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近くて遠い

また、泣きそうな表情
ほんの一瞬だけだけど、俺には見えた

俺の視線に気づいて、何事も無かったように
「なぁに?」
なんて、優しく微笑むけど


でも、俺は知ってる
お前が、時々悲しそうな、泣きそうな表情をする時

『あいつ』を思い出しているって事を
『あいつ』を想っている事を


でも、それを言葉にしたり、その事で励ます事なんか、馬鹿な俺には出来なくて
どんな言葉をかければいいのかもわからない

ああ、だからアイツらにも『不器用だ』なんて言われるんだな、なんて不本意だが納得しながら


寂しそうな眼で遠くを見てる
俺より小さなその手を握ってやれたらいいのに
普段よりさらに小さく感じるその華奢な体を抱きしめてやりたい衝動にかられる


でも、それすら出来ない
それを実行したら、優しいあいつは笑ってくれるだろうけど

どんなに想っても、俺が想いを伝えてそれを実行出来ても

あいつの中に居るのは俺じゃないから
きっとあいつを、また悲しい顔にさせてしまう


それに、今のこの関係が、距離が、崩れて消えてしまいそうで
あいつが、遠くに離れていってしまうような気がして

それが、とてつもなく怖くて
想いを伝える事すら出来なくて
俺は、臆病で…



「どうしたの?」

なんて、小首を傾げながら栗色の長い髪を揺らしながら言うお前に、

「なんでもねぇよ。次お前とタッグ組んでダブルバトルする時誰出すか考えてただけ」

なんて、考えていた事とは全然違う言葉を口にした


そしたら、その表情から悲しさや寂しさは消えて
いつもの明るい笑顔に変わった


それだけで、俺の心は暖かく満たされた気がした



こんなに近くて手を伸ばせば届く距離に居るのに、

その距離はどこか遠くて、その手を握る事すら出来ないんだ







*****
このままでいたい、と思いながら
もっと近付きたいと願ってしまう

この心は、どうしようもなく我儘なんだ
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