「うん、良さそうだ。トラベルバッグは残ってないかな?」

ショウがそう言うと再びホシはリュックの中をあさり、いくつかカバンを取り出した。

どれも水がしみ込んではいるものの乾かせば何とか使えそうなものであった。

「じゃあ、マユちゃん好きなの選んで。」

「え? いいんですか? 私お金持ってないです!」

マユが慌ててショウにそう聞く。

「そんな、お代はいいです! 助けてもらった恩人からお金なんて取れません。それにカバンなんか海の匂いが……」

ホシがそう言うとショウはなにやらカバンからスプレーを取り出した。

「このスプレーがあるから匂いは平気だし、品物がなくなってお金に困るだろ?」

そう言ってショウは金貨を2枚ほど渡した。

「そんな2000ユニタも!?」

ホシが渡された金貨を見てそう叫ぶ。

「テントとバッグで4000ユニタくらいするだろ? だから半額ってことで。」

「ありがとうです。また次も割引させてもらいます。」

ホシはそう言って深々と頭を下げた。

結局マユは白い手持ちカバンを選び、ショウはさっきのスプレーをカバンに噴射していた。

「それでは、本当にありがとうです。」

ホシは商売が終わり、もう一度頭を下げる。

「なぁ、なんで海なんかに浮いていたんだ?」

商売が終わり、気になっていたことを聞くためにテルは口を開いた。

「実はですね、浮き島から落ちてしまいまして……」

ホシは恥ずかしそうにそう答える。

「浮き島?」

アヤとテルは何のことか分からずそう聞き返す。

「浮き島・ガッラ。帝国領でここから南東にいった場所にある島というか山だな。」

ショウが二人に説明を始める。

「巨大な山・レストの頂上付近にできた海のように広大な湖の端にある島で、片側は湖畔、片方は絶壁の滝で山の外側から見るとまるで浮いているかのような島だから浮き島という異名がついたんだ。」

ショウの説明に2人だけでなくマユまでもが感心していた。

「お詳しいのですね。」

マユがそう言ってにこっと笑う。

「まあ、行った事あるからな。」

「その浮き島・ガッラから落ちてしまい流されここまで……」

ホシは苦笑いしてそう答えた。

「あそこから落ちて流されて生きてるほうがどうかしていると思うが。」

ショウはそう言って苦笑いをする。

「へー、行ってみてえな。」

テルはまだ見ぬ名所に心を躍らせていた。

「けれど浮き島・ガッラへ今は行かないほうがいいと思いますよ? 帝国では反乱の噂が立ってから弾圧が激しくなっています。その中でも浮き島・ガッラはかなり厳しいです。」

「そうか、いい情報をありがとうな。」

ショウはそう言って礼を述べた。