「君は、異世界から来た。違うかい?」
彼の質問に、私は答える事が出来ない。
いつかスパーダが私に訊いたように、その時彼は答えなくていいと言ってくれたけど。
「………」
「どうしたの?答えられない?」
コンウェイと名乗ったこの人は、そう簡単には見逃してくれないらしい。
彼はきっと、頭の中ではその"答え"を出している。
けれどそれは不確実なものだから、私から確実な"答え"を見出そうとしている。
そう。
なら私は、答えてしまってもいい。
コンウェイとキュキュ。
異世界から来た人間が二人もいる今なら、私が異世界から来たと話しても何らおかしな事はない。
だけど、それは。
私が一緒にいた"彼ら"と、今いる"彼ら"は違うという事で。
同じ世界観で、名前で、容姿で、性格で。
全てが同じなのに、ここにいる彼らは違う。
誰も私の事を、知らない。
わかっているのに、受け入れきれない。
私は彼らを前にしてその事実を受け止められる程、まだ強くはないのだ。
俯いてぎゅっと手を握りしめた。
指先が冷たい。…私は、怖いんだ。
「…。ごめん、僕が悪かったよ」
不意に、握った両手の上に手が重なる。
顔を上げれば彼は眉根を下げて視線を逸らした。
そして「だから、」と言葉を続ける。
「どうかそんな悲しそうな顔をしないでほしい。
まるで僕が君をいじめているみたいだ」
頼み事をするような口調で、だけど後半はいつもの調子で彼は言う。
その言葉と困った表情に、もしかして慰めてくれているのだろうかと何となく思って私は、少しだけ口角を持ち上げた。