*はじめに*
登場人物紹介などは、『オリジナル小説『純血の殺し屋3』紹介』と表記されている日記をクリックした次のページに書いてみました。
小説は、小説と言うより脚本のように誰が何を喋っているのかが分かるようになっています。
単に、作者自身が混乱しないようにというために。←
誤字や内容の綴りにおかしな点がありましたら、すみません。
最後に言うのも変ですが、興味があったら読んでみてください。
あ。
この作品は、ミステリーサスペンスです。
あと、キャラクターの設定が少年漫画風になっています。
あと『♪』……お許しください人( ̄ω ̄;)
次から、『純血の殺し屋』の第3章です⇒
story.27:『暫しの別れ』
一貴:「ありがとう…先輩。」
一貴はそう言ってから、踏み切り車線路の方へ仰向けに倒れながら身を投げる。
一見、清々しいような表情で両腕を広げながら倒れてゆく一貴を見て、母親は悲鳴を上げた。
母親:「一貴ィーーー!!!!」
一貴の母親の叫び声は、後から車でやって来た石塚たち警察にも分かった。
電車は思ったよりも早い速度で走っていたが、一貴の姿が見えたのか急ブレーキを掛けて必死に止まろうとしている。
キーンッと響き渡る音に、周囲はうっと耳を塞いだが、母親は息子の信じられない行動を見てそれどころではない。
母親:「いやああぁぁぁあっ!!」
母親はそう悲鳴を上げたその時、上空から黒い影が飛んできた。
------------カンッ!
フェンスの上で再び飛び越えて行った音に気付いた時、目の前で電車が通過していった。
電車は急停車して、水嶋たちがいる方と向こう側の景色を完全に通せん棒にしている。
水嶋:(----------今の、音…)
水嶋はふと電車が通り過ぎる寸前に聞いた音を思い出すと、ハッとしながら振り返る。
水嶋:「シュウは!?」
そう言って振り返り、先ほどシュウがいた民家の屋根を見上げるとその姿がなかった。
水嶋の言葉に反応して姫井と高柳も振り向いていたが、水嶋はすぐに電車の方を振り返ってこう口にした。
水嶋:「まさか…」
目の前に電車が止まっているせいで向こうの様子を見ることも踏み切りも塞がれているから向こうへ行くことも出来ない。
だが、自分の考えが正しければ、シュウはきっとこの電車の向こう側にいるはず。
水嶋:(どうする…!?)
その他の通り道は、ここから結構離れているから万が一、シュウが一貴に何か妙な真似をしようとするならば絶対に間に合わない。
すると、一台の警察車両がサイレンを鳴らしながら前進した。
一刻を争う事態。
一貴の無事が確認出来ない今、状況を知らずに困惑している電車の中にいる人々が向こう側の様子を気にしているところを見る限り、シュウと一貴は向こう側にいるんだ、と水嶋は核心出来る。
水嶋:(マズイ…)
シュウの目的…。
水嶋の考えが正しければ、シュウは一貴の記憶を消すか。それとも一貴の"不安"が当たるのか------------。
水嶋は難しい表情を浮かべながら、電車の向こう側を目を凝らして見つめていたのだった。
--------------------------…
------------カンッ!
瞼を閉じていた自身の耳がそんな音を拾った時、一貴は人の温度に包まれた感覚を知った。
------------カッ
着地をしたような音と共に、一貴の肩に柔らかい何かが当たったことに気が付いた。
その直後、電車が急停車をして耳に煩わしい音が響いて、一貴は身体を竦めながら瞼を開けられないでいた------------その時、あの聞き覚えのある淡々とした声がした。
シュウ:「3代目様、私です。シュウです。」
仮面の女こと、シュウに呼ばれて、一貴はやっと瞼を開く。
一貴はゆっくり瞼を開けると、
自分を抱っこして支えている狐の仮面を被ったシュウが目の前にいることを確認した途端、一貴は急に暴れ出した。
一貴:「は、放して!殺されたくない…!」
一貴はそう震えた声で言った。
フェンスの上。
シュウは上手くバランスをとり、一貴をしっかり抱きながら少し強めにこう言った。
シュウ:「私も、ご主人様も。
3代目様を殺すなどとは一度も申しておりません!」
シュウの話を聞いて、一貴はピタリと暴れるのを止めてシュウを見つめる。
シュウ:「ご主人様は、貴方たち槐を"殺せ"という命令はしていません。
槐ゲームの成功と失敗……それは3代目様次第なのです。
私たちとしては、3代目様が存命であることが重要なのですよ…」
シュウが口にした意外な話しに、一貴は言葉が出ない。
そしてシュウは一貴に優しく言ってきた。
シュウ:「私たちには、貴方が必要なんですよ。第3の槐、三条一貴様…」
シュウのその言葉を聞いた一貴は、自分の胸の辺りの服を掴んで目を見開いた。
どうして"必要"としているのかという妙な恐怖感と好奇心に胸が締め付けられた。
一貴は勇気を出して、こう問い掛けた。
一貴:「…シュウは、ずっとおれの味方?」
一貴の問い掛けに、シュウは頷きながら返事をした。
シュウ:「はい、味方です。だから------」
一貴:「………っ…!」
優しく言ってるはずなのに、シュウの声に微妙な変化を感じた一貴は再び首を横に振りながら抵抗した。
一貴:「シュウ…嫌だ、よ…」
シュウ:「……………。」
一貴の言葉に、シュウは返事をしてくれない。
一貴はその様子を見て、一つの可能性が過った。
一貴:「忘れたくない…。
母さんや、父さんや、友達やシュウも------------」
必死に抵抗している一貴の額にシュウの素手が充てられた時、一貴の潤んだ真剣な眼差しが視界に入った。
一貴:「------先輩のことも!」
一貴は涙を零した。
辛いこと、悲しいこともあったけど。
シュウに出逢えたことや、槐ゲームに関わったことは決して一貴にとって悲劇ではなかった。
一貴だけは、救われていた。
だから、記憶を奪われることに抵抗するだなんてシュウからしたらエゴの他ないんだろう。
それでも、失いたくなかった。
シュウ:「…それじゃ、"一貴くん"。
時が来たら、また会いしましょうね?」
シュウのその言葉を聞いた時、一貴はハッと何かに気が付いた。
"懐かしい…あの"------------だが、一気に深い睡魔に襲われて意識が遠退いてゆく。
一貴:「………シュ、ウ…」
そう口にしながら、一貴はゆっくりと瞼を閉じて深い眠りについた。
シュウは一貴の寝顔を見ながらそっと呟いた。
シュウ:「今は、ゆっくりおやすみなさい…」
そう言って、一貴の涙を素手で拭ったシュウは一貴を抱き抱えてゆっくり立ち上がった。
そうして、フェンスの上でバランス良く背中を向けていた電車の方へ身体を向けて、シュウは佇んでいた。
------------To be Continued...