「アヤ!!」
テルの叫び声がアヤの心に響き、現実に呼び戻される。
「はぁはぁ……」
アヤは正気を取り戻し、息を整える。
「間違いないな、俺はここに来た。10年前だ。」
ショウは廃れた港町を見て、そう呟く。
その廃れた町は崩壊の跡を見せているが原形をかろうじて保っていた。
「私は……ここで……両親を殺された。」
アヤは昔の映像を思い起こすように両親の幻影を町に投影する。
そして決意したように目を瞑り、一度深呼吸をすると目を開いた。
「やっぱり何かある……」
アヤはそう呟いて、まっすぐに森を見つめた。
「なら全員一致だな。この島の秘密を解き明かすぞ。」
そう決意を固め、ショウも森を見つめる。
「あれ? 俺の意見は?」
テルがそう言うとアヤとショウがテルのほうに目を向ける。
「何か異存でも?」
「いや、ねぇけど……」
「じゃあ余計なこと言わない。」
アヤはそう言ってテルを睨むと、一人先に歩き出した。
「えー、ひどくね?」
テルがそう言う横でショウは笑いながらアヤの後を追う。
そして3人は再び、森の中へと歩を進めた。
しばらく歩くとショウが突然止まり、テルとアヤを静止させた。
「何かある。」
ショウがそう言って木の影から見つめる先にはなにやら怪しげな白い建造物が見える。
その建造物は円柱の形をしており、高さは4メートルほど、直径は5メートルほどである。
窓ひとつもなく、ただの白い塊のようであった。
「やっぱ、何かあったな。」
そう言いながらショウはさらに詳しく状況を確認する。
「あれ……?」
その建造物の入口らへんには番をしていたであろう兵士二人と黒い狼が倒れていた。
「死んでる?」
アヤがそう呟く間にショウは一人身をかがめながら近づいていく。
そして周りに気を使いながらその倒れている場所まで歩いていった。
「……一閃だな。」
兵士の鎧はなにやら刃物で砕かれた跡があり、黒い狼は血を流して倒れていた。
「まだ時間がたってねぇな。」
黒い狼から流れる血はまだ固まっておらず、狼自身も冷たくはなっていなかった。
「何かあったんだな……ついさっき。」
ショウがそう言って建物のほうを見つめると入口は地下に続く階段となっていた。
「お、おい。」
背後からテルとアヤが小走りで近寄ってきた。
「行くぞ?」
ショウがそう言って建物のほうへ歩いていった。