学パロ赤髪金髪コラボでシリアスめな話をば。
いじめネタというかいやがらせネタというか…
こんな展開にしてしまってすみません←切実
*attention*
赤髪金髪コラボSS
学パロ(Laurentia!)設定です
シリアス目です
先輩に目をつけられてちょっかいかけられるライニさんといういじめネタ(おい)
何だかスッキリしないところで終わってしまってすみません;;
相変わらず妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした!
以上がOKというかたは 追記からどうぞ!
ある日の放課後のこと……
ハイドリヒは鞄をもって、学校を出ていた。
今日はいつも一緒に帰る彼が部活で少し遅くなると言う。
暫くは図書館で時間を潰していたのだが、
ちょうど自分が読んでいた本を読み終わって、暇をもて余すことになった。
今からもう一冊本を読むのは中途半端なところで終わってしまいそうだ。
ハイドリヒは少し考えた末に、彼と駅で待ち合わせた方が良いか、という結論に達した。
ハイドリヒも彼……アネットも、電車で通学している。
学校はお互い反対方向。
駅が二人の待ち合わせにはちょうど良い場所だった。
普段は部活がなければアネットはハイドリヒの学校まで迎えに来る。
けれど、自分の方が早く終わっている以上、
なにも彼にそんな負担をかける必要はないだろう、と思った。
ハイドリヒはアネットに駅で待っているからというメールを送って、自身は駅に向かう。
いつも通りのやり取り。
いつも通りの、帰り道のはずだった。
その、道中。
ある店の前を通りかかったときだった。
不意に響いたのはばしゃっと、大きな水音。
ハイドリヒの頭からぽたぽたっと水滴が落ちる。
唐突なその衝撃にハイドリヒは驚いて固まった。
「あー、すんません!」
聞こえた声に顔をあげれば、その店の制服をきている少年がたっていた。
その相手の顔を見て、ハイドリヒは目を見開く。
それは、見覚えのある顔だった。
中学時代の、先輩にあたる人物。
あまり好意的な扱いを受けた記憶はない。
直接なにかをされた、ということは今までなかったのだが……
直感的に感じる。
今のは、わざとだ。
恐らく、此処は彼のバイト先なのだろう。
毎日勤めているのならば、ハイドリヒが此処を通ることは知っているはず。
タイミングを図れば十分可能なことだ。
その証拠に笑っている少年。
今さら今水を浴びせてしまった相手が"知り合い"であることに気づいた風を装って、
彼はハイドリヒに向かって言う。
「お、お前だったのか。
久しぶりだな……俺のこと、覚えてるか?
ごめんなぁ、少し水が強く出すぎたみたいでな」
彼は親しげに声をかけてきた。
今さっきの事態は、傍から見れば事故に見えるだろう。
けれど、ホースを持っている少年は明らかに笑みを浮かべていた。
その、表情に滲む悪意。
それに気づけないほどハイドリヒは鈍くない。
「どうしたー?」
ハイドリヒが答えられずに固まっている間に、店の奥から、似たような年の少年が出てくる。
彼もまた、見覚えがある人間だ。
同じく、先輩にあたる人間……
彼もまた、表情に笑みを滲ませていた。
ホースを握っていた少年は、店から出てきた少年を小突いて、言う。
「お前の所為で水が通りかかった後輩にかかっちまったんだよ」
「あ、マジで?悪い悪い……」
わざとらしく、謝る彼ら。
示しあわせたような、やり取り。
―― ああ、なるほど。
ハイドリヒは酷く冷静に自分の状況を分析した。
彼らは、明らかにハイドリヒに敵意を向けていた。
それも、恐らく……
今日昨日の、ものではないだろう。
妙に察しが良くて、妙に冷静な自分が憎いとさえ、思った。
気づかないで済めば、その方がよかったのに。
ハイドリヒはよくも悪くも、目立つ生徒だった。
容姿端麗、頭脳明晰……
性格は、少々難ありと見なされていたかもしれない。
それがまた、周囲の、特に年上の生徒の反感を買うきっかけになっていたのかもしれない。
ハイドリヒは髪をかき揚げただけで、彼らに返事をしなかった。
気にするなとも言わなければ怒ることもなかった。
怒っても無駄だと知っている。
何より傍からみれば事故なのにわざとだろうと食って掛かっても、
ハイドリヒが不利なのは目に見えている。
ハイドリヒは自分が抱えている鞄を見た。
幸い、濡れずに済んだようだった。
鞄が濡れなかっただけ、まだましだ。
もし濡れていたら教科書や本も濡れてしまう。
けれど、濡れたシャツが肌に纏わりついて気持ちが悪い。
何より……こんな格好では、"彼"に心配をかける。
ハイドリヒは身を翻した。
此処から駅まで歩くより、学校に引き返した方が早い。
保健室にいけば、着替え位は貸してもらえるだろう。
「相変わらず無愛想だな。反応くらい返せっての」
「中学の時から気にくわなかったんだよな、彼奴」
遠ざかるハイドリヒの耳にも届いたのは、そんな声。
後ろから、そんな声が聞こえた。
わざとらしい、声で。聞こえよがしに。
ハイドリヒは無言で遠ざかる。
向こうが喜ぶような反応を見せないことが、せめてもの抵抗だった。
濡れた体は確かに冷たかったが、それとは違う原因で、
ハイドリヒの体は震えていた。
屈辱。
怒り。
そして、恐怖……?
しかしそれは決して顔には出さず、ハイドリヒは足早に学校へ戻っていった。
***
それから、少しして。
ハイドリヒは鞄をもって、再び学校を出た。
校門へ向かえば、そこに立っている赤髪の少年の姿が見える。
大きなスポーツバッグ、ハイドリヒたちとは違う制服には薔薇の校章がついている。
彼……アネットはハイドリヒが歩いてくるのに気づくと、大きく手を振った。
ハイドリヒは驚いて目を見開く。
駅で待ち合わせといったのに、と。
「アネットさん……何故」
少し急いで彼に駆け寄れば、アネットは笑顔を浮かべていった。
「駅で待ってる、っていったのにいつものとこにラインハルトいないからさぁ、
少しでもはやく会いたかったし、迎えに来ちゃった」
「あ……すみません」
アネットに連絡をいれるのを忘れていた、とハイドリヒは思う。
結局、保健室でシャツを借りたのは良いのだが、
事情を説明するのに少し手こずったし、
濡れた髪をある程度乾かさなければならなかったため、時間を食ったのだ。
アネットは首をかしげつつ、訊ねる。
「どうしたんだ?忘れ物?」
「え、えぇ。すみません……
アネットさんの方が先に終わるとは思っていなくて」
どうにか、いつも通りの口調で誤魔化した。
アネットは笑顔で首を振る。
「気にすんなって。俺も思いの外早く終わったし!帰ろうぜ!」
アネットはそういって、歩き出す。
ハイドリヒも彼と一緒に歩き出した。
もう一度あの店の前を通ったが、もうすでに"彼ら"の姿はなかった。
ハイドリヒはその事に少なからず安心していた。
***
そうしていつものように電車に乗る。
電車は少し空いていて、どうにか二人とも座ることが出来た。
ハイドリヒは窓の外をみて少し先ほどのことを考える。
明日から、どうなるだろう。
今回だけで、終わりだろうか。
それとも……
「ラインハルト?」
横から声をかけられて、ハイドリヒははっとする。
隣に目を向ければアネットが怪訝そうな顔をして、彼を見つめていた。
「どうした?ぼうっとしてたけど」
「何でもないです」
さらりと答えるハイドリヒ。
動揺してはいけない、と思っていた。
濡れた制服は鞄の中だし、先ほどの出来事がばれそうなものは何一つない、はず。
何でもない、と答えたハイドリヒをみてアネットは首をかしげる。
「そうか?具合悪かったりしないか?」
「平気ですよ……」
何でもないですから、とハイドリヒは答えた。
アネットは"そうか?"といいつつ……
ハイドリヒの髪に手を伸ばした。
そして、その髪をそっと撫でる。
ハイドリヒはびくりと身体が跳ねさせた。
驚いたように目を見開いて、アネットを見る。
「な、何……」
「?少し髪、縺れてないか?」
ハイドリヒはその指摘に目を見開く。
ほとんど癖のようにハイドリヒの髪を撫でているアネットには、その微かな違いがわかったようで。
艶やかな彼の金髪が少し縺れている。
濡れた髪が乾けば縺れもするだろうと、ハイドリヒは今さらのように思った。
「プールとか、入った?……って訳でもなさそうだよな」
水泳の道具持ってないし、とアネットは言う。
ハイドリヒは視線を逸らしつつ、"気のせいでしょう"と返す。
もう、誤魔化す他なかった。
彼に、無用な心配をかけさせないためには。
「……そうか?」
若干腑に落ちない様子ではあったが、アネットはそれ以上深い追求はしなかった。
「あ、そういやさ……」
いつも通りの明るい笑みを浮かべて、いつも通りの取り留めもない話をする。
授業中に思いきり居眠りをかまして先生に叱られたこと、
部活でリフティングがいつもより少し長く続いたこと、
ハイドリヒの学校に向かう間に猫を見かけて全力逃げたこと……
そんな、変わらない彼の事が支えだった。
変わらないこと。
いつも通りであること。
それに少なからず、気持ちが安らぐ。
不安が、少し薄れる気がした。
自分の先輩にあたる人間からのいやがらせ。
それに少なからず傷ついたことに、怯えていることに、ハイドリヒは気づいている。
けれど解決方法も、これから先に起きるであろう事態も、浮かばない。
消えない不安で、苦しいような気がした。
自分はそんなに弱くない。
自分一人でなんとかできる。
そう思おうと、していた。
「……ラインハルト?」
アネットはもう一度彼に声をかける。
彼の様子がおかしいと、アネットも気づいている。
アネットが気づいていることを、ハイドリヒは理解していた。
しかし……
ハイドリヒはアネットの肩に寄り掛かって、眠っているフリをした。
今までごく数回ではあったが、実際そういう事があったため、
誤魔化しがきくだろうと思ったのだ。
案の定、アネットは"寝てんのか……?"と小さく呟く。
少し怪訝そうな声ではあったけれど、そのまま、そっとハイドリヒの髪を撫でた。
縺れた金の髪を漉いて寄りかかっているハイドリヒの体をさりげなく抱き寄せる。
その手の優しさに身体が強張りそうになる。
震えそうになる。
頼りたく、なる。
ハイドリヒはそれを堪えつつ、眠ったフリを続けた。
けれど、その手はアネットの制服をぎゅっと、握っていた。
―― 強がりと、心配と… ――
(様子がおかしいとは思う。でも、その理由が俺にはわからなくて)
(これは私の問題。私が解決しなければならないこと。けれど…)