お医者様コンビ&双子ちゃんのお話です。
こういうやり取り、ツボでやりたくなりまして…←
*attention*
お医者様コンビ&双子ちゃんのお話です。
ほのぼの?ときどきギャグチックなお話です。
アントレ君とソルティちゃんの将来の夢…?
その作文を見て困惑するメンゲレさんと笑うジェイド
明るく元気なソルティちゃんに振り回され気味なアントレ君
名前だけでヒトラーさんとクビツェクさんも出てきます(笑)
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
緑髪の魔術医は窓を開ける。
初夏の風が部屋に吹き込んで、白いカーテンがふわりと広がった。
魔術医の長い緑髪が風に靡く。
そして、振り向いた。
彼がいるのは、双子の部屋。
家族同然に思っている彼らの部屋の片づけを、
彼の父親である黒髪の天使と一緒にしていたのだった。
ふぅっと息を吐き出した黒髪の彼……
メンゲレは積み重なった本を見る。そして小さく呟いた。
「アントレは本当に本を読むのが好きですねぇ……」
その本はすべてこの部屋の主の一人、アントレが読んだものだ。
部屋の片づけの大半も、この部屋にあった本を片付けるという作業だった。
ジェイドは窓を開いたままにしながら、メンゲレのほうを見て、微笑んだ。
「まぁ、勉強熱心なのは良いことですよ。
ソルティは……楽譜やお花ですね。
フィアあたりに教えてもらったのでしょうか……」
そうですね、とメンゲレは微笑む。
そして再び双子の机のほうへ視線を向けて……
ふと、何かに気が付いたような顔をした。
「ん……これ、作文ですかね」
メンゲレは娘……ソルティの机にあった一枚の紙を手に取った。
それは、一枚の原稿用紙。
仕事柄さらっと文章に目を通すことが出来る。
内容をさらりと読むに、それは作文のようだった。
メンゲレの言葉にジェイドは少し悩むような顔をした後……
何かを思い出したように、頷いた。
「あぁ。今日の講義の時に出したものですね……」
今日の草鹿の講義。
その中の課題で作文を出したのだとジェイドは言った。
今日はメンゲレが別仕事でいなかったため、彼はそのことを知らなかったのだ。
メンゲレは納得したように頷いたが……
あれ?というような顔をして、手元の作文に目を落とす。
「でもこれ、ソルティの……」
字体、一人称。
何よりそれがあった机は、娘の机。
彼女は、兄であるアントレと違って講義は基本的に受けていないはずで……
そんな彼の言葉に、ジェイドは何かを思い出すような顔をしてから、言った。
「ソルティも来ていましたね、今日の講義。
アントレと一緒に受けていましたよ」
退屈だったようで、とジェイドはいう。
思い出すに、今日は双子が並んで講義を受けていた。
勉強熱心な兄に比べ妹であるソルティはあまり勉強には興味がないようだったが、
兄や父親、ジェイドと一緒にいるのは好きらしく、
時にそうして講義室にいることもあった。
その時に課題を出したから、彼女も一緒に書いたのだろう。
読んでみたらどうです?とジェイドはメンゲレに言った。
「どうせ後からほかの子達のも読むのですし……」
「そう、ですね」
メンゲレはこくりと小さく頷いた。
折角だから娘の作文の出来栄えを見てみたいという思いもある。
ソルティの書いた作文を手に、メンゲレはそれを読み始めた。
「えーっと、『あたしはリナ様みたいな、びじんでカッコイイ、
ハイドリヒさんみたいな人でもでもしたがわせれる大人になりたいです』?」
メンゲレはその文章を読み上げる。
深緑の瞳を見開いて、彼はぱちぱちと目を瞬かせた。
ジェイドはそれを聞いて、くすくすと笑いながら、言う。
「おやおや……将来が楽しみですね」
彼女の書いた文章がツボに入ったらしく、ジェイドはくつくつと笑っている。
女性というのは幼くとも女性ということですかねぇ、などと恐ろしいことを話している彼。
メンゲレは小さく溜め息を吐き出して呟いた。
「……大丈夫なんでしょうか、こんなことで」
娘の将来が心配になってきた、と呟いて悩ましげな表情をしているメンゲレ。
ジェイドはそんな彼を見て苦笑を洩らした。
「心配性な父親ですねぇ、貴方も」
そんなに心配することもないでしょう、とジェイドはいう。
メンゲレはそんな娘の作文を机の上に戻してから、視線を隣の机に移した。
そこにもやはり、原稿用紙がある。
そこにも几帳面な文字が並んでいた。
それは、兄であるアントレのもの。
それも手に取って、メンゲレは読み上げた。
「『僕はお父様のような、立派な科学者になりたいです。
あと、ハイドリヒさんのように冷静で頭脳明晰な大人になりたいです。』……」
「あー……」
ジェイドは小さく声を上げる。
メンゲレは溜め息を吐き出して、どうしたものか……という顔をした。
自分のような科学者になりたいと書いてくれていることは、純粋に嬉しい。
しかし、問題は後半だ。
否、ハイドリヒのような頭脳明晰で冷静な人間になりたいという思いは、問題ない。
問題は……
「アントレがソルティの尻に敷かれる未来が見えますねぇ……」
ジェイドの言葉がすべてを表している。
確かに今もアントレがソルティに振り回されている感じはあるのだけれど……
未来もその状況か、というのが二人の作文を見ているだけでわかった。
「個性的な双子ですね……
まぁ、似合いというか、ちょうどよい兄妹だと思いますよ」
「まぁそれは確かにそうとも思うのですけれど……」
でも二人の未来が心配ですよ、と呟いて、
メンゲレは自分の額に手を当てたのだった。
***
―― そのころの、中庭……
アントレとソルティは中庭で遊んでいた。
柔らかな芝生の上に座って、花を摘みながら遊ぶソルティのほうを見て、アントレは訊ねた。
「そういえばソルティ、宿題の作文終わった?」
「うん!終わったよー!
でも、書きたいと思ったこともう一つあったんだよねぇ」
「もう一つ?」
アントレは妹の言葉にきょとんとした顔をする。
ソルティはにこっと笑って頷くと、言った。
「リナ様みたいな女性になりたいって書いたけど……もう一つ、あるんだ!」
「……もう、一つ?」
何だかある意味不穏な発言を聞いた気がするけれど、と思いつつ、
アントレはソルティにそう訊ねる。
ソルティはにっこり笑って、言った。
「あたし、クビツェクさんみたいな"りょーさい"になるわ!」
「へ?!」
アントレはソルティの言葉に驚いたような声をあげた。
ぱちぱちと青い瞳を瞬かせて、それから戸惑ったような声で、彼女にいう。
「ソルティ、それ意味わかっていってるの?」
「勿論よ!"ないじょのこう?"っていって、夫を支える奥様のことよ!そうでしょ?」
うっとり、といった様子のソルティ。
憧れているのはよくわかるし、意味合いとしてはあっているのだけれど……
「うん、ソルティ、あってる、そうなんだけど……
あのさ、ソルティ。クビツェクさんは、男の人だよ?」
奥さんって例えは間違ってるんじゃないかな、とアントレはやんわりいう。
目を輝かせている妹に釘を刺すようなマネはそうしたくないのだけれど、
流石に……突っ込まざるを得ない。
しかしソルティはむぅと頬を膨らませて、言う。
「だって国父である総統閣下を三歩下がったところからひっそりと見守って、
お支えになっているのよ!"
りょーさい"で"ないじょのこう"じゃない!」
素敵よね!と笑みを浮かべるソルティ。
アントレはそれを見て小さく溜め息を吐き出した。
「……それ、総統閣下の御前で言ったらダメだからね?」
流石にまずい。
そう思ってアントレはソルティにいう。
しかし、ソルティはきょとんとした顔をして、爆弾発言を放った。
「えっ、この前いっちゃった」
そんな彼女の言葉に、アントレはぎょっとしたように目を見開いた。
まさかと思ったが……
アントレは少しおどおどしつつ、彼女にいった。
「なんて、仰ってたのそれいったとき……」
下手をしたら失言どころの話ではない。
そう思いつつアントレが訊ねると、
ソルティは少し考え込むような顔をした後、答えた。
「えっと、確か総統閣下はほっぺたまっかにして、無言でいらっしゃったわ!」
「総統閣下は、ってことはクビツェクさんも傍にいたのか……
クビツェクさんは、何を言ってたの?」
アントレの問いかけに、ソルティはにこっと笑って、答えた。
「えっとねぇ、"ありがとう、いい奥さんになるお勉強頑張ってね。
でも僕はアドルフのお嫁さんじゃなくて旦那さんだからね!"だったかな?」
ソルティの言葉にアントレは一瞬ぽかんとする。
そして、呟くように言った。
「流石だな、クビツェクさん……
ちょっと、後半の意味はよくわかんないけど」
「ん?」
「いや、なんでもないよ……
でもソルティ、もう少し物事考えてから口に出さないと……」
アントレは溜め息混じりに妹を窘める。
ソルティは軽く舌を出して、"はぁい"といった。
そして、空を見上げて、アントレにいう。
「そろそろお部屋にかえろっか」
「うん、そうだね……明日の支度もしておかないとね」
そういいつつ、アントレも立ち上がる。
そして、一緒に部屋に向かって歩いて行ったのだった。
―― Possibility ――
(これがあたしの将来の夢!そう笑顔で言い切る彼女。
もう少し考えてから言葉を出した方が良いよ僕の妹…)
(良い夢のはずなのですけれど…
何でしょう、とっても不安が残りました)
2014-5-10 00:12