照が目を覚ましたときにはテストの終了時刻を過ぎており、一度寝て顔色も戻っていた照は帰宅することとなった。

住宅街を歩きながらさっきの夢を思う。

(不思議な夢だったな……)

照ははっとなってある事を思い出した。

(待てよ……あいつは何だったんだ!?)

仮面の男は現実にも夢にも現れていた。

教室でテストを受けていた時だ。

(本当にただの夢なんだろうか…)

照は少し気持ち悪さを覚えながらも考えないことにした。

(あの時点で寝ぼけてただけかもしれないしな……)

そして照の一日は何ら変わりなく過ぎていき、昼間のことも忘れて眠りにつく照。



けれど、あれはただの夢ではなかった。



テルが気がつくとそこはネオンが眩しい繁華街であった。

「すげっ!」

日本で見る繁華街とはもはやレベルが違う、複雑に入り組んだ空中散歩道が張り巡らされ、全てが輝きを持ち、空の明るさですらかき消してしまいそうだ。

「何なんだ……ここは?」

テルがゆっくり歩いていくとゲームセンターのようにせわしく機械が動いていたり、またまた出店が立ち並んだりと何でも手に入りそうな町であった。

すれ違う人は豪華な服に身を纏い、ネオンに負けじと輝いていた。

「やりすぎだろ……」

行き過ぎた装飾にテルは苦笑いをしながら町を歩いていく。

すると目の前に巨大なカジノが現れた。

「ラスベガスか?」

テルはカジノの看板をぼーっと見上げながら近寄っていく。

すると誰かにぶつかってしまった。

ぶつかった男が身に着けていた装飾が反動で崩れ、ばらばらになりながら地面を転がる。

(うをっ……やべぇ……)

テルがそう思い、顔を上げると凄い形相で睨む男。

テルが困ったような笑みを浮かべると否応無しに男の拳がテルの顔面を強打した。

殴られた反動でテルが後ろへ倒れると周りからは悲鳴が聞こえた。

(イッタァァァ……)

テルがそう思っていると誰かが髪を引っ張る痛みがテルに追い討ちをかける。

「てめぇ、どうしてくれんだ? これ。」

そう言ってテルの髪を引っ張りながら、もう一方の手で壊れたチェーンのようなものをテルに投げつける。

「くっ……」

「何か言わんかい!?」

テルの腹部へ男の足が飛んでくる。

テルは痛みを覚悟し目を瞑ったが、何かが金属にあたる鈍い音が聞こえただけで痛みは伝わってこない。

その音を確認するためにゆっくりとテルが目を開けると、目の前に大剣が突き刺さり、男は足を押さえて痛がっていた。

どうやら男はテルを蹴るつもりで思いっきり大剣を蹴ってしまったようだ。

「感心しないな、そのゴミだけにそんな滅多打ちにするなんてよ。」

青年がテルの背後に現れ、男の腕を掴み、テルの髪を離させる。

「テメェみたいなのは嫌いなんでね。」

青年は微笑むと大剣を地面から引き抜いた。