「紫蝶々」のifぱろでの赤髪金髪コラボのお話です。
あの設定でフォルとライニさんを絡ませてみたくなりまして…←
*attention*
赤髪金髪コラボのお話です(若干BL注意です)
前半は死神堕天使コラボです。
「紫蝶々」設定のIFぱろです。
シリアスめなお話です。
フォルはライニさんの葛藤を見抜いてこういう揺さぶりをかけそうだな、と思いまして…←
自分のしていることに罪悪感があるからこそこういう思考になる美人さんが好きです(おい)
フォルは相変わらずの色欲堕天使です…←おい
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
静かな、春の夜……
換気のために開いてある窓から吹き込む風がカーテンを揺らす、その部屋のなか。
長い金髪の少年……ハイドリヒは一人、ベッドに腰かけて本を捲っていた。
ぱらり、ぱらりとページを捲る乾いた音だけが響く空間。
ハイドリヒはふと顔をあげて、時計を見た。
もうすぐ、午後十時を回る。
いつもならとっくにこの部屋に来て一緒にいる赤髪の少年の姿はなかった。
彼は今日、一日がかりで任務に出ているという。
帰りは夜中になるかもしれない、と苦笑気味に話していた恋人は、
どうやら未だ帰ってきていないらしい……
そう思って溜め息を吐き出したとき。
ハイドリヒの目の前に、影が落ちた。
はっとして顔をあげると同時に、背中がベッドにつく。
一瞬何が起きたかわからなかったが……
目の前で楽しそうに笑っている亜麻色の髪の青年がいて、事態を把握した。
目の前の彼……フォルに押し倒されたのだと。
フォルはにっこりと笑って、ハイドリヒに挨拶をする。
「今晩は、死神様」
ハイドリヒを押し倒したままの手に力がこもる。
それを外そうともがきながら、ハイドリヒは彼にいった。
「っ、何、しに……」
「うん?ちょっと遊びに来たんだよ」
に、と笑ってフォルは言う。
悪戯な表情。
彼がどういう気質かは、ハイドリヒもよく知っている。
顔を近づけられて、ハイドリヒは身を仰け反らせる。
「っ、嫌、離してくださ……っ」
必死に暴れるが、フォルの腕は外れない。
"彼"よりもずっと、華奢で、非力そうに見えるのに……
そう思いながらもがいていれば、フォルはハイドリヒをじっと見つめて、
小さく溜め息を吐き出した。
「君が拒む基準がわかんないなぁ」
「え……」
フォルの言葉に、ハイドリヒは目を見開いて、固まった。
彼は、一体何を思っている?
言わんとしている……?
そんな彼の動揺を、想いを感じたように小さく笑って、フォルは再び口を開く。
「一度はいいけど二度は駄目。
自分がそーいう気分の時はいいけどそれ以外は駄目……
あぁ、違った。"彼"がいないときはいいけど"彼"がいるときは駄目」
「っ、うるさ……っ」
それ以上聞きたくなくて、ハイドリヒはフォルを睨む。
しかしそんな威圧、フォルには一切通用しない。
猫のように目を細めながら、フォルはハイドリヒをじっと見つめる。
必死に怯えを、動揺を隠そうとするように自分を睨み付ける彼を見つめながら、
もっともっと彼を追い詰めようとするように、言った。
「全部同じなのにね。"あの子"にとっては、どれも浮気だ」
その言葉に、ハイドリヒはぐっと唇を噛み締めた。
わかってる。
全部、わかってる。
自分が引いた線引きも、全部全部自己満足だと言うこと。
幾ら言い訳をしたって、彼を……アネットを傷つけていることに違いないことも。
唇を噛み締めているハイドリヒをみて、フォルはくすくすと笑った。
そして、するっとハイドリヒの首もとのネクタイをほどく。
彼が抵抗できないように押さえながら、フォルはいった。
「誰でもいいんでしょ?僕が相手してあげるよ……」
そういいながらハイドリヒの耳に唇を寄せるフォル。
そのまま彼は、キスをしようとした。
ハイドリヒは必死に首を捻って、その顔を避けようとした。
キスだけは、されたくない。
そうして口づけてほしいのは、彼だけだから。
そんな彼の行動をみて、フォルはおかしそうに笑った。
そしてからかうような口調で、彼に言う。
「キスはしないよ?僕だって、恋人がいる。
キスなんかしなくても、君を気持ちよくしてあげることくらい出来るしね」
緩めた服の隙間から手を差し入れて、柔らかくその白い肌を撫でる。
びくり、とハイドリヒの体が跳ねた。
くすぐったい。
くすぐったいけれど、体が熱くなる。
そんな感覚を得ていることが悔しくて、そんな自分が憎くて、
ハイドリヒは青い瞳を涙に潤ませた。
それでも、抵抗はやめずに必死にもがく。
「や……嫌、嫌……ぁっ」
嫌だ、嫌だ、と泣きながら暴れるハイドリヒをみて、
フォルは楽しそうに声をあげて笑った。
嗜虐的な表情を浮かべて、涙をこぼし表情を歪ませるハイドリヒを見つめながら、問いかけた。
「僕を拒むのはどうして?……"彼"の敵だから?」
「っ!」
フォルの言葉に大きく見開かれる、ハイドリヒの瞳。
つっと、白い頬を涙が伝い落ちていく。
フォルは指先でそれを拭いながら、にっこりと微笑んで、言った。
「……さっきもいったと思うけどさ。
その線引きはあくまで君のなかだけのものでしょ。
彼……君の大事な子犬君にとっては同じこと。
よく我慢してるなって僕感心するもの」
口調こそ柔らかい。
穏やかで、優しい声色だ。
しかし、その言葉で紡がれる言葉はすべて攻撃的で、ナイフのようでさえある。
ハイドリヒの心を抉り、傷つけていくナイフのような……
言葉を紡げずにいるハイドリヒを見ながら、
フォルは溜め息を吐き出しながら、いった。
「かわいそうだよね、君も彼も。
お互い好きにならなかったら、話は早かっただろうに」
その言葉はさながら、全ての答え。
ハイドリヒの頬を伝っていた涙も止まった。
それ以上もう、なにも言えなくて。
否定も肯定も出来なくて。
フォルはそんな彼をみて、にっこりと笑いながらハイドリヒの頬に手を添える。
そして、そのまま彼の耳元に唇を寄せて、囁く。
「キスしてあげようか?君のその下らない線引き壊すために」
ね、といいながら、フォルはハイドリヒに顔を近づける。
すっかり放心したようすのハイドリヒはもがくことも忘れて、
近づいてくるフォルの顔を見つめていた。
あと少しでその唇が触れる……その時。
一瞬弾けた、魔力。
それはよく慣れた、赤髪の少年の魔力で。
ハイドリヒに覆い被さっていた亜麻色の髪の青年は悲鳴をあげて飛び退いた。
顔を歪めて自分の腕を押さえながら、彼は恨めしげにドアの方を見る。
「痛っ……何、するのさ子犬君」
「何すんだは俺の台詞だっ」
響いた声はやはり聞きなれた彼の声だった。
ハイドリヒはベッドに沈んだままにドアの方へ視線を向ける。
赤髪の少年はフォルを睨み付けながら剣を抜いていた。
フォルはそんな彼をみて、小さく肩を竦める。
「やれやれ……よく吠える番犬だよ」
そういうや否や、フォルは姿を消す。
アネットはそれを追いかけようとしたが……すぐに諦めた。
空間移動術で逃げられてしまった時点で、アネットに勝ち目はない。
それよりも、今は……
「ラインハルト!大丈夫か?」
ベッドに沈んでいるハイドリヒの顔を覗き込んで、心配そうに訊ねる。
ハイドリヒはそんな彼に、力なく頷いた。
「大丈夫、です……」
「よか、った……」
ほっとしたように息を吐くアネット。
そのままフォルに乱された服をそっと直してくれる彼に、ハイドリヒは表情を歪めた。
何処か痛むかのような表情をする彼をみて、
アネットは再び心配そうに眉を下げた。
「ラインハルト?どうした?」
何処か痛い?と訊ねてくる彼。
ハイドリヒはゆっくりと首を振る。
違う、そうじゃない。
そう呟いて、体を起こしたハイドリヒは膝を抱えて、そこに顔を埋める。
「……好き、にならなかったら」
「へ……?」
小さく呟く、ハイドリヒの声。
アネットは怪訝そうにまばたきをする。
ハイドリヒは膝に顔を埋めたまま、息を吐き出した。
「好きにならなかったら、私は……」
貴方を好きにならなければ。
貴方が私を好きにならなければ。
ハイドリヒはそんな言葉を紡ぐ。
今更どうにもならない仮定。
ハイドリヒがアネットを好きにならなければ。
アネットがハイドリヒを好きにならなければ……
そんな、IFのはなし。
ハイドリヒは膝を抱えたまま、小さく啜り泣いた。
アネットは暫しそんな彼を見つめていたが……やがて、溜め息を吐き出す。
「……俺を傷つけずに済んだ、か?」
呟いた声は、低く、弱かった。
ハイドリヒは思わず顔をあげて、姉とを見る。
彼は、何処か悲しげな顔をしたままハイドリヒを見つめていた。
そして、彼は言う。
「……あのさ、俺今までで一番傷ついたんだけど」
「え」
思わぬアネットの言葉に、ハイドリヒは声を漏らす。
アネットはそんな彼の頬に優しく触れながら、困ったように笑って、いった。
「なかったことにしたいってラインハルトが本気で思ってんなら……
俺は、それが何よりキツいんだけど」
せっかくこうして好きになったのに。
せっかくこうして好きだと思いあえているのに。
それをなかったことにしたいとハイドリヒが思っているのなら。
それは……悲しいと。辛いと。
アネットはそういう。
ハイドリヒはまじまじとアネットを見つめた。
彼の頬に優しく触れ、アネットはその唇を塞ぐ。
触れるだけの、優しいキス。
それを交わしたあと、彼はハイドリヒに訊ねた。
「なぁ、思う……?俺を好きにならなければよかったって」
そんな聞き方は、狡い。
そう思いながら、ハイドリヒはアネットの胸に顔を埋めた。
アネットは彼の返答をせがもうとはしないで優しくその頭をなで続けていた。
―― それは、本気ですか? ――
(俺を好きにならなければ良かったなんて。
俺がお前を好きにならなければ良かったなんて。
そんなこと、言わないでほしいかったんだよ…)
(嗚呼、もちろん本気などではありませんよ。
でも…もし、そうだったなら。
私は貴方を傷つけないで済んだだろうにと思っているのは本当で……――)