「貴様! 何をする!!」

リョウの叫び声が響く森の地面には赤い鮮血が滴り落ちる。

「くっ……」

テラスは肩を押さえながら反転する。

その先には剣を握るファリスとスチエナの姿があった。

ファリスの剣からは血が滴り落ちている。

慌てて、イースとアンヌが剣を構え、ファリスとスチエナと対峙する。

「ファリス! 貴様、王に剣を向けるとは何事だ!」

リョウがそう叫びながら大剣をファリスに向ける。

クヨミ「テラス!」

テラス「大丈夫だ……」

そう言ってゆっくりと立ち上がるテラス。

「反逆者を捕らえよ!!」

リョウがそう指示を出すとアンヌとイースがファリスとテラスに斬りかかる。

しかし、ファリスはいとも簡単に二人を斬り、地に伏させた。

「テラス国王とクヨミ様……こちらへ!!」

そう叫び、テラスとクヨミを北の方角へと誘導する。

「逃がすな。」

ファリスがそう言うとスチエナが王をしとめるべく駆け出す。

「やらせるか!!!」

リョウの大剣がそれを阻み、スチエナを押し戻す。

「天轟竜破!!!」

リョウの大剣が空を切り裂き、周りの木々をなぎ倒していく。

「追うぞ!!」

木を剣で斬り、直撃を避けながら、国王を追うファリスとスチエナ。

(二人をお守りせねば!)

リョウは背後に向け、何度か斬撃を放ち、ファリスとスチエナの行く手を阻む。

ファリスとスチエナの二人を後方に置いていたため、レグノ王国へ帰還することは困難である。

(少しでも、地の利がもてるノルドベストか。)

そう思い、国王と妃を連れて北へ走るリョウ。

森を抜け、視野が広くなったリョウは森から離れるために、少しでも国王たちを山道の奥へと進ませる。
そこへスチエナとファリスが姿を現し、国王の存在を確認する。

「スチエナ、リョウをやれ。」

ファリスはそう言って国王のほうへ駆け出していく。

「行かせるか!!」

リョウがそう言いながら剣を振ろうとするとスチエナの唱えた魔法がそれを阻んだ。

「ストーン。」

リョウは反応し、それを避けようとするも魔法は腕をかすめた。

「なにっ!?」

リョウの右腕は見る見る位置に水分を失い、灰色の石へと化していく。

リョウは慌てて、大剣から右手を放し、片手で大剣を握る。

「いいご判断ってか?」

スチエナは笑い、蔑むようにリョウを見つめる。

スチエナの魔法の間に、ファリスは山道を登っていった。

「国王!」