LESS***のフロンダさんとフィアのお話です。
「LESS***×Knight」ということで…以前と逆で、
フィアがフロンダさんたちにトリップしたら、的なお話です…
こういう絡み、好きです←
*attention*
LESS***×Knightでのお話です
フィアがフロンダさんたちの世界にトリップしてしまったようです。
シリアス?めなお話です。
状況のみ込めてないフィアと、そんなフィアを警戒して戦うフロンダさんと…
フロンダさんの戦い方がかっこよくて好きです←おい
フィアも一応女の子だしこういう状況だと怯えるかな、と…(ぇ)
色々ふわふわですみません;;でも楽しかったです←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
亜麻色の髪の少年は、閉じていた目を開けた。
閉じた目を開ければ、目の前に広がっていた光景が、消えるのではないかと思って。
しかし、目の前に映る景色は、目を閉じる前と少しも変わっていなかった。
「……何なんだ、此処……」
亜麻色の髪の彼……フィアは、小さく呟く。
その声は彼らしくなく、わずかに震えているようでさえあった。
彼は再び、青い瞳を向けて、周囲を見渡した。
彼の目に映る景色は、よく見慣れたイリュジアのそれではなかった。
見覚えのない、街。
見覚えのない人々。
看板に書いてある文字を見るも、見たことも聞いたこともない地名……
困惑しきった表情のまま、フィアは小さく呟いた。
「見たことない、な……」
すべてが、とフィアは呟く。
見るものすべてが、初めてのもの。
行き交う人々が着ている服も、フィアの国の人たちのそれではないし、
何よりフィアの姿を見て周囲の人たちは怪訝そうな、時に怯えたような顔をしている。
フィアはそんな周囲の様子に焦りと不安を感じて、
そそくさと大通りから離れていった。
―― いったい、なにがどうして……
フィアは、心のなかで呟く。
こんな状況になっているのか、フィアはさっぱり理解をしていなかった。
いつも通りに、自室で眠ったはずだった。
だから、夢かと思っていたのだけれど……
幾ら頬をつねっても、何度まばたきをしても、目は覚めない。
走っているこの状況では、喉が痛くなってきたし、息も苦しくなってきた。
これが夢でないことは、わかってきていた。
けれど、夢でないのだとしたら……
自分はいったいどうしてしまったのだろう。
昼間に出た任務で変な魔術にでもかけられたのだろうか?
そうだとして……此処はいったい何処なのだろう。
そんな問いかけのどれひとつとして、答えは出ない。
そんな状況のままに、フィアは走っていった。
***
「はぁ、っはぁ……っ」
走って、走って。
そうしてたどり着いたのは……――
「城、か……?」
すっかり呼吸が上がってしまったフィアはその建物を見て、小さく呟いた。
自分も住んでいたような、大きな城。
助かった、と内心思った。
フィアの国の王女……ディナはかなり顔が広い。
此処が何処かはわからないけれど、もしかしたらイリュジアの騎士だと言えば、
もしかしたら、もしかしたら何とかなるかもしれない。
そんな淡い期待を抱きつつ歩いていく。
広い、敷地。
綺麗な庭園が広がっている。
此処は、中庭かな……フィアが、そう呟いた、その時。
「止まりなさい」
不意に、後ろから声をかけられた。
フィアはさっと振り向く。
そこには、銀髪の青年が一人たっていた。
その青年の手には、大きな鎌が携えられていて……
その切っ先は、確かにフィアの方を向いている。
そんな相手の様子に少し驚いて、フィアは軽く両手をあげて、いった。
「……いきなり武器を向けないでくれ。危害を加える気はない」
敵意はない。
此処にもほとんど迷い混んでしまっただけなのだ、と。
フィアはそういうが、相手は武器を下ろさない。
そんな相手の姿を見ると、フィアはスッとサファイアの瞳を細めた。
騎士として働いている以上、武器を向けられたら応戦するのが筋。
フィアも腰につけていた剣を抜いた。
そんな彼の姿を見て、銀髪の青年は険しい表情を浮かべた。
「武器を持っているのですね。此処に一体何を……」
「それは俺が聞きたいところだ。
此処が何処なのかもわからないのに、俺が何をしようと……っ」
そう呟いた刹那、銀髪の青年は鎌を振りかぶって、フィアに切りかかってきた。
フィアははっとして、その攻撃を躱す。
大きな鎌を用意なしに小さな剣で受けきることは出来ない。
素早く躱したフィアを見て、銀髪の彼は目を細める。
「速い、ですね……ならば、これでは?」
彼がそう呟くと同時、フィアの足元から何かが伸びてきた。
それが素早く、フィアの足に絡み付く。
フィアはサファイアの瞳を大きく見開いた。
「っ、何だ、これ……っ」
蔓!?とフィアは呟く。
そう、フィアの足に絡み付いているのは、薔薇の蔓。
しかし普通のそれではなく、固くて丈夫なものだ。
植物属性魔術を使う騎士はフィアのすぐ身近にいたが……
こんな風に、攻撃に使うような者は、早々いなかった。
「くそ……っ」
このままでは相手にされるがままだ。
フィアはそう思うと足に絡み付いた蔓に向かって、魔術を放った。
氷属性魔術で蔓が凍りつき、崩れる。
よし、と呟いたフィアだったが……奇妙なことに気がついた。
自分に魔術を使った張本人……銀髪の青年が、驚いた顔をしているのだ。
確かに、自分の仕掛けた魔術を解除されたら驚きはするだろうけれど……
今フィアが使った魔術はそんな変わった魔術ではない。
氷属性魔術としては基本的なものだ。
そんなに、驚くことだろうか?
暫し固まっていた銀髪の青年ははっとすると、
厳しい表情を浮かべて、再び鎌をフィアに向けた。
「何者なのですか、貴方は……」
銀髪の青年が、そう訊ねる。
戸惑いと、不安、そして警戒を含んだ声色で。
フィアは少し残っていた蔓の残骸を叩くと、剣を翳し、名乗った。
「俺はディアロ城騎士団、雪狼ヴァーチェ……フィア・オーフェスだ。
こちらが名乗った以上、貴様も名乗るのが礼儀というものではないか?」
フィアの言葉に、銀髪の青年は"それもそうですね"と呟いた。
「私はフロンダ……
騎士、ディアロ城……聞いたことありませんね」
銀髪の彼……フロンダはそう呟いて、再び鎌をフィアに振りかざす。
フィアはそれを剣で弾いた。
その戦いぶりから、戦闘慣れしていることをフロンダは感じ取った。
そして、この少年を放っておくわけにはいかない。
そう、改めて思う。
フロンダがこうして戦っているのは、ただ一人……大切な主のため。
此処は、"彼"の城だから。彼に危害を及ぼしうる者を、放置しておく訳にはいかない。
フロンダはそう思うと、再び魔法を使った。
先程とは違う、棘のついた蔓がフィアの足を、体を、拘束した。
今度はもう、外れないように。
彼が身動きをとれないように。
フィアは痛みに顔を歪めたが、必死にもがいた。
「離せ、離……っ」
そう声をあげたフィアは、不意に口をつぐんだ。
体にじわりと走った、痛みとは少し違う、奇妙な感覚……
「っ、な……」
体から、力が抜ける。
もがこうとした腕もうまく動かないし、何より魔術が使えない。
いったい、これは……
「っ、貴様か……っ」
この魔術を使っているのは、とフィアは呟く。
フロンダはこくり、とうなずいた。
そう、この薔薇の蔓を出現させているのはフロンダ。
フィアがもう抵抗できないようにするため、この魔法を使ったのだった。
魔力を、体力を吸収するこの魔法……
それのために、フィアが抵抗出来なくなったのを見ると、フロンダは訊ねた。
「……何故魔術を使えるんですか」
「は……?」
フィアは怪訝そうな表情を浮かべた。
目の前にいる、この銀髪の少年は一体何をいっているのか。
魔術を使えるのが何故か、だと?
「何故、って……
俺は、騎士だ。魔術が使えない騎士など……」
ルカくらいしか、いない。
そう言いかけて、不意に酷く不安になった。
いつも傍にいてくれた、頼りないけれど頼もしい、大切な唯一無二の家族。
彼は、何処にいるのだろう。そして、自分は一体、どうしてしまったのだろう。
訳のわからない場所。
訳のわからない状況。
そんななかでこうして見知らぬ人間と戦闘になり、あげく拘束されて……
色々なことが起きすぎて、もうどうして良いのかわからない。
不意に目を伏せた目の前の少年に、フロンダは正直少し面食らった。
先程までの勇ましい雰囲気は消えて、
弱々しく途方にくれた表情を浮かべている。
それが演技だと思えば、それもありうる気もしたが……
それにしては、あまりに表情が頼り無さすぎた。
この表情を見せて油断させるつもりなのだとしたら、
こんな状況になる前にするだろう。
しかし、彼は最初から好戦的な態度を見せ、剣を抜いた。
戦うつもりであったことは、まず間違いがないだろう……
しかし、奇妙な点が多すぎる。
それも、事実だった。
何より……フィアが魔法を使ったことに、フロンダは驚いていた。
彼の周りに魔法を使える人間は、決して多くない。
しかしあの亜麻色の髪の少年は、まるで魔法を使えるのを、
当たり前かのようにいっていたから……
何か、ある。
きっと、理屈で説明出来ないなにかが。
そう思って、武器は下ろさぬまま、フロンダは少しだけ拘束を緩める。
無理矢理藻掻けば外れるだろう、という程度には。
しかし、それでも彼は暴れたりする様子なく、俯いている。
魔力を、体力を奪ったから、というのもひとつの原因だろうが……
それだけではない気がした。
「どうしたら、良いでしょう……」
フロンダはぽつり、とそう呟く。
とりあえず、自分の"主"に事態を告げるのが先決だろうか。
そう思いつつ、フロンダは再び少年……フィアの方を見た。
亜麻色の髪の少年は俯いたまま、誰かの名前を紡いでいる。
その表情は相変わらず、酷く不安げだった。
勇ましい、最初の表情とは少し違う、表情……――
魔術を当たり前のように使う、見知らぬ少年。
知らない地名を、城名を告げる、少年……――
何か、とても複雑なことが起きる予感を抱いたまま、
フロンダは自分の主人にどうやって事情を説明しようかと考えはじめたのだった。
―― Hunch ――
(なにかが、始まる予感。
不安と、怯えをともしたその少年は、一体何者…?)
(見知らぬ場所。見知らぬ人間。
この世界がいったいなんなのか、俺にはまだ何もわかっていない)