*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋9』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第9章です⇒
story.28:『遠慮無し』
高柳:「……………。」
高柳の手に、果物いっぱいのバスケット。
白波:「……………。」
高柳と一緒に来た白波は、なんだか気まずい表情。
姫井:「はぁ〜〜〜…」
姫井のデカイため息。
水嶋:「……気ィ合うなぁ?」
石塚:「そ、そうだな」
不知火:「姫井先輩、すみませぇ〜ん!」
不知火の手にも、果物いっぱいのバスケット。
姫井が入院してる病院へ見舞いに来た水嶋たちは、果物のバスケットの多さに苦笑いするしかなかった。
高柳たちより少し前に見舞いに来た生活安全課の刑事・不知火花穂も果物のバスケットを持ってきて、ため息を付いていたばかりなのに、さらに高柳たちが果物バスケットを持って来たので、姫井は再び果物ナイフを手に持つ。
姫井:「もう、マンゴー剥くからみんなで食べなさいよねぇ!」
高柳:「すみません……」
病室の中に入ると、高柳は果物のバスケットを床に置いた。
床には皆がそれぞれで持って来たであろう果物のバスケットが、自分が持って来たのを含めて7つもあった。
高柳:「お見舞いといったらコレかなって思ったんですけど…」
姫井:「いや、そうかもしれないけどさぁ…」
姫井は、マンゴーを剥きながら困った表情をする。
さっきからこうしてみんなにフルーツを振る舞っていたのか、テーブルには使用済みのウェットティッシュが置かれていた。
姫井:「私…何日、朝昼晩にフルーツを食べ続けなきゃダメなのかしら」
水嶋:「俺が持って来たの、お前らに食わそうと思ったが……必要ないみたいだしな?」
白波:「そうですね……」
白波は、床に置かれたバスケットに目を奪われていた。
白波:(気が合いすぎだな…)
何となく、姫井のイメージで果物のバスケットを提案したけど、まさかここまで被ってしまうとは思わなかった。
すると、改めて周囲を見渡した不知火が姫井に言う。
不知火:「なんか、姫井先輩の見舞いに来る人、私以外全員男の人なんですか?」
不知火の問い掛けで、姫井は思い出しながら言った。
姫井:「……そうねぇ、今日は男しか来てなかったわ」
透真:「最初の3つも男が持ってきたのか…」
姫井:「そうよ。同じ刑事課の田中と橋本。あと鑑識のおじさんが持って来てくれたの」
水嶋:「そうだったのか」
水嶋は3人の顔を思い出しながら、何となく果物のバスケットを持って来た時の3人をイメージしてみた。
すると、姫井がマンゴーの皮を剥きながら言った。
姫井:「最初の2つの時は有り難かったけど、さすがに3つ目が来た時は……。
けど、3つ目は鑑識のおじさんが持って来てくれたのよねぇ…。
お世話になってるから断れなくて、『コレくらいペロリと食べちゃいますよ』って言って貰ったのよね」
水嶋:「……お前、俺たちには遠慮無しに持ち帰れって言ってたよな?」
姫井:「遠慮する仲じゃないし、鑑識のおじさんとは違うの」
姫井はそう言ってから、切ったマンゴーをみんなに振る舞った。
姫井の話を聞いて、水嶋はこう口にした。
水嶋:「お前、てっきり長尾のことが好きだと思ってたが、本命は鑑識のおじさんなのか」
姫井:「違いますー!鑑識のおじさんは優しいし、頼りになるけど、結婚してるし。
長尾のことも、別に好きってわけじゃないわよ!」
姫井は赤面しながらそう言った後、ハッと平常心を取り戻してから言った。
姫井:「…まぁ、尊敬みたいなのはしてたけどね」
水嶋:「長尾を?……まぁ、俺も感謝しなきゃならないところはあるけどな。」
第7の槐こと、七条直弥の時、記事に直弥が自分を刺したことを書かないでいてくれたこととか。
生きているうちは、人前で長尾に感謝してるとか言えなかったけど、決して長尾は悪い奴ではなかった------------その時、不知火が爆弾発言をした。
不知火:「じゃあ!姫井先輩は、水嶋さんのことはどう思ってるんですか?」
姫井:「………………。」
姫井を含めて、その場にいた全員が沈黙してしまう。
水嶋:「………………。」
白波:「…なぜ、この流れで?」
不知火:「え?だって、姫井先輩の周り男の人だらけだから、気になるじゃないですか」
……この場にいた不知火以外の全員は、理解をした。
高柳:(天然か!?)
確かにそういう話をしていたかもしれないが、水嶋本人がいる前で姫井にそんなことを聞くなんて。
高柳:(それともバカなのか!?)
高柳は目の前で、俯いてしまっている姫井を見て内心なぜか焦ってしまう。
不知火は1人、?という感じで自分の発言の重大さにまだ気付いていない。
すると、姫井が口を開く。
姫井:「そ、そうね…」
姫井は決心したのか、少し照れながら言ってきた。
姫井:「水嶋って、年上なんだけど遠慮したりかしこまったりする必要がない雰囲気があるっていうか……ほら、兄弟みたいな感じ」
不知火:「そういえば、姫井先輩より上司なのに姫井先輩は水嶋さんのこと呼び捨てですよね」
高柳:「あっ」
不知火の言葉を聞いて、高柳は気が付いた。
そういえば、姫井は最初から水嶋のことを呼び捨てにしていた。
水嶋:「最初の頃は高柳や不知火みたいに、"先輩"呼びしてたけどな。とある殺人事件の捜査に参加していた時、俺が直感したことを言ったら、ふざけんなって言って------------」
姫井:「もう!せっかく褒めてあげようと思ったのに、そんな過去のこと思い出させないでよ!」
水嶋:「ったく…。何が『褒めてあげる』だよ。お前は本当に、生意気だよなァ」
透真:「原因は律だけどな。」
水嶋:「は?何でだよ?」
ニコニコ顔の透真を見ながら、水嶋は問い掛ける。
そんな2人を目で追うと、なぜかホッとした顔をする石塚が目に入った。
高柳:「?」
高柳は、思った。
石塚は、姫井と水嶋が喧嘩を始めないか心配していたのだろう、と。
その時、扉がノックされて扉が開いた。
舘巻:「おぉ、みんないたか」
姫井:「!」
姫井は、舘巻の手にあったものを見て声を上げる。
姫井:「舘巻さ〜ん!」
舘巻:「ん?何だ、床にあるバスケットの数…」
舘巻の手には、お見舞いの花束と花瓶があった。
姫井:「舘巻さんだけよ!
フルーツバスケット以外のものを持って来てくれたの!」
舘巻:「そうだったのか。
キレイだろう?俺はセンスないから、お店の人に選んで貰ったんだよ。」
舘巻はそう言ってから、病室にある洗面台に向かい、花瓶に水を入れてから花束を差した。
そして、ベッドの近くにある棚の上に花瓶に入れた花束を飾った。
舘巻:「すまないね。無造作に飾っちゃって…」
姫井:「いえ、良いんです。
お花、嬉しいです。ありがとうございます!
あ。良かったら、マンゴー食べてください」
舘巻:「ありがとう。頂くよ」
姫井がマンゴーを差し出すと、舘巻は笑顔で受け取り食べる。
姫井の喜び様に、水嶋や高柳たちは少しヘコんだ。
すると、舘巻が言ってきた。
舘巻:「そういえば、ここへ来る前に警察病院へ行って九条秋生くんに会って来たよ」
水嶋:「…どうでしたか?彼の様子は」
水嶋がそう尋ねると、舘巻は難しい顔を浮かべながら言った。
舘巻:「俺が刑事だと言ったら何回も聞かれたよ。
『千春はなぜ死んだんですか?』って…。
妹さんの死の理由が思い出せないせいで、逆に不安を煽ってしまっているみたいだったな…」
水嶋:「そうですか…。
槐事件のことも思い出せない感じでしたか?」
舘巻:「あの様子じゃあ、な」
舘巻がそう言うと、水嶋たちは黙り込んだ。
高柳:「……槐事件、次があるとしたら今度は"十条"ですね」
白波:「槐事件は次でラストなんでしょうか」
水嶋:「最後じゃねぇよ」
水嶋はそうはっきりと言う。
水嶋:「どんな結果になろうと、真幸くんたちの罪は消えない。
……戻れないんだよ、罪を犯す前には。」
高柳:「そう、ですよね…」
水嶋:「ああ…」
姫井:「"戻れない"って、槐たちがターゲットを殺害する前に必ず言うけど…」
姫井は、こう言った。
姫井:「黒幕も、"戻れない"って思ってるのかしら…」
姫井の言葉に、水嶋は言う。
水嶋:「さぁ…な。」
浮かない表情を浮かべながら、水嶋は槐事件の先を考える。
仮に第10の槐で最後なのだとして、それで何が分かるというのだろうか。
何が変わるというのか。
水嶋は、アートロに記憶を封じられはしたが、確かに何かを思い出して、黒幕の正体にも気付いていたはず。
正体に気付いたということは、水嶋の知っている人物である可能性が高い。
水嶋:(頼む…)
これ以上、真幸たちを傷付けないためにも槐事件を早く終わらせてあげてほしい。
水嶋は、祈った。
これ以上、罪を重ねないでほしい、と。
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