*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋9』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第9章です⇒
story.24:『本番』
スタッフ:「本番、30秒前〜」
スタッフが慌ただしく、観客の前を駆け足していく。
富永ひかりは、いちばん前の席に座ってその時を待っていた。
ひかり:「…っ……」
ひかりの膝の上には、千春の写真が納められた写真立てがあった。
ひかりは、写真立てを両手で握り締めながらスタジオの方を見つめていた。
……そう、千春を殺したとされる芸能人を。
スタッフ:「本番、10秒前ー」
スタッフたちも定位置に付いて、ようやく落ち着いた。
スタジオにいる芸能人たちも横並びで、その時を待っていた。
スタッフ:「5秒前!」
------------いよいよ、生放送番組が始まった。
番組の音楽がスタジオ中に鳴り響き、司会者や出演者が声を張った。
司会者:「こんにちは!」
出演者:「こんにちは!」
司会者:「さて!今日も始まりました!司会者のモリタです」
司会者が挨拶すると、周囲の観客が拍手喝采が上がった。
ひかりは、番組が進むたびに真剣な表情になる。
だって、もうすぐ幼なじみで恋人の九条秋生が槐となって、このスタジオの入り口から登場する予定だから。
ひかりが緊張している間にも、スタジオでは出演者たちのトークで盛り上がっていた。
司会者:「さて…」
話が一段落したタイミングで、司会者は言った。
司会者:「今日のゲストをお迎えしますよ!」
司会者の一声で、ひかりの緊張はさらに高まった。
ひかり:(もうすぐ……終わる………)
ひかりは、千春の写真立てをスタジオの方へ向けた。
ひかり:「見てて……千春ちゃん……」
秋生がこれから、復讐を達成するから------------そして。
司会者:「それでは紹介します」
司会者が、スタジオの入り口付近を振り返って言った。
司会者:「今日のゲストは、俳優でタレントの月島秋生(シュウセイ)さんです!」
司会者の紹介で、共演者も観客も拍手喝采が湧いた------------が、秋生が登場した途端、拍手も喝采も小さくなる。
黒の衣装に、黒のニット帽、薄紫色のスカーフ。
それは、連続殺人鬼の復讐者・槐のそれだった。
秋生:「こんにちは」
秋生は、鼻の頭まで覆っていたスカーフを首まで降ろし、共演者と観客に笑顔を見せた。
共演者:「…………。」
司会者:「びっくりしたー…。
殺人鬼、槐がとうとうスタジオに現れたのかと思ったよ」
司会者はそう言いながら、秋生の全身を見て再び緊張する。
秋生の右手には、ナイフが握られていた。
秋生はそのまま司会者と共演者の間に立つと、不敵な笑みを浮かべた。
秋生:「ハッ!」
司会者:「っ…」
急に鼻で笑った秋生に、ただならぬ脅威を共演者たちは感じた------------その時、秋生はナイフを握り締めて、一人に狙いを定めた。
秋生:「はぁーっ!」
共演者:「え…?」
共演者の一人、女性アイドルタレントの桃山悠里の腹部に深くナイフが突き刺さった。
桃山:「くはっ…」
桃山が刺された時、共演者や観客の悲鳴や叫び声がした。
カメラも突然の出来事に、どうしていいのか分からない。
桃山:「うぅっ……」
桃山は、秋生の服を掴んだ。
桃山:「つ、月島…さん…っ…」
桃山の目から、涙が溢れる。
桃山:「な、んで…!?」
桃山がそう聞くと、秋生は冷酷な目をしてこう言った。
秋生:「お前が、俺の妹を殺したからだよ…」
桃山:「…!」
桃山は、ハッと脳裏に千春の顔を思い浮かべる。
桃山:「く、九条千春の…っ……お兄さん!?」
秋生:「あぁ…」
秋生はニヤリと笑うと、こう言った。
秋生:「お前が電車に突き飛ばして殺した千春の兄だよ…」
秋生がそう言うと、共演者の中には千春の名前を思い出した人もいた。
共演者:「5年前の電車の事故……悠里ちゃんが犯人なの?」
秋生:「そうだよなァ?」
桃山:「っ…だってぇ」
秋生がそう聞くと、桃山は涙ながらに言った。
桃山:「あの子がいなくなれば……っ…私にも、ドラマの主演になれるチャンスがあると…思ってたのぉ…」
秋生:「けど、実際は大手事務所の新人さんに回った……。哀れだな、本当に」
秋生はそう言いながら、桃山の腹部からナイフを抜いて言った。
秋生:「お前みたいな器の小さい奴のために、千春の命が奪われるなんて……千春が可哀想だよ!」
秋生は、声を上げた。
秋生:「そんな理由で殺されたなんて、お前を殺しても千春は報われないじゃねぇか!!」
桃山:「くぅっ…」
桃山は、その場にへたり込んだ。
周りの共演者は、自然と桃山と秋生から離れてゆく。
観客は、秋生の豹変に、ただその場で見ていることしか出来なかった------------その時。
水嶋:「そこまでだ!」
急いでスタジオにやって来た水嶋、高柳、白波たち警察官が立ち尽くす秋生を取り押さえる。
ナイフが床に落ちた瞬間、ひかりは千春の写真立てを椅子に置いてナイフを取りに行った。
高柳:「あっ!」
ひかりがナイフを手に取ると、秋生を取り押さえていた高柳が気が付いた。
桃山:「っ…!」
ひかり:「………っ…」
ひかりは桃山の前に膝を付くと、真剣な目をして声を上げた。
ひかり:「千春ちゃんの敵ー!!」
そう言いながら両手でナイフを振り上げた時、ひかりの手を冷たい手が握った。
ひかり:「!?」
ひかりが振り返ると、そこにいたのは警察官を振り放して駆け付けた秋生だった。
秋生:「ひかり…」
ひかり:「秋生…っ」
秋生はそう言うと、ひかりからナイフを取り上げて警察の方へナイフを放り投げた。
秋生:「お前は、手を汚すな…」
秋生はそう言って、ひかりを抱き締めた。
そんな2人の手前で、高柳は放り投げられたナイフをハンカチで拾った。
高柳:「………。」
水嶋:「月島秋生(シュウセイ)………いや、九条秋生(アキオ)さん。殺人容疑で逮捕します」
水嶋がそう言うと、秋生は後ろを振り返って返事をした。
秋生:「…はい」
秋生がそう返事をした時、秋生はぐらりと頭が宙を舞うような感覚に陥る。
水嶋:「九条さん!」
白波:「また、ですか!」
秋生が床に倒れた時、ひかりは青い顔をして叫ぶ。
ひかり:「秋生!秋生っ…ヤだ!秋生ー!!」
秋生:「……っ何だよ、ひかり」
秋生はすぐに起き上がり、頭を抑えながらふとひかりの後ろで警察官に止血してもらっていた桃山を見てから、自分の血に濡れた両手を見た。
秋生:「……っ…!?」
ひかり:「秋生っ…」
ひかりは、秋生を抱き締めて泣きじゃくった。
そんな2人を見ながら、水嶋はため息を付いた。
たぶん、槐事件の記憶が消えてしまったのだろう。
水嶋:(記憶を消して、時間稼ぎさせられてるみたいだよな…)
今までの経験上、槐たちは来るべき日を迎えるまで記憶を封じられているのだろう。
そしてそれは、次が終わらなければどうしても解明されない。
水嶋:(でも今は、)
水嶋は、泣きじゃくるひかりと状況が飲み込めていない秋生を立たせて、警視庁へ向かった。
------------その後、桃山は重症を負ったが、助かった。
生放送番組も、スタジオを掃除してから何事もなかったという形で続行された。
------------To be Continued...