ここまで長くなるつもりはなかった…orz中編ながか長編ながか区別が……
 
黒長門サイド
 
……今更やけんど、何でこんな暗いSS書いたがやろ……?ちなみにこの回のオチはもっと酷くする予定だったり(コラ)
 
【2人の世界・5】
 
現時空からの、彼の本来の時空への回帰を確認、それと並行して情報統合思念体の現時空への移行。
 
前方を見る。観測対象の涼宮ハルヒが崩れ落ち、両腕を支えとして俯いている。
 
「あは、は……ユキ……あんた、あたしのキョンをどこにやったのよ……!」
 
俯いたまま、私に対する明確な攻撃性を含む言葉を呟く。
 
「彼が元いた世界。彼はこの場で、あなたの作り変えるこの世界ではなく、あなたが否定した彼の世界へと帰還することを望んだ」
 
元々、今眼前にいる女を観察するためだけに創られた私。だが私は、彼により『私』たる自我を得た。その私は彼の望みを叶えることを最優先にしている。
 
たとえ情報統合思念体が涼宮ハルヒの鍵たる彼を彼女の側に置くことを望んでも、彼が帰りたいと望むのならば、私はそれを叶えるのみ。
 
「そう……待っててね、キョン……今、そっちに行ってあげるから……」
 
非常に緩慢な動作で立ち上がる涼宮ハルヒ。
 
「無駄。今のあなたには不可能」
 
「なんですって……!?」
 
この期に及んで……まだこの女は彼を諦めないというのか……
 
この女の持つ、数時間前よりも大きく膨れ上がった能力を奪い尽くし、情報連結を解除しようと思っていた。この女には能力しか価値はないし、どこまでも彼には迷惑しかかけることがないのだ。人間には過去の記憶を美化する能力があり、彼は彼の持ち前の優しさを以て、今まで過ごしてきた時間を『楽しい』とみなし、涼宮ハルヒに慈悲を与えていた。
 
かつて、今の私でも逸脱しすぎたと思えるほどに狂った『私』でさえ、非常にシビアだとはいえ彼に選択権を残した。
 
だがこの女はどうだ?彼に多くを与えてもらいながら彼自身の意志を尊重することもなく、自分の望み通りにならなければ全てを無かったことにして、彼に選択権も与えないまま、彼が言うところの『反則』な力を用いて己のみが望む世界へ彼を引きずり込む。
 
私はそれが最も許せない。彼に尽くそうともせずに彼を我が物にしようとするこの女。与えられたのなら同等の価値を以て返すべき。むしろ彼のためならどんなことでもする覚悟がなければ不釣り合いだ。
 
「あなたは彼のいる世界へ行くことは出来ない」
 
事実。先程の戦闘の際、私はこの女の力を少しずつ奪っていた。現在、扱える力の絶対量は私の方が上であり、それを用いて『彼のいる世界』へのこの女のいかなる干渉も受け付けないようにした。『私』の世界を、このような壊れた女に壊されてたまるものか。
 
「あなたはこの世界でしか生きていくことは出来ない」
 
「……そう、なの……あはっ、あはははははははははははははは……」
 
再び崩れ落ち、狂った笑みのみを残す涼宮ハルヒ。
 
私にはこれ以上この女にしてやることは何もない。このまま見捨ててこの世界ごとこの女が消滅しようと何ら問題はない。
 
しかし彼の、この女への最後の慈悲。それを叶える義務が私にはある。たとえ私にとって不本意でも、彼が望んだのだから。
 
「あはははははははははははははははははは……」
 
放っておけば恐らく生命活動を停止させるまで笑い続けるであろう涼宮ハルヒに近付き、彼女の頭をホールドする。
 
「―――〜―――〜〜〜―〜〜――――――〜〜―」
 
もう一度力を僅かに奪い、それと情報統合思念体の総力を以て彼女の記憶とこの世界の時間軸を改変する。最後の手土産だと思えばいいだろう。
 
 
涼宮ハルヒが眼前から消失、彼女により作り変えられたこの世界においての一年数ヶ月前の時間軸まで時間を巻き戻し、この時間軸の彼女がいるべき場所への、彼女の移行を確認。
 
この世界には……やはり彼女が望んだ通り『私』は存在しないようだ。情報統合思念体も、涼宮ハルヒの深層心理に刻まれた私へのネガティブな感情に危機を覚えている。別に構わない。私は私の望む世界で生きる。受理された。
 
 
この世界のことは情報統合思念体に後を任せる。この世界における、元の世界での私の立ち位置に相当するインターフェースに心中で激励を送る。
 
 
それを最後に、私は『彼』がいる私が生まれた世界へと帰還した。
 
 
 
 
 
 
ハルヒサイド
 
 
うーん……もう朝……?何か気持ち悪いわねえー……うわ、髪の毛が汗でグシャグシャだわ……やっぱり切ろうかしら……ダメ、まだ宇宙人との交信が出来てない……宇宙人?何か寒気がするわね…何でかしら…
 
普段と違い、気分の悪い目覚めだわ……
 
それにしても、変な…嫌な夢だったわね……好きな人ができてとても楽しい高校生活を送っていたのに、そいつはいつのまにか別の女に盗られちゃって……途中まではいい夢だったのに、最後の最後に悪夢になるなんて……
 
 
あたしは誰を好きになっちゃったんだろうか……いや待て、高校生活はこれから始まるんじゃないの、夢なんかに振り回されてたまるもんですか!
 
 
新しい制服に着替え、さっさと朝ご飯を食べて家を出る。
 
なんであんなワケのわかんない場所に建てたのか甚だ疑問が残る新しい学び舎を目指す。あたしを受け入れてくれた、ジョンの手掛かりを求めて……
 
……ジョンじゃないけど、もし夢みたいにあたしを受け入れてくれるようなヤツがいたら、そんなヤツを好きになったら……少しは素直にならなきゃね。夢なんかに惑わされるつもりはないけど、万が一ってのもあるし、あんなに苦しむのは絶対イヤだもの。
 
 
 
 
いよいよクラスの自己紹介。あたしの番になる。ジョンへの手掛かりを目指す第一歩、前々から考えていた自己PRを口にする。
 
 
「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところへ来なさい。以上」
 
 
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