「んっ……?」
テルが目を覚ますとそこは長い木の根元であった。
「テル……」
アヤが安心した表情を浮かべながらテルの顔を覗いていた。
「ここは?」
テルは状況が掴めず、アヤにそう聞く。
「ここはまだ、スピアギア海岸の途中よ。ショウとマユはあっちでテントの準備をしてる。」
アヤが説明する先には二人でテントを張るショウとマユの姿がうっすら見えた。
「俺は……寝てたのか?」
そう言ってみたものの未だ太陽は昇っておらず夜真っ只中であった。
「1時間くらいかな……マユが魔法で治してくれたから……」
アヤは少し悲しそうに呟く。
「そっか。」
そう言いながらテルは腹部をさすりながら起き上がる。
するとアヤがゆっくりとテルに抱きついてきた。
「……アヤ?」
テルはびっくりして固まる。
「……あんまり無茶しないで。」
アヤの言葉はいつもと違い弱く、寂しさが篭っていた。
「……絶対……死んじゃダメ……」
アヤのその言葉にテルはなんとなくアヤの真意を理解する。
記憶が戻り、アヤの頭には両親の死に際が色濃く残っているのだ。
そんな時にテルが倒れる。
それがアヤにとってどれほどの恐ろしさだったのかはテルには分からない。
それでもテルはアヤの気持ちを理解した。
「ごめんな。」
「ううん、ありがと……」
アヤはそう答えて、しばらくテルに抱きついていた。
アヤのすすり泣く声が聞こえなくなってから数分後にアヤはテルからゆっくりと離れ、顔に残っている涙を拭いた。
「ありがとうな。」
そんなテルはアヤを見つめ微笑みながらそう呟いた。
「な、何が?」
アヤは少しドキッとしながら聞き返す。
「ずっと看病してくれてたんだろ?」
テルの笑顔がアヤをさらに紅潮させる。
「べ、別にテントの張り方とか分かんないから、こっちにいただけだもん。」
アヤは顔を真っ赤にしながらそう答える。
するとテルは少し微笑むと立ち上がり、アヤの頭をぽんとして歩き出した。
「でも、ありがとな。」
テルはそう言い残すとショウたちのほうへ歩いていった。
アヤは顔を真っ赤にしながらも嬉しそうな表情を見せ、しばらくぼーっとテルの後姿を見つめていた。
「……好きだよ馬鹿。」
アヤが小さく呟いたこの気持ちをテルはまだ知らないでいた。