久々にミラジェリオ王国の騎士を書いてあげたくなりまして…
しかし久々過ぎてキャラが行方不明です(笑)
イオとアズルのSSです。
主従好きな星蘭が書いた結果、なんだか奇妙な雰囲気になってしまいました…
というか、イオの発言が…"特別な絆が…"って(ぇ)
リハビリがてら書いてみたので短めですが、追記からどうぞ!
―― イリュジアから少し離れた王国、ミラジェリオ王国……
その国の王は自分の執務室で仕事をこなしていた。
さらさらと紙の上を走るペン。
一国を治める彼の仕事は決して少なくない。
しかし彼は戦闘に比べればこういった書類仕事の方が得意である。
「ふぅ……」
少し休憩しつつ、彼は顔をあげた。
艶やかな紫の髪が開いた窓から吹き込んでくる風に揺れる。
と、部屋のドアが軽くノックされた。
国王……アズルは顔をあげた。
そのままドアの方へ声をかける。
「誰だい?」
「アズル様、私……――イオです」
聞こえた声に、アズルはぱぁっと顔を輝かせた。
そういう顔をすると、彼は一層幼く見える。
もうすぐ三十路という年にもかかわらず、一見すると彼の騎士たち……
イオたちと同じくらいの年に見えるほどに幼い雰囲気なのだ。
訪問者が自分の騎士だと理解すると、嬉しそうに笑いながらいった。
「イオか、お帰り。入っていいよ?」
「失礼いたします」
訪問者……この国の騎士であるイオはアズルに声をかけてから入室してきた。
少し長い青い髪、サファイア色の瞳のその騎士は、
アズルの遠縁の親戚である女性、ディナが治める国……
イリュジアに派遣されている騎士だ。
アズルが幼い頃に助けた少年でもある。
アズルの前に跪くと、イオはいった。
「報告に参りました」
「お帰り、イオ。何か変わったことはあったかい?」
アズルは久しぶりに会った彼の騎士をみて微笑みながら言う。
イオはアズルの白い手の甲にキスをしてからいった。
「特に変わったことはございません。
しかし、イリュジアでは学ぶことも多く、
我々も充実した時を過ごさせていただいておりますよ」
「そんな堅苦しい報告でなくてもいいのに」
アズルは苦笑してからいった。
幼い頃、傷ついて倒れていた幼いイオを広い、助けたアズル。
幼い頃から知っているために、
イオのことは騎士であると思う以前に友人だと思っている。
もっとも、他の騎士たちにたいしても同じように思っているらしいのだけれど。
アズルは手に持っていたペンを揺らしつつ、溜め息を吐いた。
そして、イオにいう。
「もう少し砕けた感じで接してくれて構わないんだけどな」
「そういう訳にはいきませんよ。私はアズル様の騎士ですから」
イオの言葉を聞いて、アズルは顔を彼の方へ向ける。
緑の瞳に見据えられて、イオは首をかしげる。
アズルは少し間を開けてから、静かな声で言う。
「騎士と国王、だからかい?」
「えぇ」
躊躇いなしにイオが頷くと、アズルは少し寂しそうな顔をした。
それをみて、イオは顔をしかめる。
自分がいっていることは間違っていない。
しかし、アズルはそうして"騎士と国王"という少し隔たれた関係を指摘すると、
こうして寂しそうな顔をする。
「アズル様」
イオは少し迷ってから、アズルにいった。
「私はアズル様の騎士です。
しかし……それだけの関係とは思っておりません。
アズル様は、あの日私を助けてくださった、大切な方……
レキやルガル、アルマや他の騎士たちとは違う、特別な絆があると……
私は、思っております」
"一家臣の分際で、ですが"とアズルに言うイオ。
アズルは少し驚いた顔をして瞬きをする。
イオは流石に言い過ぎたか、と焦った顔をする。
しかしアズルはすぐに明るく微笑んで、いった。
「ありがとう、イオ……」
アズルの声には、本当の感謝がこもっていた。
生まれた時から一国の王となる運命を背負い、育てられてきた彼。
友人と呼べる友人はいなかった。
父親の期待に答えるような剣術の腕も、攻撃魔術の腕もなく、
万が一戦争になったとしても戦力になり得ない自分に落ち込みもして。
そんななかで出会った少年のことを、アズルは大切な友人と思っていた。
彼……イオが騎士として自分の傍にいると誓ってくれたことが、嬉しかった。
「王と騎士、その関係を崩す気はないけれど……
時々でいいから、僕のことを"国王として"ではなく、
"一人の人間として"みてくれたら、嬉しいな」
「……御意」
イオはそういって微笑んで、頷く。
アズルは彼の反応をみて、嬉しそうな顔をしていた。
―― 国王としてではなく…… ――
(一人の人間として見てほしいんだ。
僕は、"ミラジェリオ王国"のトップであると同時に、一人の男でしかないのだから…)
(きっと、アズル様が求めていたのは"友人"なのだろう。
自分をひとつの権力として見る周囲の人間と違う、信頼のおける人間…)