ナハトさんのお子様、メンゲレさんとうちのジェイドのお医者様コラボSSです。
☆あてんしょん☆
・ほのぼの、になってたらいいなぁ。
・やっぱり星蘭クオリティ。そして無駄に長い。
・一応裏部屋仕様なのでBL注意です。
・ナハトさんのSS「選べない選択肢」の続きっぽい。
・コラボとか言いながらメンゲレさんと絡みが少ない気が…
・かいてる途中でPCが強制終了→全文消える→書き直し
という事故が発生しました。
・↑のために、余計にちぐはぐになっちゃった…
・とりあえず、ナハトさんごめんなさい(土下座)
以上が大丈夫な方は、追記からどうぞー!
side ジェイド
離された、白衣の袖。
顔を上げて、彼を見れば、そっと笑顔を見せてくれて。
―― あぁ、貴方には敵いませんよ。
僕は、そう思いました。
誤魔化すことも、嘘を吐くことも、できそうにないんです。
僕がそう思う相手なんて、あまりいないのですが……珍しいですね。
彼の、メンゲレの指摘は、耳が痛いほどに、図星でした。
メンゲレが広げていたアルバムを見て、僕の心を占めたのは……
羨望と、罪悪感。
仲睦まじく写る彼らの姿。
それと同時に浮かぶのは、僕の妹の姿。
僕は、リンと一度も写真なんて、撮ったことありませんから。
写真どころか、共に遊んだ記憶すら、ないのです。
故郷に帰ったとしても、それはあくまでも近況報告。
父と母と話すことが多くて、リンとはあまり共に過ごせませんでした。
―― だからこそ、嬉しかった。
メンゲレの思いが。提案が。
そして……
自惚れでなければ、隠れた"彼の感情"も、ね?
僕に、気持ちを隠そうと思うのはおそらく無理な話だと思いますよ。
だって、貴方が僕の癖に気付いたのと同じように、
僕も貴方のことを、よく知っているつもりなんですから……
ね?メンゲレ。
離れた、身体。
僅かに残った温もりと、彼が握っていた白衣の袖に残る皺。
其れさえも、酷く愛おしくて。
僕はもう一度"ありがとうございます"とそう告げて、立ち上がりました。
決心が変わらぬうちに、シュペーアの所に行きましょう。
そうしないと……
メンゲレの顔を見ているうちに、"やっぱり行かない"と言ってしまいそうな自分がいますから。
***
―― 目を、開けました。
慣れているはずの空間移動魔術も、他人にしてもらうのは初めてで。
少し緊張しつつ、シュペーアにここまで送ってもらいました。
目を開けた時、映ったのは変わらない、僕の故郷。
フォレーヌ。イリュジアで一番、緑の多い街。
久しぶり……リンの言葉通りなら、二年ぶりに訪れた故郷。
其処は、僕が知っている姿から、何も変わっていなくて。
そのことに、僕は少なからずほっとしました。
写真のことを、ゲッベルスに頼もうかとも思いましたが……やめました。
僕一人の方が、空間移動魔術を使うシュペーアにも負担をかけずに済みますし、
それに……昔から世話になっている写真家の方も、近所にいますから。
父や母とともに撮った写真のように、僕とリンの写真も、彼にとって欲しかったのです。
シュペーアの魔術のおかげで、僕はすぐに家にたどり着くことができました。
家の前で、花に水をやっている少女の姿が見えて、一瞬立ち止まって。
何と声をかけようか、と迷いました。
少し、考えてから……
「外にいて平気なのですか?もう外は、だいぶ暑いでしょう?」
そう、声をかけました。
すると、驚いて僕の方を見る、妹。
音を立てて如雨露が地面に落ちました。
「え、お、お兄様……?」
「えぇ。ただいま帰りました」
僕の返答に、リンはますます驚いた顔。
そして、すぐに慌て始めました。
「ど、どうして、此処に……?
何処か、お体の調子が悪いのですか……?」
的外れな心配。でも、仕方ありませんね。
今まで、本当にかえってこなかったのですから。
何かあったのか、と思われてしまっても、何の不思議もありません。
僕はゆっくりと首を振って、告げました。
「いいえ。里帰りですよ。……仲間に、勧めてもらったんです」
僕の返答に、リンはようやく落ち着いて……
すぐに、僕に抱き着いてくれました。
「……お帰りなさい」
「ただいま」
そんな、いたって普通の会話さえ、僕にとっては特別なものでした。
家族と、こうして"当たり前の会話"を交わすのは酷く久しぶりでしたから。
***
とにかく部屋へ、とリンに引っ張られて、入った我が家。
案の定、と言いましょうか……両親は留守でした。
恐らく、仕事でしょうね。
僕らの両親も、僕同様に医師ですから。
机の上に置かれた医学の本に、僕は思わず笑みを浮かべました。
「偉いですね。ちゃんと勉強しているのですか?」
「えぇ。私も、お父様やお母様、お兄様のような医師になりたいので」
こく、と頷いて照れくさそうに言う妹。
僕はそんな彼女の頭を撫でて、椅子に座りました。
そして、二人で話すのは、今までの出来事。
共に過ごせなかった時間を埋めるように話す、リン。
僕自身も"僕はこんなに饒舌だっただろうか"と疑問に思うほどに喋って。
「……いい場所、なのですね」
話の途中、リンがそういって微笑みました。
僕が驚いて首をかしげると、リンは笑顔のまま、言いました。
「お兄様、すごく楽しそうですから。
……同じ部隊の方と一緒にいるのが、たのしいのでしょう?」
「……えぇ、すごく」
躊躇いなく、そう頷きました。
仲間と共に過ごすのは、たのしいのです。
「今日も、ある仲間が促してくれなかったら……僕はココにはいませんから」
「そうなのですか?」
「えぇ。本来僕がすべき講義も、代わりにしてくれているのです……」
気が付いたら、彼のことを話していました。
まだ、そんなに長い間一緒にいたわけでもないのに。
不思議ですね。どうしてでしょう。
どうして、なんて……答えは、簡単ですね。
きっと、僕が彼に、惹かれているから。
初めこそ、確かに興味本位だった。
だけど、今は違うと、断言出来て……
―― でも、このことはまだ、秘密です。
きっと、妹を驚かしてしまうでしょうから。
でもいつか、リンと彼を、逢わせたいな、と僕は思いました。
***
もう少ししたら帰らなくては。
そう思った時、僕はようやく彼女にこう切り出すことができました。
「……リン、一つお願いがあるのですが」
「何ですか?」
不思議そうな顔をして、翡翠の瞳を僕に向ける、リン。
いざ言おうとすると、照れくさくて。
少し言葉に迷ってから、僕は言いました。
「一緒に、写真を撮ってくれませんか……?」
「え?」
「リンとは、撮ったことがないでしょう……?」
僕の言葉に何度か瞬きをした後、リンは花が咲いたような笑顔で、頷いてくれました。
その笑顔だけで、"ああ、よかった"と、そう思いました。
―― ありがとう、メンゲレ。
もう一度、心の中でお礼を言って。
ありがとう。貴方の言葉がなかったら、僕はこの笑顔を見ることができなかった……
***
リンにしっかり帽子をかぶらせて、街の中のある写真館に入りました。
そこにいた、一人の男性に声をかける。
「お久しぶりです。今、リンと一緒に写真を撮っていただいてもよろしいですか?」
「おぉ……ジェイド君、か?大きくなったなぁ」
白髪交じりの彼は、僕が幼い頃から写真を撮ってくれている方で。
僕と両親、リンと両親の写真は、いつもここで撮ってもらっていた。
スナップでもよかったのだけれど、どうしてもやっぱり、ぎこちなくなってしまうから。
一枚でもこうして、一緒に写った写真が欲しいと、そう思ったのです。
それが、"家族の証"であるような気もして……
「じゃあ、撮りますよ……お二人とも、ならんで」
穏やかな声。
リンは照れ臭そうに、僕の方に寄り添って。
「……お兄様」
「何ですか?」
「……ありがとうございます」
お礼を言うことじゃ、ないでしょうに。
そう思いつつ、僕も"ありがとうございます"と、返答していました。
「撮りますよ」
穏やかな声。
そして、軽いシャッター音。
その音が、思い出の刻まれる音にも聞こえて……
***
「……もう、帰ってしまうのですか」
写真館を後にしたときには、すでに夕暮れ時。
見れば、遠くにシュペーアの姿。
僕一人では、ディアロまで帰ることは出来ませんから、迎えに来てもらったのです。
僕が小さく頷くと、リンは少しさびしそうに、笑いました。
「……お気をつけて。写真、届いたらお手紙かきます」
「えぇ。リンも、身体に気をつけて」
そういって、一度リンの髪を梳きました。
泊まっていきたい気もしましたし、両親に挨拶もすべきかもしれません。
でも、今日、こうしてリンと過ごして、思ったのです。
―― 僕の家族は、此処にいる人たちだけじゃない、と。
確かに、血のつながった家族は、父と母、リンです。
でも、僕にとって仲間は、家族と同じような存在だと、改めて思ったのですよ。
いつも、一緒にいたからこそ分からなかったこと。
離れていたから、わからなかったもの。
その両方を、この帰郷で知ることができました。
シュペーアの方へ歩き出しかけた僕の手を掴んで、
リンは何かを、握らせてくれました。
「わ、私が作ったものですから……下手、ですけど」
―― 受け取ってください。
消え入りそうな声でそういって、リンは俯いてしまいました。
一体何を渡されたのだろう、そう思いながら手の中にあるものを見ると。
「ポプリ、ですか?」
「……はい」
小さく頷くリン。
思えば、花壇で育てられていたのはハーブばかりでしたね。
「ありがとうございます……
これ、他の仲間にも、お裾分けしてもよいですか?」
僕がそう尋ねると、リンは驚いた顔をあげました。
そして、照れくさそうに笑って、頷いてくれました。
「少しでも、お兄様や、他の皆さんの疲れを取ることができたら、って……」
「ありがとう。その気持ちがとてもうれしいですよ」
もう一度礼を言って、そっとリンの手の甲にキスを落とすと、
今度こそシュペーアの方へ歩き出しました。
あまり彼を待たせるわけには、行きませんからね。
作動して、遠くなる景色。
その中で手を振る妹に、そっと手を振りかえして、思う。
―― ありがとう。
もうその言葉は、誰に向けたものか、なんて関係ないのでしょうね。
***
そして、戻ってきたディアロ城。
まるで今日一日が夢の中の出来事であったかのように、騒がしい周囲。
此処まで連れて帰ってくれたシュペーアに礼を言った後、
僕がまっすぐ向かったのは……
「メンゲレ、いますか?」
「!ジェイドさん、早かったですね」
ドアをノックして声をかければ、中から扉を開けてくれた黒髪の彼。
部屋の中に入れてもらってから、もう一度、しっかりお礼を言いました。
「ありがとうございました。貴方のおかげで、とても充実した時間を過ごせましたよ」
楽しいだけじゃない。
大切なことにも、気づけたのです。
僕一人じゃ、絶対に気づけなかったことに。
「いえ……僕は、思ったままのことを、言っただけですから」
気にしないでください、と言って机の上に広がっていた書類を片付けるメンゲレ。
僕は彼の手を掴んで、小さく笑って見せました。
「……僕がいなくて、寂しかったですか?」
「な……?!」
「……冗談でも、"寂しかった"って言ってほしいものですね」
わざと冗談めかして、僕はそういいました。
そのまま、彼の白衣のポケットにリンのポプリを入れる。
彼はすぐに気づいて"何ですか?"と訊ねる。
「お土産ですよ。リンと、僕からのプレゼントです」
"お揃いですよ"なんていってみれば、目を丸くするメンゲレ。
子供っぽいことを言うのは性に合いませんが……
"家族"の前でカッコつける必要なんて、きっとないのでしょう?
僕はいつものように笑いながら、そっと彼を抱き寄せて、囁く。
「ただいま」
「……お帰り、なさい」
そっと背に回された腕を愛おしく思いながら、僕も腕の力を強くしました。
甘い香りが、ふわりと漂ってくるのを、感じながら。
― 大切なモノ。 ―
〜 近すぎて、見えなかった。遠すぎて、気づけなかった 〜
***
あとがき
…相変わらずの星蘭クオリティでごめんなさい。
最初にかいたように、完成間際でPCが急に機嫌を損ねて強制終了
という事故があったため、最初にかいた内容と大きく変わってて…
ぐだぐだが、ましている気がします;;
そして、メンゲレさんとの絡みが少なくてごめんなさい。
一番最後のシーンがかきたかった…というのが、本音です(蹴)
リンのポプリは、多分ジェイドが返ってきた時に別の袋に分けたんだと思います。
……彼もなかなか器用な奴なので(笑)
小道具大好きな星蘭です!(キリッ)
何はともあれ、ナハトさん。
素敵なお子様を貸してくださって、ありがとうございました!
2012-9-5 22:25