いつもお世話になっております、ナハトさんとの合作です!
いつも我儘言っちゃってすみません;;
でも、とっても楽しみですー!
というわけで、まずは私がSSを。
今回は薔薇少年コラボでございます。
★あてんしょん★
・白昼夢設定(薔薇系男子コラボ)
・相変わらずに十割星蘭の妄想で出来上がっております
・今回はシスちゃんが受け気味
・薔薇園で見つめ合う二人をかいてみたかったのです…
・ヴァイスロートさんのキャラが違ってすみません;;
・シスちゃんもやっぱりキャラが定まらなくてすみません…
・ナハトさん、こんな私ですみません…
以上が大丈夫な方は追記からどうぞー!
ヴァイスロートが此処、イリュジアにやってきてから、早数週間。
図書室で文献を漁れど、その手の魔術に詳しいジェイドに聞けど、
元の世界に戻る手がかりはなかなかつかめず。
ヤキモキしつつも、どこかほっとしているのは、シストか、それとも……?
***
「シストさん」
ヴァイスロートは机に向かっているシストに声をかけた。
もう夜も更けているというのに、シストは机の明かりのみをつけて
レポート用紙と向き合っていた。
大方、昼間に向かった任務の報告書だろう。
シストは振り向きつつ、笑みを浮かべた。
「ん?手伝ってくれなくていいぜ?あと少しで、終わるから」
このところ、ヴァイスロートはシストの仕事を手伝うようになっていた。
元の世界とは別の世界とはいえ、
生活様式や仕事の様式が大きく異なるわけではないし、
簡単な書類整理程度ならば、彼でも容易にできる。
比較的机に向かう仕事を任されがちなシストの手伝いを
ヴァイスロートはよく手伝っていたのである。
あと少しで終わるからいい、というシストにヴァイスロートはゆっくりと首を振る。
シストは不思議そうに首をかしげた。
「じゃあ、どうした?明るくて眠れないのなら、場所を変えるけど……」
「いえ、そうじゃなくて……そのお仕事が終わったら、でいいのですけれど……」
まっすぐに、シストを見据えるヴァイスロートの瞳。
緋色の瞳が、きらりと光った。
***
「……アンタが何を提案するかと思ったら」
「ふふ。すみません」
「びっくりした。すごい真剣な顔をしてるからさ」
静かな中、響くのは二人の声と、二人分の靴音。
手入れの行き届いた庭を横切ってたどり着いた目的地。
「此処でお前を見つけたんだよな」
シストが足を止めたのは、あの日……
ヴァイスロートがもたれて眠っていた、薔薇のアーチの前。
―― 薔薇園に、連れて行ってもらえませんか?
先刻のヴァイスロートの提案とは、それで。
驚きつつも、シストは了承した。
この城は広い。
精通していない者はもちろん、此処で長く暮らしている騎士でさえも
時折迷うほどの此処で、目的の場所に行くのに一人で行くのは危険だ。
殊更、"異世界"の人間である、ヴァイスロートならば。
薔薇園に行きたい、という彼を連れてきた、彼と出会った場所。
ふっと笑って、シスト冗談めかして言った。
「此処からすべては始まった……なんてな」
「なかなかいうことが詩人ですね」
「そうか?」
可笑しそうに笑いつつ、ヴァイスロートは辺りに視線を投げる。
あの日同様、此処にいるのは自分とシストだけで。
辺りに咲き誇るのは、色とりどりの薔薇。
甘い香りに、酔ってしまいそうなほど。
シストはその場で伸びをする。
さっきまで仕事をしていたのだ、疲れてもいるのだろう。小さく欠伸さえしている。
「……ねぇ、シストさん」
不意に、ヴァイスロートが彼の名を呼んだ。
風が吹いて、二人の髪を揺らした。
「何……」
振り向きざまに予想以上の力でグイッと腕を引かれ、シストは驚いた顔をした。
ヴァイスロートの二色の瞳がまっすぐにシストを見据える。
「シストさん、仰いましたよね?」
「何を?」
「"本気だから離す気はない"と」
「……あぁ」
自分を見つめる彼の瞳に少し気圧されつつ、シストは頷いた。
忘れるはずのない、自分が放った言葉。
本気になってくれるなら、自分は離すつもりがない、と。
それは紛れもない本心で。
嘘でも冗談でも、一時の感情でもなかった。
初めて会った時から、おそらく彼に惹かれていた。
その証拠が、今のこの状況。
例え元の世界に帰る方法が見つかったとしても
素直に彼に教えることが出来るかどうか、自信がなかった。
このまま此処に留まってほしい、
或いは、自分がついて行ってしまうことが出来れば、と思うこともあって。
想いのままに告げたことに多少の後悔はあったけれど、
その想いを否定することは到底出来そうもなく。
彼が、ヴァイスロートが受け入れてくれるなら、と思っていた。
……口に出すことはできずにいても。
シストの返答に、ヴァイスロートは口角を上げる。
そのまま、軽い魔術を当てて、シストを地面に倒した。
魔術が得意なヴァイスロートにとっては造作ないこと。
傷つけない程度に、相手の自由を奪うことだってできる。
「ちょ、ちょっと、いきなり何す……」
驚き慌てた彼の手を掴んで、地面に押えつけつつ、顔を近づけた。
そのまま、静かな声で言う。
「ならば……本気に、させてください」
「え、ちょ……っ」
"ちょっと待て"と言いながら、完全に動揺した様子で、シストは視線を泳がせる。
自分を見下ろす整った顔立ちの彼。
羞恥で顔に熱が集まるのを、嫌でも感じた。
そんなシストの心情を知ってか知らずか
ヴァイスロートは真剣な顔で、シストを見据えたまま、言葉をつづけた。
「私に、教えてください」
―― 貴方が本気だというのなら、その"本気"を。
鮮やかな緋色の瞳。
"緋薔薇"の名にふさわしい、鮮やかな色の瞳。
本気で催眠術か何かにかけられたかのように、
シストは動きを止め、その瞳を見つめ返した。
ふっと笑みを浮かべて、ヴァイスロートは言う。
「皆のところに帰りたくない、といったら嘘になります。
黒薔薇様のことも……もう想いがないと言ったら、それは嘘になってしまう」
―― 自分から黒薔薇様を奪った"奴"が憎いという思いが、消えるわけじゃない。
今までのことが消えてなくなるわけではない。忘れられる、わけではない。
「ですが……此処まで心が揺れたのは、初めてですから」
思い人の心が離れて以来、心が此処まで揺れたのは、初めてで。
"惚れたかもしれない"
"本気だから"
"離すつもりはない"
シストの、その言葉が、嬉しかったのは事実だと。
考えて、考えて……考え抜いて、出した答え。
「言葉だけでない、偽りではないと……信じさせてください」
もう一度信じたい。
離さないと、離れないと誓ってくれるのならば。
自分の思いが相手に届かない辛さは、嫌というほど経験したから。
振り向いてもらえなくなる悲しみは、よく理解しているから。
―― だから、それがないと、誓ってくれるのならば……
氷属性の魔術ゆえに他人より少し温度の低いシストの手に、
自らの指を絡めながら、ヴァイスロートは言う。
シストは相変わらず驚いた表情のまま固まっていた。
何か言おうとしているようだが、言葉になっていない。
ヴァイスロートはそんなシストを見て……
「シストさん、意外とこういうところ初心なんですね」
くす、と笑ってからその髪を梳いて見せた。
普段は、この騎士団の中では割と冷静なほうで、仕事にも熱心。
十八にしては大人びていて(それ以上に周りが幼いのもあるけれど)
言動も行動も、しっかりしている。
ただ、"こういうこと"に関しては、一枚も二枚もヴァイスロートの方が上手だ。
シストの行動は、言動は、恋を知らぬ子供のようなそれで。
でも、だからこそ。
―― 信じられる。
そう思ったのかもしれない。
月明かりに照らされた、二人の影が重なる。
シストは絡められた手を軽く握り返した。
―― Believe ――
("もう一度信じろ"というのなら、信じてみたい。
今度その想いが裏切られるのなら、私はもう一生何も信じないと誓おう。
動揺してばっかだけど、緋の瞳に見据えられるのは、嫌いじゃないんだ。
ああ、やっぱり俺はこの人に惹かれている)
2012-10-7 13:42