月明かりが白い砂浜を照らし、穏やかな波の音が心に平穏を取り戻させる。

さえぎる物がない海岸には心地よい潮風が吹きぬけていた。

レグノ王国から東に伸びるスピアギア海岸。

テルたちは王国から逃れ、そこを歩いていた。

「助かったわ、じゃあまたどこかで会ったらよろしくね♪」

レオはそう言ってさっさと先に歩いていく。

「あっという間の出来事だったな……」

テルが去っていくレオの後姿を見てそう呟く。

「のんびりしてる暇はない、俺たちも追っ手が来る前に逃げるぞ。」

ショウがそう言ったので、4人は海岸を歩き出した。

「どれくらいでシッタには着くの?」

歩きながらアヤがショウに質問する。

「んー、6時間くらいかな。」

ショウは少し考えながらそう答える。

「マユは大丈夫?」

テルがマユにそう聞く。

「6時間も歩いたことないですが、今は大丈夫です。心配ありがとうございますテル様。」

マユはそう言って微笑んでテルの気遣いに答える。

「なんで私には聞かないのよ?」

アヤがむっとした表情でテルに聞く。

「え? アヤは大丈夫そうだから。」

テルがそう答えるとアヤがテルを睨んでパンチを食らわす。

「最低……」

アヤはそう言い残してさっさと歩いていく。

「だめだこりゃ。」

ショウが笑いながらそう呟いてアヤを追って歩いていく。

「何か私、悪いことしました?」

マユは突然起きた出来事にわけが分からずオロオロする。

「いや、いつもの事だよ。」

テルは胸を押さえながら苦笑いして歩き出した。

「は、はい……」

マユはイマイチ分からずも小走りでテルたちのあとを追った。



「さて平穏な海岸も終わりみたいだな……」

ショウたちの前では巨大な蟹が砂浜を徘徊している。

「蟹?」

「スピクラブだな。殻は高く売れるぞ。」

ショウがそう説明する間にスピクラブは4人を見つけ襲い掛かった。

「来た!!」

蟹の巨大なハサミが砂浜を大きく叩き、砂を舞い上げる。

「きゃっ!」

反応が遅いマユは砂埃に包まれる。

「くそっ……」

ショウが大剣を振り上げ、マユと蟹の間に割り込み、蟹に大剣を叩きつける。

しかしスピクラブの堅甲に阻まれ高く乾いた音が響く。

「こっちだ!」

その隙にテルはマユの腕を掴み、マユを助け出す。

「……かてぇな。」

ショウは大剣を握りなおし、構える。

「気流の斬!!」

下から上への斬撃がスピクラブの巨体をわすかに浮かせる。

しかし殻が斬れることもスピクラブがひるむこともなく反撃の巨大なハサミがショウを襲った。

ショウは大剣でそれを弾くも、反動で後ろへ飛ばされた。