ナハトさん宅のアイヒマンさんと我が家のアルのSSです。
白黒ショタコラボ…楽しかったです(おい)
*attention*
・アイヒマンさんとアルのSS
・ほのぼのめなお話です
・何かと対照的なショタコラボ(容姿性格etc…白黒ショタコラボ(こら))
・アルは無邪気で明るいショタっ子
アイヒマンさんはちょっぴり自信がなさげなショタっ子だそうで(ぇ)
・キャラふわふわで済みません;;
・相変わらず妄想クオリティです
・ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKと言う方は追記からどうぞ!
少し埃っぽい空気が漂う、図書館。
その奥の棚の方にちらちらと動く、白色。
眩しい程の太陽の光が当たる度、その白色はきらきらと光る。
「だいたいこれで必要なのは全部用意出来たかなぁ……」
積み重なった本を見て、白髪の少年……アルは小さく呟いた。
本はどれも結構な厚さがあり、文字も難しそうなもの。
古い書物らしく、少しページをめくるだけで埃が舞った。
アルは少し咳をしてからそれを軽く払って、持つ。
落としたら大変だし、無理が無い程度におさめはしたが、
流石に少々重いなと思いつつ、自分の部屋に向かって歩きだした。
今日は講義は休みだった。
その代わり、課題として薬学か生物学に関するレポートを書かなければならない。
今までに習ったことなんでも良い、と言う課題が却って難題だった。
とりあえず興味がある本を使って書く事を決めよう、と思って本を探しに来たのである。
「まぁ、夜に仕上げれば良いか」
アルはそうひとりごちて、ゆっくりと歩みを進めていった。
***
そうしてアルが草鹿の棟がある方へ歩いていた時だった。
中庭の真横を通る廊下を歩いて行くアルはちらとそちらへ視線を向けた。
昼過ぎの中庭には訓練中の騎士や休憩中の騎士がたくさんいる。
まだ少々暑い時間帯ではあるものの、今日はいつもより少し過ごしやすい気温だ。
穏やかな雰囲気。
なかよくじゃれあう、騎士たち。
そんな和やかな様子を見て、アルは猫のように目を細めた。
「僕もあとで少し外に出ようかな……あれ?」
アルは見つけた姿に思わず声をあげる。
幾度かしか話をしたことはないが、姿は何度も見ている少年の姿があった。
黒髪に、赤い瞳。
身長こそアルよりずっと高いのだが、
彼の雰囲気に勝手に親近感を持っていたりもした。
アルの"先生"であるメンゲレとも親しいらしいし、
もう少し話をしてみたいとも思っていた。
そんな思いのままにアルは本を抱え直しつつ、彼の方へ向かって叫ぶ。
「アイヒマンさん!」
アルの声は他の騎士のそれに比べて結構高い。
それ故、よく届く。
不意に呼ばれて驚いたのか、彼……アイヒマンは勢いよく振り返る。
その勢いも相まって、ちょうど吹いてきた風が彼の軍帽を飛ばした。
「あ……!」
黒髪の彼……アイヒマンが小さく声をあげるのが聞こえた気がした。
押さえようとするも、ワンテンポ遅れてしまった。
アイヒマンは慌ててそれを追いかける。
今日の風は少々強い。
いとも簡単に飛ばされた帽子はアルの足元まで飛んでいった。
アルは足元に転げて来たそれを拾い上げた。
しかし、彼は自分の状況を忘れている。
「わ……」
大量の本を抱えたままで屈めばどうなるか。
無論、バランスが崩れて本が雪崩落ちる。
アルは小さく声をあげた。
「アルさん、すみませ……わっ!?」
おそらく、足元に石ころか何かが転がっていたのだろう。
アイヒマンはそれに躓いたらしく、その場に転んでしまった。
無論、驚くのはアル。
一瞬何が起きたのかわからず黄色の瞳を大きく見開く。
そして事態を理解すると一層慌てた顔をした。
「わわ、アイヒマンさん!?」
アルは飛んできた帽子をかかえて彼に駆け寄った。
アイヒマンは転んだ羞恥故にか顔を真っ赤にして起き上がった。
怪我はしていないが、如何せん恥ずかしい。
ぱっぱっと慌てて服を払うアイヒマンを見て、アルは心配そうに眉を下げる。
「大丈夫ですか?怪我は?」
「だ、大丈夫です、済みません……」
しゅんとしてアイヒマンはアルに謝る。
完璧に落ち込んでしまったらしく、しょぼんと俯いている。
他人の前で無様に転んだ羞恥。
失態を晒した自分への呆れ。
自分の帽子を拾おうとして本を落としてしまった、
挙句余計な心配までさせてしまったことによるアルへの申し訳なさ。
そんなものが綯い交ぜになったような表情を見せるアイヒマン。
アルはそれを不思議そうに見て、笑った。
「謝ることないですよ。怪我がないのなら、よかったです」
純粋に、医療部隊の人間としての思い、
同時に"仲間"としても、怪我がなくてよかったと言ってアルは笑う。
そしてアルは拾った彼の帽子を差し出して、言った。
「はい、これ帽子です。……これ、カッコ良いですよねぇ。
僕たち草鹿の騎士は白衣姿……騎士服でさえも着ないので、
ちょっぴりこう言う洋服とかお帽子、憧れます」
「え……」
アイヒマンは顔をあげ、赤色の瞳でアルを見た。
アルはにこにこしながらアイヒマンを見つめている。
差し出された帽子と彼の笑顔をただただ見つめるアイヒマン。
アルはそんな彼を見つめて、小さく首をかしげる。
そして好奇心か……ちょこりと帽子を自分の頭の上に乗せて、言った。
ふわふわとした白髪の上に乗る、アイヒマンの帽子。
「勝手にごめんなさい、ちょっとかぶってみたくて」
"似合ってますか?"とアルは照れくさそうに問いかける。
少し驚いたように彼を見ていたアイヒマンだが、すぐにふっと表情を緩めた。
「似合いますよ」
少しはにかんだようにアイヒマンは笑う。
アルは嬉しそうな顔をした。
少し目を細めて、アイヒマンは小さく息を吐く。
無邪気に笑う彼が、眩しく見えた。
計算ずくではない、それでも自分を励まそうとしてくれているのが、
なんとなくでもわかったから……
アルは"ありがとうございます"と礼を言うと、帽子をアイヒマンの頭に乗せた。
アイヒマンは礼を言って、赤くなった顔を隠すように帽子を少し深くかぶる。
そんな彼を人懐っこい黄色の瞳で見つめながら、アルは問うた。
「メンゲレさんにご用事ですか?
今日は草鹿の講義も訓練もないので、
メンゲレさんの自室かジェイド様のお部屋にいると思いますよ」
アイヒマンはぱちぱち、と赤い瞳を瞬かせた。
彼は察しが良いな、と思う。
任務絡みで此処を訪れる事もあるアイヒマンだが、今日は違った。
久しぶりに、友人の元を訪ねてみようと思ったのである。
しかし、彼……メンゲレは医療部隊に属する身。
アポもなしに会いに行っては迷惑だろうか、と思って中庭で戸惑っていたのである。
他人を思うが故に少々行動に自信を持ちきれない彼らしい思いだ。
アイヒマンはアルに軽く頭を下げて、いった。
「あ、ありがとうございます……何から何まで、済みません」
「謝ることは無いですって!
あ、そうだ。アイヒマンさんも一緒にお茶を如何ですか?」
ぱ、とアルは何かを思いついたような顔をして、そう提案した。
「え……?」
きょと、とするアイヒマンを見てアルは微笑む。
「ちょうどもうすぐお茶の時間ですし……
メンゲレさんや、ジェイド様もお誘いして。
僕、もう少しアイヒマンさんとお話してみたかったんですよ」
「ぼ、僕とですか?」
アルの思わぬ言葉にアイヒマンは驚いて目を見開く。
戸惑いの色を灯す彼を見て、アルは少し不安そうな顔をした。
「あ、ご、ご迷惑でしたかね……」
「!い、いえ、済みません、少し驚いてしまって……」
アイヒマンは慌てて首を振る。
本当に、ただ驚いただけなのだ。
仕事熱心な彼は新しい友人を得るような余裕もなかった。
この城……ディアロ城を訪れるようになって、交流の機会も増えたはずだが、
あまり他の騎士と会話を交わすこともなかったし。
せいぜい自分に興味を持っているらしい琥珀の瞳の青年に声をかけられる程度で。
だからこそ、アルの申し出に驚いたのである。
アルは"ならばよかったです"と言って笑顔を浮かべた。
きゅ、とアイヒマンの手を握って、首をかしげた。
「どうですか?」
「え、あ……アルさんに、ご迷惑でなければ……」
アイヒマンは少し視線を泳がせてから、こくっと頷いた。
今日はほかに仕事もないし、せっかくの誘いを断って彼に悲しい思いをさせるのも気が引ける。
案の定、アイヒマンが了承の返事をするとアルは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます!
じゃあ、とりあえずこれ僕、自分の部屋に運んじゃいますね」
「あ……」
未だ彼の足元には彼が借りてきた本が散らばっていた。
アルはそう言って、散らばっていた本を拾い上げた。
アイヒマンはそれを手伝って、数冊持つ。
「僕も手伝いますよ」
「ありがとうございます!ふふ、嬉しいです」
そうして、本を抱えた二人は並んで歩きだす。
長い廊下を歩く途中、珍しいペアだなと言う声が周りから聞こえたが、
アルはいつまでもにこにこと上機嫌だった。
その笑顔を見て、アイヒマンも少し表情を緩めた。
―― Black&White ――
(夏の日差しの下の白と黒のコントラスト
明るく笑う少年とそれを微笑み見つめる静かな少年)
(もっとなかよくなりたいんですと笑う白髪の少年に
黒髪の少年ははにかんだような笑を返した)
2013-8-3 23:46