「な、なんでそう思ったの!?」

そう聞きながら湯船で息をぶくぶくやるアヤ。

「だってアヤさん、テル様に対する態度が全然違いますもの。ショウさんも気がついていますよ。」

マユが笑顔でそう答えるため、アヤは余計に顔が赤くなっていく。

「……そんな分かりやすいのかな。」

アヤはそう呟いて、一人物思いにふけていた。

二人は風呂を終え、部屋に備え付けられていた浴衣のようなものを身につけた。

続いてテルとショウが入浴する。

アヤとマユは男二人が敷いた布団に寝転がり、疲れた身体を休める。

そして男二人が入浴を終える頃には時刻は午後11時を回っていた。

「到着は午前6時。それまでは休息だ。」

ショウがそう言って部屋の明かりを消す。

寝る場所としては入口側からショウ、テル、アヤ、マユである。

「寝てるからって襲わないでよ?」

アヤが顔をテルのほうに向けそう言う。

「へいへい。」

テルは適当に返事を返し、目を瞑る。

「むかつく!」

「いてっ……」

テルを一度蹴ると、アヤは目も瞑る。

なんだかんだ言って隣通しで寝るアヤにショウとマユは微笑ましさを感じていた。

長旅の疲れもあって4人は深い眠りの中に落ちていった。



暗い海を力強く走る客船。

それとは他に王国艦艇は目的地へとたどり着いていた。

「ここがプリジオネだ……」

王国艦艇が停泊する岸から伸びる大きな橋の向こう側にうっすらと不気味な建物が顔を覗かせる。

それがまさに大監獄・プリジオネである。

プリジオネは王国領と帝国領の境目に位置し、対岸からも大きな橋が伸び、その二つの橋が交わる小島にあるのだ。

王国領の凶悪犯罪者は北の断罪橋を渡り、帝国領の凶悪犯罪者は南の断罪橋を渡ってプリジオネへ向かう。

「ここからは私だけで良い。」

カバリは周りの兵士にそう伝えると、リョウの自由を奪う鎖を持ち、橋を渡り始めた。

「本当に、お前はあのテラスが本物だと信じているのか…」

リョウは衰弱しながらもはっきりとした声でカバリに問う。

「なぜ、テラス様を待てなかった……テル様に会ったのであれば聞いただろう……」

カバリは目線を前に向けたまま、ゆっくりとそう呟く。

「あの少女、マユを逃がすためにはこうするしか無かった。あとはあいつらが何とかしてくれるだろう……」

リョウの頭に、ショウとテルの頭が浮かぶ。

「テラス様が戻られた時には、お前を助けに向かう。それまで待っていてくれ。」

そして、ついにカバリとリョウはプリジオネの入口へとたどり着いた。