赤髪金髪コラボのシリアスめなお話です。
ナハトさんのイラストみててふとやりたくなりまして…
美人さんの泣き顔は、やはり素敵です←
*attention*
赤髪金髪コラボのSSです
シリアスめなお話です
ライニさんが自分の任務に辟易してるのとかっていいかな、と…←
アネットは自分がライニさんの居場所になれたらいいな、と思ってるだろうな、と…
タイトルはそのまんま「止まり木」の英訳
泣いてる美人さんを慰めながら一緒に眠るという図が好きです←こら
相変わらず妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞ!
白いシーツの上、蹲る華奢な背中。
明かりの点らない静かな部屋にいる金髪の少年は、まるで人形のように動かない。
黒い制服の背中に流れる、艶やかな金髪。
ピクリとも動かない彼は、それこそ本当に精巧な人形のようで。
そんな彼の部屋の床に放り出されたように転がっているのは、一丁の拳銃。
そんなところに武器を放置することが危険きわまりないことはわかっているが、
今はそんなものを持っていたくなかった。
引き金を引いて、自分に、組織に敵対する人間を撃ち殺すのにも慣れた。
罪人を裁くのに躊躇いなど無用。
そう思って、感情を押し込めて仕事をこなしてきたけれど……
金髪の少年……ハイドリヒふ、と溜め息を漏らす。
自分の呼吸が聞こえそうなほど、静かな空間。
「この、武器も……――」
護身のためにだけ、使えたら。
それこそ、"この国"の騎士のように……守るためだけに、使えたら。
そんな、馬鹿馬鹿しいことを思って、ハイドリヒは自嘲の笑みを漏らした。
それが可能なはずがない。
自分の仕事は……――
―― と、その時。
後ろからぎゅ、と抱き締められた。
その温もりが何かは、ハイドリヒもよくわかっている。
「髪乾かさなきゃ駄目だっていっただろ……傷むし、風邪引く」
耳元で低く、呟くような声が聞こえた。
そっと、柔らかい手つきで髪を撫でられる。
その暖かい手の持ち主が、赤髪の彼……
アネットであることは、よく知っている。
ハイドリヒは黙ったまま、それを聞いている。
「風呂入った?仕事終わって帰ってきてたんだな」
「えぇ……」
こくり、とハイドリヒは頷いた。
アネットはそれを聞いて、小さく溜め息を吐き出した。
「なら、髪乾かせったら」
「別に、良いですよ……放って、おけば」
髪が濡れていようが、部屋に拳銃を放置していようが。
別に、どうでもいい……
そんななげやりな彼の反応に、アネットは顔を歪めた。
「……傍にいるの煩いんだったら、俺帰るけど」
小さく、アネットがいった。
自分が煩くて迷惑なら帰るよ、と彼はいうけれど……
ハイドリヒは俯いたまま、黙り込んでいた。
帰ってほしくなどないけれど、それを素直に伝えることも出来ない。
黙り込んだままに俯いて、唇を噛み締めているしか出来なかった。
弱い自分を晒したくない。
弱さが嫌いで、憎くて、圧し殺してきたから……
ハイドリヒが俯いたままに黙っているのを見て、
溜め息を吐き出したアネットが少し離れかける、その気配。
一瞬息を飲んだハイドリヒに、彼は小さく笑った。
「……嘘だよ。帰らない。
ラインハルトがそんな顔をしてんのに、放っておいて帰るはずがないだろ」
まったく、と言いながらアネットはベッドに座ったままのハイドリヒを抱き締めた。
そのまま、優しく彼の頭を撫でる。
ハイドリヒはそんな彼の体の温もりを感じながら、
ぎゅ、とアネットの服の袖をつかんだ。
白くて華奢なその手が、ふるふると弱々しく震えていた。
普段は、感情を消して生きている彼。
そうせざるを得ない環境に長くいたから、だろう。
感情を持ったままでは任務などこなせなかった。
泣いていては任務は遂行出来なかった。
だから、彼は自分の感情を圧し殺してきた。
―― けれど。
今目の前にいる彼の前では、それも無意味。
普段は鈍くて察しが悪い彼だけれど……こういう時には、敏感で。
寂しそうな顔をしていると、苦しそうな顔をしていると、
彼は的確に言い当てて、心配そうに抱き締めてくるから……
感情を隠すことも無意味になっていた。
だから、簡単に仮面は壊れてしまう。
ハイドリヒはアネットの服を、腕を掴んだまま、小さく息を吐いた。
震える吐息に震える言葉を滲ませて、ハイドリヒはアネットに詫びた。
「……ごめん、なさ……」
「謝らなくていいんだって」
アネットはそういいながら優しくハイドリヒを抱き締めて、
子供を宥めるように柔らかな声で、いう。
「大丈夫、大丈夫……」
そういいながら、背中を擦る優しい手。
その手の優しさは、暖かさは、愛おしくて……少し、怖い。
アネットは自分には無関係な人間だ。
全く違う任務に携わり、自分とは性格も真逆な彼……
明るくて、放っておいても光の道を歩んでいきそうな彼。
対する自分は、特殊な魔力を背負い、特殊な境遇にすごし、
特殊な任務を過ごしている、闇の道を歩いていくような存在……
そんな自分を"光"の彼に慰めさせるのは狡いとわかっているのに、
一度触れてしまった温もりを手放すのは、怖い。
手放したくない。
傍にいてほしい。
支えていてほしい。
我ながら我儘だな、と自嘲気味に笑おうとすれば、ぎゅと強く抱き寄せられる。
そんな笑い方すんな、というように。
そんな彼の温もりに、優しさに、ハイドリヒは震える。
吐き出す息が涙に滲んだ。
どうしてこの人は……こんなにも、優しいのか。
こんなにも愛しそうに、大切に、自分を抱き締めてくれるのか。
そう思いながら、ハイドリヒは彼の体に縋る。
「ラインハルトが泣いてんの見られたくないなら、ちゃんと忘れるから。
大丈夫……泣いていいんだよ、ラインハルト」
アネットはそういいながら、少し切なそうな顔をしていた。
ずっとずっと、感情を殺して生きてきた彼。
でもその感情はなくなったわけではなくて、
あくまで心の奥深くに沈められ、押し込められていたもの。
苦しさを感じなかったはずがない。
悲しくなかったはずがない。
辛くなかったはずがない。
そんなものをすべて共有できるとは、アネットも思っていない。
認めたくはないけれど、彼と自分とは境遇が違いすぎる。
所属する部隊も、こなす仕事も、生まれも、育ちも、性格も、持つ魔力も。
それだけ違う彼のことをすべて理解出来るなんていったらそれは大嘘だ。
―― だから、せめて……
彼が、安心して泣ける場所になってやりたかった。
それは、彼の因果に全く無関係だからこそ出来ることだと、思いたかった。
何も知らない自分だからこそ、そして……
誰より彼を愛しく思う自分だからこそ彼が縋れる場所になれると信じたかった。
アネットは、ただただ彼を呼ぶ。
大丈夫だよ、と繰り返して。
「ラインハルト……」
「ふ、……っ」
必死に堪えた涙。
頬に伝い落ちていく、暖かい涙。
堪えて、堪えて、堪え続けたそれは、止まることを知らず頬に流れていく。
白い頬に涙が落ちていく。
アネットはそっと、彼の頬に触れて涙をぬぐった。
「少し、寝とけよラインハルト。任務終わって、疲れてるだろ?
……俺、ずっと傍にいるから」
そういいながら、アネットはそっとハイドリヒに口付けた。
求められるように深くキスされれば、それに応えて。
アネットはそのまま、ベッドに彼の体を寝かせて、隣に寝転んだ。
彼が自分の体を感じてくれるようにしっかりと抱き締めて。
優しく額と頬にキスを落として。
おやすみ、と優しく耳元にささやいて。
自分の胸元に顔を埋める金髪の少年を抱き締めて、呟く。
「……大丈夫」
泣いていいよ。
苦しいっていっていいから。
それを忘れてほしいというなら忘れるから。
―― だから……
「せめて、寝てる間は……」
彼が、穏やかな気分でいられるように。
疲れたからだを、心を、少しでも休められますように。
そう願いながら、彼の背中を優しく撫でる。
悪夢に怯える子供を宥め、寝かしつけるように。
―― Perch ――
(辛い境遇を羽ばたき続ける君へ
一人ですべてを背負ったままに暗い道を飛ばないで)
(疲れたならば休んでいいから
俺が、君の止まり木になってみせるから)