ノアの心情SSです。
無彩色極彩色コラボ設定で…フランコさんとちゃんとお話した直後、くらいかな…?
やや人間不信の気がある彼なのですぐに信じきる、っていうのは出来なさそうだな、と←おい
あと、たぶん彼は結構歌が上手だと思う…という謎の考察のもとに書きましたが…
ぐだぐだ感満載だ←
ともあれ、フランコさんにほだされて少しずつ丸くなったり
何だかんだでフランコさんにだけは笑ったり出来るようになればいいなと言う
勝手な星蘭の妄想が全力で入っていますが(ナハトさんすみません;;)
…追記からお話です!
「ん……」
小さく息を漏らして、黒髪の青年は目を開けた。
ぼんやりと泳ぐ、漆黒の瞳。
それに光が点ると、彼はゆっくりと体を起こす。
あまり朝は得意でない。
けれど、目が覚めた以上寝直すのは性分的に不可能だった。
ふ、と小さく息を吐き出す。
その表情は、何処か物憂げで……――
懐かしい、夢を見た。
あまり良い夢とは言えない夢だった。
幼い頃から、順々に自分の記憶を辿る夢……
実の両親に殴られ、蹴られ、命の危機さえ感じた幼少期。
家から逃げ出して、フォルに出会った日。
そのまま二人で色々なことをした。
操り人形と呼ばれる小さな兵士たちを産み出して……
こうして思い返してみると、
ろくなことが起きないな、などと思って苦笑してしまう。
―― それと同時に……
ノアールはもう一度ふ、と息を吐き出した。
最初に"死んだ"時のことも夢に見た。
とはいえ、あのときはほんの一瞬だったし痛みもなかった。
だから、記憶といっても本当にぼんやりとしたものなのだけれど。
この国の騎士……基、自分が尊敬する主の実の妹の魔術に撃たれた。
自分の持つ悪魔の魔力と正反対のそれで、自分は呆気なく倒れたらしい。
それくらいの記憶ではあるが……
それを思い返した時に、考えるのだ。
ディアロ城の連中は自分をどの程度恨んでいるだろうな、と。
フォルは実の妹とある程度の協定を結んで和解したという。
互いに手を出さなければ此方からも手は出さない、という協定。
それが甘いと主を注意したのは何時だっただろう。
けれど、今ならば彼の気持ちが何となくわかる。
今ある平穏のためにある程度の予防線を張りたいという思い。
自分は、予防線の張り用がない。
だって、弁解出来る相手がいないのだ。
もう傷つけはしないといったところで、信じてくれる人間はきっといないだろう。
「彼奴は、……どう、なんだろうな」
ぽつり、とノアールは呟いていた。
彼は、受け入れてくれるだろうか。
自分を。
ディアロの騎士たちを幾度も傷つけた自分を、
本当に受け入れてくれるだろうか、と。
頭に浮かぶのは彼が親しいと話していた、炎豹の騎士。
彼に直接攻撃を仕掛けたことはないが、ノアールは何度もあの国の騎士を攻撃した。
組織一の狙撃主……
それが、ノアールの呼び名であり、評価でもあったから。
拳銃も剣も扱える、魔力も炎属性悪魔属性両方扱える。
体も大きく、素早い彼は、組織内一の戦闘力だった。
その力を使って幾人もの人間を傷つけた。
そんな自分だが……本当に、彼は受け入れてくれるか。
今の夢を見ていて、そんな思いを抱いた。
「……信頼しきれないのが誤り、か」
彼奴ならそういうだろう、とノアールは呟いた。
長い時間を一緒にいたわけではないが、ある程度彼がいいそうなことはわかる。
きっと……
彼は、そんなノアールの不安を見抜いたとしたら、怒った顔をして言うだろう。
何で信用してくれんのや、と。
そして、悲しそうな顔をするのだろう。
その顔は、願わくば見たくない。
「……関係ないと、いっていたものな」
昔のことは関係ないといっていた。
気にしないから、とも。
ちゃんと支えるから、と。
その言葉が嬉しくて、何度もその言葉を頭でリピートした。
彼さえ信じてくれればそれでいい、と思った。
他の誰が嘘だと疑えど、彼さえ信じてくれるのならばまぁ、それでいいか、と。
事実……
ノアールはもう、一応この国の騎士に危害を加えるつもりはない。
ただひとつ例外を除けば。
フォルから命令があった場合、その時は躊躇いなしに攻撃する。
……それに、もうひとつ例外が付け足された。
彼に……自分が愛しいと思う彼に、誰かが危害を加えたとしたら。
その相手に容赦はせぬと、心のなかで誓う。
そんなことを考えている自分がなんだかおかしくて、
ノアールは溜め息を吐き出した。
シャワーでも浴びて目を覚ますか。
そう思いながら、ベッドから降りる。
ちらと服の隙間から覗いた肌に見えた傷を指先でなぞって、溜め息を吐く。
「〜……♪」
口を衝いて出たのは以前フォルが歌っていた歌。
人間でない自分を受け入れてくれたらいいな、という天使族の歌らしい。
僕じゃなくてフィアが歌うべき歌なんだけどね、と、
どこかおかしそうにフォルが話していたのを思い出して小さく笑う。
「やはり、主ほどうまくは歌えないな……」
ノアールはそう呟くと、ベッドから降りて伸びをした。
「居場所……か」
彼は、人間世界に居場所を見つけたという。
堕天使としての本質を少し薄めてでも傍にいたい相手ができた、と。
自分にとって"彼"がそうであればいい……
知らず知らずにそう願っている自分に気づいて、
ノアールは髪をくしゃりとかきあげる。
そんな気恥ずかしさから、彼はもうひとつ溜め息を吐き出すと、
シャワールームに向かった。
―― すべてを受け入れて ――
(傍で守ると誓ってくれる居場所がひとつあればいい)
(自分がそんなことを願う日が来るなんて思いもしなかった)