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雷鳴と手を繋ぐ


「ただいま戻りました…。……あ、れ……スパーダ、さん?」

「よォ」


小さな紙袋を抱えて部屋に入った透子を出迎えたのは、片手を軽く上げたスパーダだった。


街に到着し宿を確保した一行はまず、不足しているアイテムや個人の買い物を済ませる為にそれぞれ別れて宿を出た。
透子もある程度の買い物を済ませて帰ってきたのだが、どうやら先に戻ったのはスパーダだけらしい。


「あの、皆さんはまだ…?」

「当分戻って来ねーだろ。あいつら買い物長ェしな」

「そうです、か…」


荷物を置いて窓を見遣る。
外はどんよりと薄暗く、今にも降り出しそうな天気をしている。


「心配しなくても飯の時間になりゃ帰ってくんだろ」


窓の外を心配そうに見つめる彼女にそう言うと、スパーダはごろりとベッドに寝そべる。
透子も近くの椅子を引き寄せ座る。

そしてメンバーが戻ってくるまでの間、二人で他愛のない話をして時間を潰す事にした。





「…皆さん、遅いですね…」

「どっかで雨宿りでもしてんだろ」


外は先程よりも暗く、ザーザーと雨が降り続いている。
最初こそ続いた会話も、話題が減っては徐々に口数も少なくなっていった。


「………」


雨音だけが響く部屋の中。
視線は自然と窓の外へと向けられる。


「―――…」


不意に透子の肩が小さく揺れた。
視線を窓から透子へと移し、訝しげに問う。


「透子?」

「っ…はい?」


にこりと笑って首を傾げる彼女に、スパーダも首を傾げる。
気のせいかと思いその場は何も言わなかった。

ところがその違和感はどんどんと大きくなっていく。
話している最中にも一瞬肩を揺らす透子は、平然を装っているもののどこか様子がおかしい。
そう思って再び疑問を口にしようとした頃、ゴロゴロとした音が耳に届いた。


「!」


その近くで聴こえた音に、スパーダはベッドから起き上がると椅子を引き寄せ透子の隣へ移動する。

不思議そうに首を傾げるその顔色は、あまりよくない。


「透子、お前…、!」

「っ!?」


ビクゥッと跳ね上がった肩と、近い雷鳴。
やっぱりと思って目を遣れば、慌てた様子の彼女。


「あっ!えっ…とこ、れ、は…ですねっその……っきゃああ!?」


弁解しようとした彼女の声を遮って響いたのは、先程よりも大きな音。
床がビリビリと微かに震える。どこかに落ちたらしい。
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