「ちっ!」
ショウが大剣を抜き、ヤミの剣を迎え撃つ。
「えっ?」
ヤミは一歩離れ、剣を構えるがマユ誘拐の犯人が驚きのメンバーであることに気がつき戸惑う。
「テル様……とそのお連れ様?」
ヤミは状況が掴めず、そう言葉を漏らす。
「………」
ショウは無言で大剣を構え、少しずつ後ろへ引いていく。
「……テル様……なぜ?」
ヤミはどうしていいのか分からず戸惑っているようだ。
「君の従うテラスは俺の父さんじゃねぇ! 偽者だ!!」
テルはヤミに向かってそう叫ぶ。
「たわごとを!!」
ヤミはそう跳ね除けたが、どうやら完全には否定できていないようであった。
ヤミの頭には王であるテラスに対する疑念が出ていた。
実の息子の存在を15年以上も隠し続けるのだろうか……
さらに妃は20年前に亡くなっているということは母親は別にいることになる……
そんな謎の息子・テル様はテラスのことを偽者といっている……
そして、そのテル様は一度逃げた城に再び現れて、自分の嫁となるマユ様を連れて逃げようとしている……
「まともに相手してたらかなわねぇし、兵士が集まってくる。早く城外に逃げるぞ!!」
ショウがそう言ったのを合図にテルがマユの腕を握り、城の出口に向かって走り出した。
それを見てアヤが少し寂しそうな表情を見せながらも後を追っていく。
「待て!!」
ヤミが我に返り、3人を追おうとする。
「流線の斬!!!」
衝撃波がまっすぐにヤミを襲う。
「くっ!!」
動きが鈍ったヤミは反応が遅れ、まともに攻撃を受け、鎧が防ぐも後ろへと押される。
その隙にショウも3人を追って城外へと走った。
「逃がすか……」
口ではそう出るもヤミの身体は動かず、ただ孤独となった中庭を見つめるだけであった。
確実にヤミの中の疑問は隠せないものへと姿を変えた。
「私は一体何を信じればいいのだろうか。」
ヤミの問いに答えてくれる者はおらず、ただただ月明かりが孤独なヤミを照らすだけであった。
王の間へたどり着いた一人の騎士。
青いマントに青の大剣。
金の長髪が印象を残し、後姿からは覚悟がにじみ出ていた。
「……ファリス。」
リョウがそう呟くとテラスはゆっくりと振り返り、にやっと笑った。