・・・20年前・・・
若きリョウはレグノ王国軍1番隊隊長を務めていた。
レグノ王国軍は3人の隊長によりまとめられており、それぞれ1番隊、2番隊、3番隊と呼ばれている。
その3つの隊の中でも、王に関わる重要任務を任されるのが1番隊である。
そして2番隊が主に外務が多く、3番隊は内務に関わることが多い。
この3つの隊の他にも、領国内の町などにはそれぞれ支部隊が存在している。
つまり、リョウが軍の中で最重要な役職についていたのだ。
リョウは青い鎧を纏い、青い大剣を背負っている。
また、リョウは軍の中で群を抜いた剣術を持っていた。
「お呼びでしょうか、国王殿下。」
リョウがそう言って頭を下げる先にはテラスの姿があった。
「フォレスタ開拓のため、視察に行こうと思う。ついて来てくれるか?」
20年前のテラスの姿はテルにそっくりであり、その光景はテルとショウが会っているのかと錯覚する程度だ。
「分かりました、1番隊の中から腕利きのものを何人かお連れいたしましょう。」
リョウがそう言うとテラスは微笑み、すぐに支度をするように命じた。
そして数時間後、集められた1番隊隊員数人とともに国王テラスと妃であるクヨミがレグノ王国から未だ未開拓のフォレスタへ向かった。
「ファリス大佐、スチエナ中佐は背後を頼む。そして、アンヌ中佐とイース中佐は前を頼む。」
その命令を受け、隊員たちは配置につく。
各々の武器を握りしめ、クイールの巣と化しているフォレスタの中を歩んでいった。
道中、フォレ・ウルフやキラービーなど森に住むクイールが襲い掛かってくるが、何の問題もなく兵士たちが討ち取っていく。
「うむ、街道として開拓するにはかなりの手間がかかりそうだな。」
テラスは無造作に生える木々やクイールの多さを示唆しながらそう呟く。
「しかし、北東の村とのラインを作るにはこのルート以外は……」
クヨミが難しそうな顔をしながらそう呟く。
「スチエナ中佐よ。」
「はい。」
一人の兵士が敬礼をしながらはっきりと返事を返す。
「ここの森のほかにルートはないのだな?」
「はい。他のルートはございません。何せ、北東には山脈が連なっており、ノルドベストにできた大空洞以外は北東の雪原へ抜ける手立てはありません。そうなるとやはりこのフォレスタを通る以外に道はありません。」
「そうか。」
スチエナはもう一度、敬礼をすると後ろへ戻った。
「そうなると、やはりこの森に道をつくらねばならないな。」
テラスはそう言うと、来た道を戻るようにリョウへ指示を出した。
その時、リョウとテラスの背後では二人の男がよからぬ事を考えていることなど露知らずに……