「良かった。無事だったか……」
父親は二人の生還を確認し、安堵の声をもらす。
「これは? 何?」
「分からない。」
巨人や怪鳥だけでなく狼など大量のクイールが町を壊し、人を喰らっていく。
父親が手を差し出し、彩を抱える。
「とりあえず、逃げましょう!!」
そう言って母親が港のほうへ走り、船へ乗り込もうとすると、海の中から不気味なロボットのようなものが飛び出し、備え付けられた機関銃で彩の母親に襲い掛かった。
「加奈あああ!!!」
父親がそう叫ぶのもむなしく、彩の母親は蜂の巣にされ、海に落ちる。
「お母さぁぁぁあぁぁぁん!!!!!」
彩の悲痛な叫び声が響き渡る。
「あぁぁおかぁぁぁさぁぁささあっぁん!!!!」
泣き叫ぶ彩を抱きしめ、次なる標的にならぬよう走る父親。
そこに一隻のクルーザーが突っ込んでくる。
その突っ込みざまに大剣が空を斬り、奇妙なロボットは爆発し、海の藻屑となった。
「はぁはぁ……今度はなんだ!?」
父親は必死に走りながら自分の背後に突っ込んできたクルーザーを見つめる。
「お母さん……お母さん!?」
クルーザーから飛び出した一人の男。
それは他ならぬ彩をエミスフェロ都市までつれてきたというリョウであった。
「くそっ!!間に合わなかったか!!!」
リョウは怒りに顔をゆがめながら町を眺めた。
「だ、誰だ!!!」
父親が叫び、リョウが存在に気がつくと同時にリョウの目が大きく見開く。
父親が狼に噛み付かれ、血を噴き出しながら倒れたのだ。
その勢いで彩は宙に飛び出す。
慌ててリョウは彩が落ちる直前で拾い上げ、もう片方の手で大剣を握る。
「どうか……彩だけは……」
父親はその言葉を残して姿形が消え去った。
「いやぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!!!!」
彩が発狂する。
永遠に叫び続け、涙を流す彩。
「くそぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
リョウは歯を噛み締め、走り出す。
襲い掛かるクイールたちを大剣で弾き飛ばし、町を逆送する。
そして叫びながら反対側を見つめる彩の目にある光景が映る。
それはクイールの一匹である黒い狼にまたがり、こちらを一度見ると、腕を振る仮面の男であった。
男が腕を振ると同時にクイールたちは一斉にリョウに狙いを定める。
その光景をみた瞬間に彩の意識は飛んだ。