俺の名前、呼んでよ
毎日、修業頑張るから
殴られても、蹴られても泣かないから
強くなるから、だから、
俺の名前を
な ま え を …?
――ああ、そうだった
俺…まだ名前貰ってないや
いつも侮蔑だか嘲笑だかを含んだ呼び方されるけど
名前、無いや
――じゃあ、俺は誰なの?
名前がないと誰にもなれない
自分にも、なれないよ
ねぇ、誰か、
身体中が痛い
嫌だ、もう嫌だ
俺、いらない子だったのかな
弱いから、すぐ泣くから、だから名前も貰えないのかな
誰か、俺を、―――
「君はいらない子なんかじゃないよ。これから君の名前は、―――」
「――ルーク!」
目を開けると、レンが俺の顔を覗き込んでるのが見えた。かなり近い。だがよくある事だから特に驚きもしないが。
ああ、俺は夢見てたのか。懐かしい…昔の夢、か……。
俺はゆっくりと体を起こし、レンの頭を撫でる。
「なんだよこんな夜中に。言っとくが夜食なんかねぇぞ」
「ちげぇよ!俺だって寝てたし!ルークが魘されてたから起こしたんだよ!」
言われて、自分が悪夢に魘されてた事に気づく。
確かに嫌な夢ではあった。『途中まで』は。
「大丈夫だよ、ありがとなレン」
「うん…でもさ、なんか起きる寸前に急に表情和らいだけどどんな夢だったんだ?」
「あ?あー…」
夢の中、酷く暗く息苦しい空間から俺を連れ出してくれた、声。
暖かく、優しい…今はもう聞きなれた声。
「…神様が助けてくれた」
「は?なんだよそれ…あ!!さては、はぐらかす気だな!?」
「いいからガキは寝ろ。ちゃんと寝ないと身長伸びねぇぞチビ」
「チビ言うなぁ!!!」
あの時、俺に名前をくれた。
笑って、優しい声で名前を呼んでくれた。
俺の、大切なパートナー
隣のベッドで布団にくるまって寝ているその顔を優しく撫でて、その安らかな寝顔に自然と笑みが零れた。
「おやすみ、雪華」
俺の大切なパートナーであり、大切なマスター
俺がどんなに邪険にしても、素直じゃなくても、俺を見捨てなかった
ずっと側で微笑んでくれた
『あの事件』が起きてからも、側に居させてくれた
笑って、名前を呼んでくれた
だから俺は、大切なマスターを、ずっとその側で守ると決めた
――どうかその寝顔が、いつまでも安らかなものであるようにと願う
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意味不明←