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小説「sogno」第30話 −怪しげな商人A−

「これが俺たちのいる場所か。」

ショウの言葉に頷きながら、テルは地図を覗きこむ。

「じゃあ、目指す場所はここだな。」

テルが指差したのは、母親が言っていた神隠し島へのホールがある山である。

「案外近い場所に来たね。」

アヤの言うとおり、そのホールは今いる場所から北に数キロであった。

「なら、もう日も落ちかけてる。夜になる前にこの森を抜け、山のふもとで寝る場所を確保しよう。」

ショウの提案に二人は賛成し、森を抜けるべく北へと急いだ。

「うおっ、また出たよ!!」

そこにはまたしてもフォレ・ウルフが立ちはだかる。

「なに、怖気づいてんのよ!」

アヤがテルの頭を軽く殴る。

「いってぇ!!」

テルがそう叫び、頭を押さえると同時にフォレ・ウルフがテルに飛び掛った。

「くっそ……」

テルは銃を取り出すとすぐに発砲し、難を逃れた。

「容赦なさ過ぎだろ!!」

テルがそう怒ってアヤの腕を掴むと、アヤは驚いて固まる。

一テンポ置いて、テルの手を掃い、アヤはもう一度蹴りを入れるとさっさと北へと歩いていった。

「理不尽……」

テルは蹴られた脛を押さえながらそう呟いた。

そんな流れを見ていたショウは笑いを堪えながらアヤの後を追って歩いていく。

しばらく歩いていくと3人は森を抜け、山のふもとへと辿り着いた。

「この山の中腹あたりにホールがあるんだな…」

山を見上げながらそう呟くショウ。

日本の山と違い、急勾配である。

「この山の名前は、ノルドベスト。登るにはこの洞窟を通っていかなきゃならない。」

3人の前にある山に空いた巨大な洞窟。

そこを通って山を登るのだ。

「とりあえず、この辺で今日は野宿するか…」

「野宿か……」

アヤはそう呟いて少し悲しい顔をした。

「野宿とか初めてだな……」

テルがそう呟く。

一方、二人を放っておいて手馴れた感じで準備をしていくショウ。

ショウが腰につけていたカバンから折りたたまれたテントと小道具が姿を現す。

無駄のないように折りたたまれたテントをその場に広げるショウ。

「ん? そういえば食べ物がないな……」

ショウはそれを思い出し、手を止めた。

「テル、アヤ。」

ショウは二人のほうを向いて立ち上がる。

「俺は食べられるものを探してくる。二人でテントの準備をしておいてくれないか?」

ショウがそう言って小道具をテルに渡す。

「お、おう。」

テルがそう返事をするとショウは大剣と地図だけを持ち、森の中へと入っていった。

小説「sogno」第29話 −怪しげな商人@−

森の中に不気味な鳥の鳴き声が響き、それから間もなくして銃声が聞こえる。

森の中を誰かが走る音が聞こえると狼のような唸り声が聞こえ、木が倒れた。

その場所はレグノ王国から西に位置し、開拓はされていない森である。

クイールの巣と化したその森・フォレスタには一般人は近寄ろうとはしないからだ。

「うおぉぉぉ!!」

テルが叫びながら森を走り、振り向きざまに二発発砲する。

銃弾はテルを追いかける狼の群れの二匹にあたるが、群れ自体はひるまずに突き進んでくる。

それに加えて、前方から怪鳥が奇声を出して、テルを目掛けて突っ込んでくる。

「くっそぉ!」

テルはそう叫び、急いで進路を右へ変えた。

怪鳥は一度、空へと舞い上がり狼との衝突を避け、狼の群れは体勢を崩しながらも右にカーブしてテルを追いかける。

ショウがテルの進行方向に現れ、大剣を構えた。

「……波動の斬[はどうのざん]!!」

テルがショウの横を通り過ぎる瞬間、大剣は空を斬り、その勢いで生まれた衝撃波が狼たちを吹っ飛ばす。

「助かった。」

そう安心するのもつかの間で、先ほど空へ逃れた怪鳥が奇声をあげ、急降下してきた。

テルが慌てて、銃を向け、発砲する。

銃弾が当たり、怪鳥はうめき声を上げながら落ちてきた。

それを合図とするかのように木の隙間を縫って巨大な蜂が大群をなして二人に襲い掛かる。

「ファイアボール!!」

炎の塊がそれを一蹴し、残った蜂たちも恐れをなして逃げていった。

「ふー……」

テルが安堵して、額の汗を拭う。

「あんた、もうちょっと落ち着いたら?」

アヤがそう言ってため息をつく。

「うるせぇ、あんな狼大量に相手できるかよ!!」

「フォレ・ウルフだな。」

ちなみに怪鳥はフォレ・バード…蜂はフォレ・ビーである。

「俺の武器、これだぞ?」

そう言ってテルが銃を見せ付ける。

「文句あるなら返してよ!」

アヤがそう言って奪い取ろうとするがテルはひょいっとそれを避ける。

「いや、これは感謝してるよ。」

テルはそう言うと微笑み、銃をしまう。

「この馬鹿!」

アヤがそう言ってテルを思いっきり蹴っ飛ばす。

テルは痛みに蹴られた足を押さえ悶えていた。

「まぁ、武器にも向き不向きがあるしな…倒せる敵を倒しゃあいいんだ。それより、アヤは戦うときの動きがいいな。」

ショウはそう言って大剣を背中に戻す。

「えっとね。私の目は、動くものの軌道がはっきりと見えるのよ。」

そう言ってアヤは自分の目を指差す。

「その時の軌道がはっきり見えるだけじゃなくて、それからの軌道もはっきりと予想できるの。」

「あ、だからルーレットのとき、一発で当ててたんだな。」

テルは初めてアヤに会ったときのことを思い出す。

アヤはルーレットでかける際に、一点に大金を賭け、見事に当てていた。

「そうよ、あれはまぐれじゃない。どこに入るかが私にははっきりと分かってた。」

「そうだったのか。道理でバトルの時の動きが必要最低限なわけだ。」

これまで、テルが全力で攻撃から逃げるのに対し、アヤは少ない動きで先読みしているかのように避けていた。

ショウは単に経験の差だと認識していたが、こういう秘密があるとは思っていなかった。

テルに至っては自分に必死でそんなことに気がつくわけもない。

「で、こっからどこに行けばいいの?」

話を変えるかのようにアヤが言い出した言葉に対し、テルは母親から貰った地図を取り出した。

すると『ヴェリタ』ではなかった赤い点が1つ地図に浮かび上がっていた。

小説「sogno」第28話 −記憶の破片C−

「アヤ!?」

照が心配そうにアヤの肩を抱える。

アヤは息を荒げ、青ざめた顔をしながら震えていたのだ。

照の声で正気を取り戻したアヤは照の手を掃うと、お茶を飲んで一度深呼吸をする。

「……何……なの……」

アヤは両手で頭を抱え、俯く。

「大丈夫か? アヤ?」

「誰なの? 誰なの……」

アヤはそう呟き、ついに涙を溢れさせる。

この時、アヤの脳裏に映っているのはクイールを統率させ村を襲わせる謎の仮面をつけた男であった。

「なんで、そんなことするの……やめてよ……」

アヤの目の前で女性と男性が倒れる光景……

「イヤッ……お……お父さん?お母さん??」

アヤが髪の毛をバサバサやり始めた。

「やめて!!!!」

叫ぶアヤの腕をを照が掴んだ。

「アヤ!!しっかりしろ!!」

それによってアヤの動きが止まり、アヤは必死に息を整える。

落ち着いてきたのを見て、照は掴んでいた腕を離した。

「……間宮島……私の故郷……?」

アヤが息を荒げながらもそう呟いたのを聞き、照とショウは驚く。

「私、誰かに助けられた……私だけ……助けられた……」

アヤはそう呟いて、再び顔を下ろした。

どうやらアヤは『間宮島』という名前にわずかな幼少の記憶が引き戻されたのであろう。

「私は……誰?」

「アヤだよ!」

「そうじゃない……どうして?」

アヤ自身でも何が何だか分からなかった。

おそらくまだ失われたままの記憶があるのだろう。

「そのことを知ったテラスは再び『ソグノ』へ戻ることを決意した。私はあなたを育てるために残った。」

クヨミはそう言うと棚の中から、一枚の紙と石を取り出した。

「しかし、その間宮島はもう敵の手中であった。だから、テラスはファントムドームから出る道を選んだ。」

「それが2年前ってことか……」

照の中で話が繋がっていく。

「ええ、それでこれが『ソグノ』の地図とルートよ。」

そう言ってまずは地図を広げるクヨミ。

「ここが、レグノ王国。」

そう言って地図の北の方にある海岸沿いの街を指差す。

「ここが、港町ボルト。」

港町ボルトは地図上では東に位置する。

「そして、ここはエミスフェロ都市。」

その港町ボルトから北の砂漠の真ん中を指差すクヨミ。

「で、ここがそのホールのある場所よ。」

そう言ってクヨミはレグノ王国から西にある山を指差した。

「巨大な木が生えている場所にあるはず……山道のどこかだったわ。」

クヨミは照にその地図を手渡した。

「それに今は何の変哲もない地図だけれど、照、あなたがソグノへ行けばこの地図が自分たちのいる場所を教えてくれるの。役にたつわ。」

そして脇に置かれていたルートを手にするクヨミ。

「私が持っていたルートよ。きっとテラスのいる方向を教えてくれる。テラスに会いたくなったら使いなさい。」

クヨミはそう言って赤く輝くルートもテルに渡した。

「どういうことだよ、母さん……」

「行くなら好きにしなさいって事。」

クヨミはそう言うと照の頭を撫でた。

「きっとあなたは行くって言うと思って準備しといたのよ。」

「母さん……」

照はそう呟いてぐっとルートを握り締めた。

「行くか、その神隠し島に。」

落ち着いたアヤがその言葉を聞き、顔を上げる。

「何か分かるかもしれねえし、アヤも何か思い出すかもしれねえだろ?」

照はそう言うとにっと笑って見せた。

「なんか、むかつく……」

「何だよそれ。」

照が驚いた顔をするとアヤは意地悪そうに笑う。

そんな二人のやり取りを見て微笑むクヨミとショウ。

「神隠し島にいくのなら、警戒の少ない『ソグノ』の側からホールを通っていくといいと思うわ。きっとこっちからは警戒されているから。」

クヨミの言葉に対して頷く3人。



照をまたあの感覚が襲う。

それはアヤとショウも同じであった。

その感覚とはホールに入るときの感覚である。

小説「sogno」第27話 −記憶の破片B−

慌てて森に戻っていく村人たちとクヨミ。

「なんだあれは!?」

黒い塊が宙に浮いている。

少し風が黒い塊に吸い込まれているようであった。

「いったい何をしたんだ!」

一人の村人がクヨミに詰め寄る。

「分かりません。私にはいったい何が起きているのか……」

「やめい……」

後ろから歩いてきた老人がそう言うと村人たちが静かにその老人のほうを向いた。

「すけさん! しかし、いったいこれは?」

その老人のことを村人はすけさんと呼んでいるようであった。

「わしは聞いたことがある、そのソグノという世界をじゃ……」

「それには触らないほうがいい。」

老人と一緒に治療を終えたテラスが姿を見せた。

「ようやく理解ができた。それは、この世界と俺たちがいた世界を繋ぐ『ホール』だ。」

テラスが触るなといって少し、そこから遠ざかる村人たち。

黒い塊はゆっくりと降下していき、地面付近まで高度を下げていく。

「フォール……」

テラスの魔力に呼応してのものであった。

黒い塊はその勢いを止めず、地中へと入っていく。

「上から土をかぶせておけばしばらくは脅威にはならないはずだ。」

すけさんと呼ばれる老人が合図をすると村人たちは急いで、できた穴を埋める準備に取り掛かった。

そして目の前で魔法を見せ付けられた村人たちはテラスたちの話を信じるしか無くなっていた。





「それから、しばらくはその島の人たちにお世話になったの。」

クヨミはそう言うと立ち上がった。

照たち3人は座って話を聞き続けていた。

「その後、照が生まれる頃にある人の力添えで引越し、照をこっちの世界で生まれた子供としてきちんとここで育ててきたの。」

「ってことは俺はこっちで生まれたのか……」

「そうよ。あなたはこっちの世界で生まれてこっちの世界で育った。だからあなたには『ソグノ』のことは何も教えなかった。」

「そうだったのか……でも父さんは? もしかして本当に今も生きてんのか?」

照の問にクヨミはゆっくりと頷いた。

「おそらくとしか言えないけども、テラスは生きていると思うわ、『ソグノ』で。」

「じゃあ、俺が会ったのは本当に父さんだったのか?」

照はレグノ王国であったテラスを名乗る男を思い出す。

「いいえ、きっと違う。あなたがあったのは多分、反逆を起こした偽者のほうだと思うわ。」

クヨミはそう言って明確に否定してみせた。

「その偽者は、テラスの名を語り、国王として今も存在していると聞いたわ。」

「その偽者は、なんのために国王を名乗っているんだ?」

ショウが話に割って入る。

「彼はおそらくこの『ヴェリタ』と『ソグノ』の二つの世界を支配しようとしているわ。」

「支配だと?」

その答えに照が反応する。

「ええ、その支配ももう始まっているわ。10年前に起きた、通称『神隠し島』の事件。」

神隠し島の事件とは、10年前に起きた島全体の神隠しである。

以来この島は立ち入り禁止となっている。

なぜなら調査に入った調査員も一人残らず消えてしまったからである。

「その神隠し島と呼ばれる島こそが私とテラスが通ったホールがあった島……『間宮島(まみやじま)』だったのよ。」

その言葉を聞いたとき、アヤの頭にいくつかの場面が浮かび上がる。



女性が自分を抱きかかえる瞬間……

村から火がのぼる瞬間……

大量のクイールが人をむさぼっていく瞬間……

そして自分を育ててくれたリョウに抱えられる瞬間……

小説「sogno」第26話 −記憶の破片A−

照の母親は、照たちを中に通すと、リビングにあるテーブルの椅子に皆を座らせ、暖かいお茶を注いだ。

「母さん……説明してくれよ。どういうことなんだよ?」

照の母親は、頷いて残っている席に座った。

「まず、私もあなたの父親もその『ソグノ』で生まれたのよ。そして、20年前ある兵士の反逆によって追い詰められた私とテラスは『ヴェリタ』に逃げてきた。」





1993年某日・・・

「ここは……?」

木が生い茂る中に、照の母親であるクヨミと負傷した父親のテラスがいた。

「くっ……」

テラスの肩から溢れる血が止まらない。

「誰かいるんですか?」

どこからか男性の声が聞こえ、テラスとクヨミに緊張感が奔る。

テラスたちの下に現れた男性は、二人のこの場所に似つかない格好に驚き、一度止まるも、テラスが負傷していることに気がつき急いで駆け寄った。

「大丈夫ですか!?」

男性は急いで、持っていたタオルで傷口を押さえると、その両端を脇の下に通し、縛り付ける。

「少し我慢してくださいね。」

男性は少し力を強め、ぐっと締めた。

「何故、あなたがたはここにいるんですか? 見たところ島の人でもなさそうですし。」

「私は、テラス……レグノ王国で王をしている者です。」

男性は一度、しかめっ面をするが、テラスの目を見て気が狂っているわけでも、からかっているわけでもなさそうであることが分かり、少し表情を緩める。

「聞いたことありませんが、とりあえず村に向かいましょうか。少し待っていて下さい。助けを呼んできますから。」

男性はそう言うと、立ち上がり森の中を駆け出していった。

「レグノ王国を知らない……? それに……島といったか……」

先ほどまでいたのはレグノ王国の東にある森・フォレスタであったはずの二人。

それがどこか島の中にいるらしいのだ。



それから程無くして、男性が連れてきた村人たちがテラスたちを村へと運んだ。

ベッドに寝かされ、医者の治療を受けるテラス。



「私はここの間宮島で長をしている者だが、いったい君たちは何者なんだね?」

待合室では座るクヨミを村人たちが取り囲むように座っていた。

クヨミは正直に話すが、村人たちはほとんど真面目に聞いていないようであった。

「レグノ王国なんざ聞いたことねえな。」

「密猟者かなんかじゃねえのか?」

クヨミとテラスに対する不信感が高まっていく。

その空気を変える様にある村人が駆け込んできた。

「どうした?」

息を荒げて入ってきたその村人を見て、ざわめく他の村人たち。

「さっき、こいつらがいた近くになんか得体の知れない黒い塊ができてる!」

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プロフィール
graterさんのプロフィール
性 別 男性
年 齢 34
誕生日 2月28日
地 域 愛知県
系 統 普通系
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