・・・10年前の間宮島・・・

「ねぇ、危ないってやめようよー……」

森を歩いていく少年二人。

「びびってんじゃねぇよ!」

一人の少年はどんと構え、枝を片手に歩いていく。

それにおびえた表情でついて行くもう一人の少年。

「だってさぁ、森の中には大きな穴があって、そこに落ちたら消えちゃうんだよぉ……」

「だーかーらー、その穴を見つけに行くんだろ?」

「お母さんに怒られるよぉ、勝手に森に入っちゃいけないんだよぉ……」

少年の泣き言にイライラしたもう一人の少年が立ち止まって振り返る。

「じゃあ帰れよ! 俺一人で行くから!」

そう言って少年は再び森を進んでいく。

「そんなぁ……」

結局はついて行く少年。

そして森を1時間以上歩いた後、二人は問題の穴をついに見つける。

「あった!」

その穴の奥深くは光が差し込まず見えない。

穴の直径は5メートルほどで、覗き込めばたちまち恐怖にかられるであろう。

「うわぁぁ……」

覗きこんだ少年が涙を浮かべながら腰を抜かす。

「大きな声出すなよ! びっくりするだろうが!」

強がってはいるがもう一人の少年も怖いのだろう。

「ん? 何か聞こえなかったか?」

少年はそう言いだして、もう一度穴を覗きこむ。

「うわぁぁぁあぁ!」

もう一人の少年がその背後で叫び声を上げる。

「な? なんだよ!?」
そう言って振り返るとそこにはもう少年の姿はなく、いるのは口から血を垂れ流す黒い狼であった。

「え、え……うわぁぁぁぁぁ!!!」

少年の叫び声が森に響くもむなしく少年はそこから姿を消し、そこには黒い狼を始めとした大量のクイールを率いる仮面の男が姿を現した。

「さぁ……始めましょう……夢の創立を……」

男の言葉と同時にホールの中から次々とクイールが姿を現し、そこから散っていった。



海を高速で走る一隻のクルーザー。

それを操るのは一人の男で、金髪をたなびかせ背には大剣を背負っている。

瞳は茶色く青のコートに身を纏っていた。

「くそっ間に合うか? あの野郎ヴェリタに手を出しやがって……」

男が向かうはまだ平穏な間宮島。

その間宮島はあとひと時もすれば惨劇と化す事がその男には分かっていた。

「ファリスめ……」

そう呟く男の顔立ちはまるでショウのようであった。