を上げた。
漆黒の瞳が大きく見開かれる。
表情は相変わらずの無表情に見えるが、かなり驚いたらしく、彼の手から本が滑り落ちた。
それを気にした様子もなく、ペルはベンチから立ち上がる。
そして、小さな声で彼の名前を呼んだ。
「……シュペーア」
「おいで」
シュペーアがそう呼ぶと、ペルは少し躊躇ってから、ゆっくり彼に歩み寄った。
さらさらと、彼の長い黒髪が揺れる。
そして、長身のシュペーアを見上げつつ、訊ねた。
「……お仕事は?」
「今日は、休み。だから、遊びに来たんだ」
シュペーアはそういって、微笑む。
時間を作って、遊びに来た。
寂しがっている、彼の所に。
シュペーアがそう答えると、ペルは暫し目を丸くしてシュペーアを見つめていたが……
やがてぎゅっと、抱き付いてきた。
シュペーアはそれを抱き留める。
幾度も瞬きをする彼にしがみついたまま、ペルは小さな声で言った。
「……待ってた」
来てくれてありがと、とペルはいう。
その声色はいつも通りな無機質な声だが……
何処かほっとしているような、喜んでいるような声色だった。
そんな彼の声色に、シュペーアは少し眉を下げた。
罪悪感が募った。
別に、彼とずっと一緒に居る約束などはしていないけれど……
「……ごめんね」
シュペーアはペルに詫びる。
寂しいと思っていることに気が付かなくてごめん、と。
ペルはそんな彼の言葉にゆっくりと首を振って、言った。
「シュペーア、悪くない……仕事、忙しい……」
わかってる、大丈夫。
ペルはいつも通りな声で、そういう。
寂しがっていたとシャムは言っていた。
けれど、そんな様子は、見せない。
そういう気質なのだろうな、と思いながら、シュペーアは彼の長い黒髪をそっと撫でた。
「久しぶりに、遊びにいこうか」
「……ん。でも、良い……どっちでも」
どっちでも良い。
そんな彼の言葉に、シュペーアは驚いたように目を瞬かせた。
「え?」
どういうこと?とシュペーアが問いかけると、ペルは少し黙り込んだ。
そして、シュペーアに抱き付く腕の力を強くして、言った。
「シュペーアと、一緒にいられたら、いい」
街に行っても、此処にいても。
どっちでも良い、とシュペーアにいうペル。
ただ、此処で一緒に居られればそれで良い、と……
彼は彼なりに精一杯の、甘えるような声で、言った。
幼い頃に自分の国から逃げ出すことになった彼。
誰かに甘えることなんて、殆ど出来なかった。
甘え方なんて知らない。
甘えてしまえば迷惑をかけてしまう気がして……
好きになった相手だからこそ、シュペーアに迷惑をかけたくなくて、我儘をいわずにいた。
シュペーアはそんな彼の言葉を聞いて瞬きをすると……
ぎゅ、と自分に抱き付いている彼を抱きしめ返した。
「……そっか。
今日は特に何もないから、ゆっくり出来るよ」
「……一緒に、いる」
ずっと、とペルはシュペーアにそういった。
シュペーアはそんな彼を見て頷くと、優しく彼の頭を撫でてやったのだった。
―― Lonely ――
(寂しい想いをさせてしまったお詫びに。
今日はたくさん、甘やかしてあげるから)
(寂しいって言ったら困らせちゃうかもしれないから。
だから、待ってた。来てくれるの、待ってた。
来てくれて、嬉しかった……)
(顔には出てないけれど寂しがってるのが目に見えた俺の友人
やっぱり"彼"といると嬉しそうだけど…
そんな彼奴らを見ていると少し複雑な気分にもなるんだよな)
2014-5-17 23:39