「ファイアボール!!」
アヤが発した炎の塊がスピクラブの頭部に当たるも大したダメージも無く、逆に怒りを買ってしまい、スピクラブは反転しアヤに狙いを定めた。
「嘘……」
巨大なハサミを振り上げ、アヤに突進するスピクラブ。
「逃げろ!!」
テルはそう叫び、銃を発砲する。
細長い銃弾がスピクラブの大きなハサミに突き刺さり、スピクラブは痛みにうめき声を上げて、一度足を止める。
その隙にアヤは逃げてテルのほうへ走った。
「おー、ブレイク弾強っ。」
テルが放った銃弾は先ほどレグノの武器屋で買った銃弾で、貫通力のみを追求した銃弾であった。
スピクラブは突き刺さった銃弾を取ろうと腕を振るも銃弾は突き刺さったままだ。
しばらくして外れないと分かったのか怒りのままにテルとアヤに突進してくる。
「うを、きやがった。」
テルとアヤは慌てて逃げる。
「衝動の斬。」
ショウが二人とスピクラブの間に割り込み、大剣を構え、スピクラブのハサミと斬り違える。
するとスピクラブの腕の1つが切り離され、砂浜を転がる。
蟹が怒りの声を荒げ、もう片方の腕を振り回した。
我を失ったスピクラブはそのまま突進を続け、アヤとテルに襲い掛かる。
その勢いのまま、スピクラブは残るもう一つの巨大なハサミをアヤに目掛けて突き出した。
「クソォ!」
アヤを狙うハサミはそれを止めるべく跳んだテルの腹部を襲った。
「テル!」
テルの決死の防御でハサミの軌道が変わり、アヤの横を通り過ぎる。
その反対側では、テルが勢いよく転がっていく。
怒りのおさまらないスピクラブは改めてアヤに狙いを定める。
「やらせるか、衝動の斬!!」
ショウの大剣が残っていたもう片方のハサミをも斬りおとした。
「テル!!」
アヤが起き上がらないテルに慌てて駆け寄る。
「いってぇ……」
テルはそう呟いて起き上がろうとするが、痛みに耐え切れず再び倒れる。
「だ、大丈夫!?」
アヤが凄く焦った表情でテルに聞く。
ショウと対峙していたスピクラブは両腕を斬りおとされ、恐怖を感じたのかその場から逃げるように立ち去っていった。
「テル……」
アヤが目に涙を浮かべながらテルを見つめる。
そこにマユが急いで駆け寄ってくる。
「ヒール。」
マユはテルの腹部に手をかざし、魔法を唱える。
「日魔法が使えるのか、助かった……」
ショウがそう言って胸をなでおろした。
日魔法とは16属性のうちの1つ「日」をさす魔法で主に治癒の系統に位置する。
8つの属性系に加え、光と闇がそれぞれの力を宿した魔法で、残る6つの「日」が治癒、「月」が吸収、「聖」が強化、「魔」が劣化、「命」と「死」は意味どおりの力を現す。