しあわせは子猫のかたち





これは 本のタイトルじゃないです。




乙一の「失はれる物語」
短編集のなかのひとつです。




寂しいけど、あったかくて。
切ないけど優しくて。




幽霊が普通にいたり、
少し不思議なんですけど、
それが「そんなこともあるのかもしれない」と
思わせる不思議なリアル感がありました。




あらすじ



主人公の青年は、人付き合いが苦手で、大学入学をきっかけに一人暮らしを始めます。


誰にも、関わらず見知らぬ土地で一人で過ごし、孤独に死ぬことを切望して。


住む場所は、
叔父が所有する古い一軒家。


そこには、
以前若い女性が一人で暮らしていたけれども、
強盗殺人にあって亡くなってしまった。



彼女は、身よりがなく家具とかもそのまま。



ちょっと想定外だけど、
まぁいいか、と暮らし始めたが、


その家には彼女が飼っていた白い子猫と、
幽霊になった彼女がいた。




そして不思議な共同生活が始まる…













注意
ここからは ネタバレします。




この本を読まれない方、
又は、読み終えた方はお進み下さい



















主人公の青年が口下手で、
人付き合いが苦手でね。


ぼくみたいな、器用になんでもできない人間が
生きていくにはつらすぎる。って言うんです。



反対に、幽霊の雪村は人に好かれる人間で、
明るくて。





彼の
「なんで、雪村みたいな人間が死んでしまうんだろう」「自分の残りの寿命を彼女に分け与えることができたらいいのに」ってセリフが印象的で。

悲しくて切なくて優しくて、
泣きそうになる。




最後に雪村は、
成仏していなくなってしまうんだけど、
彼に手紙を残してくれます。





「確かに、世の中、絶望したくなることはたくさんある」
「でも、泣きたくなるくらい綺麗なものだって、たくさん、この世にはあった」
「際限なく広がるこの美しい世界の、きみだってその一部なんだ。わたしが心から好きになったものの一つじゃないか」

※本文では長文です





一枚の写真が手紙に同封されていて。
子猫と主人公の青年が一緒に寝転がって、とても幸福そうな顔で寝ている写真で。

最後は、爽やかな風が吹くような終わりでした。






この作品が大好きになりました。