夢の中にもぬこが出てきました……よっぽど癒やしに飢えとんだなぁ、俺。
 
ボス戦です? ちなみにアニメを主に遵守してます。
 
 
【ミスティッククエスト・5】
 
俺はこのダンジョンのボスであるフレームサウルスを前に、かつてハルヒが生んだSOS団のシンボル的エンブレムによって覚醒したカマドウマを思い出していた。
 
あー、あのカマドウマとでかさはタメ張るなーコイツ。あの虫はどーやって倒したっけー?
 
そうそう思い出したー、古泉が本来の10分の1の攻撃力ながらエネルギー弾をぶん投げて威嚇してー、その後長門が斥力場を作ってバリア&アタックでトドメを差したんだっけー。
 
さて、あの時と今と、戦力を比較してみよー。
 
俺。前はただついてっただけの役立たず。で、今は剣・斧・爆弾に回復魔法と攻撃魔法持ち。やる気はともかく戦力にはなってるはずー。
 
よかったなー、スゲーぞ俺ー。さらに今は以前役立たずだった俺にくっ付いてた朝比奈さんもいなーい。よしよし。
 
で、だ。
 
俺が戦力になり、朝比奈さんが抜けた分上がったパーティの戦力ってのはさ、
 
 
 
古泉が変身もエネルギー弾も使えなくなり、手裏剣くらいしか武器がなくなったこと、そして何より、長門がこの場に存在さえしてないことによって必然的に下がった戦力のさ、
 
 
 
穴埋めって出来てるのかなー?
 
 
 
「出来てるかぁぁ!!」
 
「グォォォォォォ!!」
 
ボスが叫びながら地面を叩く。大地が震え、足をとられる。そこへ俺めがけてボスが殴りかかってくる。
 
「うおぉぉ!?」
 
殴られる寸前に盾を構えられたお陰で、ダメージは小さい。しかし鈍い音と同時に吹っ飛ばされる。
 
「づっ!」
 
砂地がクッションになった。危ねえ……
 
「大丈夫ですか!?」
 
ボスと距離を置き、古泉と合流する。おい、どうすりゃ倒せるんだよ!
 
「すみません……ゲームじゃ単に攻撃を積み重ねるだけで済むんですが、流石に自分が戦うとなると……」
 
だろうな、プレイヤーに操作されるキャラクターって、こんなスリルを味わってたんだな……RPGがトラウマになりそうだ。
 
なんてどうでもいいことを考えてる間に、ボスがこちらへのっそりと歩き距離を詰めてくる。
 
ところで恐竜モノの映画では、人間が逃げ惑う後ろを猛スピードで恐竜が追いかけてくるシーンをよく見るが、あれは実は物理的にありえないらしい。というのも、今目前にいるような化石から本来の恐竜の姿を考えた際、その恐竜の足では自分自身の体重を支えきれず、立ち上がって歩くことは出来ても走ることは出来ないそうなのだ。
 
こんなファンタジーワールドでそんな物理法則が通用するのかとも思うが、実際向こうはこちらに走ってくる様子はない。代わりに歩幅が大きい分こっちに来るのは速いからあまり慰めにはならないが。
 
 
「どうすりゃいい?」
 
「どうやら、神人と違い自重を無視している、ということはなさそうですね……でしたら、まず足元から崩すのがいいでしょう。その後はやはり背骨、そして頭と砕くのがベストかと」
 
簡単に言うな、近付くだけで命懸けだろ。そう言うと古泉は、いつになく真剣な眼差しで。
 
「殺らなければ、殺られます」
 
まともな神経をした少女なら8割方落とせそうな面。あーはいはい、わかったよ。
 
「では、僕が撹乱しますから、足元から切り崩す役目をお願いします」
 
そう告げ、古泉はボスに向かって直進、その後ボスの周囲を駆け巡り、時折手裏剣を飛ばしてダメージを与える。
 
俺はボスに近付くタイミングを計るため集中していた、のだが……
 
「ふんもっふ!」
 
古泉が手裏剣を投げる。
 
「ふーんもっふ!!」
 
手裏剣を投げる。
 
「ふーんもっふぅ!!!」
 
手裏剣を投げる……っっ!!
 
「古泉ー!! せめて黙っててくれ!!」
 
「ええ!?」
 
100年の恋も冷めそうな古泉の叫び声に、しているそばから集中を削がれる。
 
 
それでも何とかボスの足元に近付き、斧を(人間じゃないが)人体急所の1つ、弁慶の泣き所に思いっきり振り抜く。
 
化石だから本来の肉が付いてないとはいえ、相当な負荷がこの巨体を支える足にはかかっているはずだ、金属音と共に足にヒビが入る。そこに爆弾を置きボスから離れる。
 
数秒後、爆音とボスの悲鳴と共に、ボスが片足を失い跪く。しかし戦意は全く無くしていないようで、俺の方を睨んでくる。
 
古泉が戻ってくる。
 
「やりましたね、これでボスの機動力を封じられたはずです。後は僕が後ろから攻撃しますから、あなたはタイミングを見計らって魔法や攻撃を叩き込んでください」
 
言われなくてもそのつもりだ。
 
「では!」
 
そしてまた、古泉が後ろをとり手裏剣を飛ばし始める。
 
「グァァァ!」
 
ボスが体を捻り古泉を殴ろうと腕を出す。古泉が器用に攻撃を避け、空振りした隙を狙い近付く。
 
「くたばれっ!」
 
顔面を狙い爆弾を放る。しかしボスが頭を動かしたせいで当たらない。
 
爆音。
 
ボスにトドメにこそならなかったが、肋骨数本と片腕を吹っ飛ばした。
 
「オノレェェェェ!!」
 
残った片腕で叩き潰しにくる。瞬間的な本能か、俺は伏せて地に手をつき
 
「『クエイク』!!」
 
叫んだ。
 
轟音と共に地面が大きく揺れ、ボスがバランスを崩す。
 
少なからずダメージを与えられていた。直に倒せるはず、そう確信した。
 
 
 
それが間違っていた。
 
 
 
俺が最後の攻撃を仕掛けようと、古泉と共にボス目掛けて駆ける。
 
ボスはこちらを一睨みすると、自身の周囲に散乱している骨を拾い、こちらに投げてきた。
 
全力でブレーキをかけ、直撃こそ免れたものの、投げられた骨が目の前に落ちたその刹那、
 
 
 
爆音と共に俺達は吹っ飛ばされていた。
 
「ぐあっ!!」
 
「うぐっ…!」
 
地面に叩きつけられた瞬間、激痛と共に意識が飛びかけた。
 
「つつつ……」
 
何とか起き上がろうとする。
 
体は幸いまだ動く。しかしあんな攻撃をしてくる以上、迂闊には近付けない。
 
「ごほっ……すみません、流石に敵の攻撃パターンまでは、覚えてませんでした……」
 
古泉が力無く立ち上がる。気にすんな、それよりもお前…流石にボロボロじゃねーか?
 
「ええ…正直キツいです…」
 
……俺達、まさか死にはしないだろうな……?
 
「涼宮さんです、流石に理不尽に命を落とすようなことまでは望んでいないでしょうが……」
 
俺もそう思ってるさ。だが一応死にかけたことがある身として言わせてもらう。
 
「……重傷ってのも相当キツいんだぞ……」
 
「……笑えませんね」
 
最早誰に言ってんだか……
 
「古泉、とりあえずまずは回復しとこう。体があまり動かん」
 
「そうですね、お願いします」
 
古泉にケアルをかける。古泉から脂汗が引いた。
 
「ふぅ……助かりましたよ」
 
「…あのさ古泉、万が一俺達が2人共……戦えなくなったらどうなるんだ?」
 
「確か、セーブしたところからやり直しですね」
 
「……セーブってどうやるんだよ……」
 
「それか、戦闘の一切をリセットして戦い直しになります」
 
はあ?
 
「つまり、戦闘に入る前の状態にこちらと向こうのコンディションが戻ります。いえ、時間そのものが戻りますね」
 
……つまり、死ぬことはないんだな?
 
「戦闘で勝たない限り、死に続けるとも言えますがね」
 
嫌な言い方をするな! 延々と苦しむなんざゴメンだ!
 
 
 
思えば、こんな会話をし続けるよりも、さっさと俺は俺を回復させるべきだった。
 
 
ボスが俺めがけ、その凶悪な腕を伸ばしていた。
 
俺はその攻撃に、完全に体が固まってしまった。
 
混乱の最中、俺は全く回らない頭で、意識していたのかどうかもわからないが、唱えていた。
 
 
 
 
 
『ケアル』と……
 
 
 
敵キャラに回復魔法をかけるとは、なんて馬鹿なことをしちまったんだ……俺がそう考えることが出来たのは、
 
 
 
 
 
ボスが腕を引っ込め、苦しんでいる時だった。
 
 
 
我に帰り、最優先に自身を回復する。
 
「あいつ……なんでケアルが効いてんだ?」
 
古泉に思わず目をやる。
 
「………まさか…!」
 
目を見開き、愕然としていた。どうした!?
 
「……恐らく、ヤツを倒せます。僕がヤツを潰しますから、サポートしてください」
 
真剣な瞳。……OK、やっちまえよ。どうせ負けてもやり直しなんだろ? やる気はないがな。とっとと終わらせてくれ。
 
「はい。行きますよ!」
 
古泉が駆ける。ボスの……ボーンブーメランとでも呼ぼうか……をギリギリでかわし続け、ボスの眼前で大きく跳躍する。
 
そのジャンプが、オリンピック選手が馬鹿らしく見える程のもんだったということを頭の隅から追いやり、飛び上がって体の自由が効かないであろう古泉へのボスの迎撃を防ぐため、
 
もう一度、地震を放つ。
 
揺れと轟音。
 
「グァァァァァ!!」
 
ボスが悲鳴をあげる。古泉を叩き落とそうとしたであろう腕は、届かなかった。
 
 
「終わりです!」
 
古泉がボスの頭に乗り上げ、ボスの額に手をやり
 
「『レイズ』!!」
 
叫んだ瞬間、
 
 
 
 
 
「ギャアァァァァァ………」
 
断末魔の叫びと共に、ボスの体が崩壊した。
 
 
TO BE CONTINUED…


 
実際戦わされるRPGのキャラってどう思ってんだろうね?(知るか)
 
 
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