*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋8』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第8章です⇒
story.19:『決定』
既に夜中の1時が過ぎていた。
仮の会議室で、鑑識官が撮影した写真や資料などをテーブルにいっぱい広げて、水嶋は手に取るではなく、ただ見つめているかのようだった。
だが瞬間、水嶋はこう口にした。
水嶋:「槐は、頭を強打した脳挫傷に見せ掛けるために被害者宅にあった花瓶や、鍋を使った…」
しかも、上から落とすように。
水嶋:「スタンガンを使って、気絶させてから殺した……という風に推測されたくなかったんだ。」
何故ならば、第8の槐のラストターゲットは、八条夏実だから。
水嶋:「強いて言えば、単独犯に見せ掛けようともした…」
水嶋はようやく、一枚の写真を手に取ってから言った。
水嶋:「被害者2人とも、スタンガンを撃たれたのは腹部や腰当たり。スタンガンを大人が撃つなら、気絶しやすい首から近い肩当たりを狙ってもいいはずだ。」
高柳:「第8の槐は………」
ホワイトボードに貼られた幼い顔写真を見つめながら、高柳は言った。
高柳:「八条大夢(ひろむ)……」
白波:「今回ばかりは、そうとしか考えられませんね。母親に連れられたとはいえ、犯人は現場に戻って来ましたし…」
複雑そうな表情で、高柳と白波は俯く。
舘巻:「ラストターゲットは、母親の八条夏実さんかねぇ…。
だとしたら、今から飛び込んで行った方が早いぞ、水嶋警視殿っ!いつ犯行を行ってもおかしくないんだし…」
舘巻の話を聞いて、水嶋はふぅと一つ息を付いてから言った。
水嶋:「ああ…。"あの証言で"、既に大夢くんが犯人である説は確信するところまで来たからな…」
--------------------------…
小学校の放課後、八条大夢が職員室から出て家路へ向かったのを校門から見届けて、水嶋と高柳の2人は、校長室を訪ねた。
事情を聞いた校長の呼び掛けで、大夢の担任教師と、学年主任がやって来て、水嶋は早速、話を始めた。
水嶋:「大夢くんから、ご家族について何か相談を受けたことはありましたか?」
水嶋の質問に、教員らは互いを見合ってから一人ずつ答えた。
担任:「相談はありませんが、この夏の暑い日にも薄手の長袖を着て来たり、痣も見ました…。
本人は、『知らない』と言うだけで…」
学年主任:「学校生活においては、何も気に止めるようなことはありませんでしたよ。さっきも、誰かの忘れ物を職員室まで届けてくれています。」
2人がそう言ってから、校長が言いにくそうな表情で問い掛けてきた。
校長:「刑事さん…。まさか…八条大夢くんが、第8の槐なんてことは……あ、ありませんよね?」
担任:「じ、実は、第7の槐事件と鳥の仮面の男の事件の間に…ネットを見たという生徒や保護者の方が……不安がっていて。」
担任はそう話すと、こう続けた。
担任:「うちの学校には、一条、八条と、九条という名字の生徒や教員がいるんですが、槐の本名がネットで公表されてから、虐めという訳ではなく……恐くて、近付けないという理由から、転校や彼らを学校から追放するようにと、クレームがいくつか……」
学年主任:「個人の否定に繋がるし、そのようなことはございませんと……保護者会で説明したばかりなんです。
ただでさえ、第8の槐事件がこの街で発生して皆、恐がっていますし……」
水嶋:「……………………。」
教員らの心痛はごもっともだ。
もし自分たちの身近で、殺人事件の犯人が出てきたらと思うと、恐くて外にも出れなくなる。
自分たちの管轄都市では槐事件が多発していた分、その恐怖は計り知れない。
ただでさえ、先の見えない謎だらけの槐事件…------------恐怖と同時に、早く黒幕を暴いて、槐たち共々、逮捕してほしいという国民の声は大きくなる一方。
高柳:(それと、もう一つ…)
槐事件の中心人物とまで言われ、これまで槐たちを追い詰めてきた刑事・水嶋律の存在。
彼がいたから槐たちは逮捕され、彼がいたから事件はさらに大きくなった。
水嶋の存在は、国民の中でも賛否両論されている。
"槐の仲間か"。
"国民の仲間"か。
もっとも高柳は、後者の方だと思っている。
高柳:(水嶋先輩に限って…)
根拠はないけど、水嶋は敵ではないと言いも切れる。
だが、世間ではそれをイマイチ信用し切れていない。
水嶋:「…まだ、はっきりはしていません。ですが、今回の事件は少なからず大夢くんが関わっている可能性は……言うまでも、ありませんね。」
水嶋はそう言いながら複雑そうな顔を浮かべて、改めて真顔で本題に入った。
水嶋:「…ちなみに事件当日、学校で変わったことはありましたか?誰かに見られているような……とか。」
水嶋からそう聞かれた教員らは不安そうな表情をしていたが、少し考える仕草をしてから、それぞれ口にする。
学年主任:「不審な人物の目撃情報は、ありませんねぇ…」
校長:「特に何か変わったことはなかったはずですけど…」
担任:「はい…。……あっ、」
と、ここで担任が一つ思い出した。
担任:「事件当日、プール開きの前日でしたよね。2年生と、1年生でプール掃除をしたんです」
高柳:「じゃあ当然、大夢くんもそこにいましたね。」
担任:「……………。」
高柳がそう言った途端、担任は急に黙り込んでしまう。
水嶋:「……あったんですね、変わったこと」
担任:「えっ…と、」
高柳:「お願いします!
知っていることは我々に話してください。」
高柳の押しで、少し躊躇いながらも担任は俯きながら言った。
担任:「プール掃除の時、大夢くん……濡れたくないって理由でプール掃除をしないって。
でも授業の一環だからその場にいるようにって、引き留めたんです………そしたら、」
担任は、緊張しながら言った。
担任:「クラスメイトの……な、名前は伏せますが、男の子が『槐の手先』って言って、ホースを使って、大夢くんに向かって水をいっぱい掛けたんです。
大夢くん、体操服じゃなくて私服だったんですけど……うっすら、殴られて出来たような痣が。」
担任はそう言って息を飲み込んでから、話を続けた。
担任:「大夢くん、逃げるようにプール場から出ていったんです。
すぐに追い掛けたんですが……見失ってしまって。校内を探したら、屋上に逃げ込んでて…」
水嶋:「屋上……何故かって、聞きましたか?」
水嶋がそう言うと、担任は首を横に振ってから話した。
担任:「屋上で見付けた時には、髪も服もほとんど乾いていて……。
ただ、大夢くんがこちらを見ながら、『大丈夫。もう、気にしてないから』って言ってくれて…。
ひどいこと言われて、水まで掛けられたのに優しい子って……その時は、思っていました。」
担任は怯えたような表情をしながら、こう言ってきた。
担任:「だ、だけど……放課後になる数十分も前に、大夢くんのお父さんが槐に殺されたって聞いて。…第1の槐も、虐待する親を殺害していたって言ってたから……同化しちゃって……っ…」
水嶋:「先生は、何分ほど大夢くんを探していたんですか?」
担任:「40分過ぎです…。
チャイムが鳴ったので、間違いありません……」
--------------------------…
大夢の担任教師からそんな重大な証言を得て、水嶋が推測した。
水嶋:「大夢くんはプール掃除の時間を利用して、実父の竜也さんを殺害する計画だった…」
竜也の写真を見ながら、水嶋はこう続けた。
水嶋:「だが、簡単に抜け出せる訳がなく、プール場に留まっていると、クラスメイトからホースの水を浴びせられ、プール場から抜け出せるきっかけを得た……」
槐であるなら、ずば抜けた身体能力が大夢にも開化されていたはずだ------------一気に自宅まで走ったのだ。
水嶋:「そこで実母の夏実さんか、義父の矢神さんと合流し、服を脱いでから自宅にいる竜也さんを殺害した…」
白波:「なるほど…。
服は、アートロか未確認の兎の仮面の人物が乾かしたか、同じ服を用意した可能性がある…」
白波がそう言いながら頷くと、水嶋は続けてこう言った。
水嶋:「濡れた状態のまま裸で殺害した大夢くんを、もう1人がササッと入浴させた。その間に、カモフラージュとして竜也さんの衣服や絨毯を水浸しにしたんだ。
そして軽く髪を乾かした後、服を着て、自力で学校の屋上へ行った……っていうのが、俺が思う第1の犯行の推測だ。」
水嶋がそう言うと、高柳が頷きながら言った。
高柳:「普通なら考え難いですが、槐事件なら有り得ますね。
八条大朔さんと妻の頼子さん殺しも、"時間稼ぎ"という可能性も…」
舘巻:「"時間稼ぎ"…。
その間に義父か、実母のどちらかを殺害するってか……」
舘巻が暗い顔をしながらそう呟くように言った、その時。
水嶋のケータイに、沢田透真から電話が掛かってきた。
『まだ起きてるようだな!
今、そっちに向かってるんだ。矢神さんたちを追って!』
水嶋:「2人!?……っ…分かった、とりあえず今から八条さん家に行く!」
そう言ってから、水嶋は高柳と白波、舘巻と数人の地元警察官を引き連れ、大夢と夏実がいるアパートへ急行するのだった。
------------To be Continued...