巨大な黒い狼はショウを狙って跳びかかる。
ショウはそれを見切り、避けると狼の牙が地盤を砕き、地面にヒビをいれる。
「うおっ、マジかよ……」
テルがそう焦りながら銃を乱射する。
銃弾が狼の頭に当たり、狼はうめき声をあげながら首を大きく振る。
「孤高の斬!!」
ショウがその隙をついて、真上から大剣を振り下ろす。
大きな血しぶきと叫び声を発しながら狼はついにその場に倒れた。
「倒した……?」
アヤは恐怖から荒くなった息を落ち着け、そう呟く。
「フォレスタの狼とはサイズが違いすぎるぜ……」
テルが倒れた狼を触りながらそう呟く。
フォレスタにいたフォレ・ウルフとは全長にして3倍はあろう巨体である。
「さすがにこれは見たことないな。」
5年、各地を旅していたショウにも初めてのクイールであった。
「んでも、ここが神隠しの島・間宮島だよな。」
「ますます何かありそうだな。」
倒れる狼を眺めながらショウはそう呟いた。
「何か分かるといいな。」
そう言ってテルがアヤの方を見るとアヤは少し悲しそうな表情をしながら狼を眺めている。
(記憶の中のクイールと同じ!?)
アヤはテルの言葉に反応することなく少しの間、固まっていた。
「とりあえずここにいても埒があかない。とりあえず動こう。」
ショウの提案にテルとアヤは頷き、3人は森の中で歩を進めた。
しばらく歩くと森を抜け、目の前には崖、そして海が姿を現した。
「これって太平洋なんだよな……」
なんだか現実・ヴェリタの世界とは実感がわかないテルはそう呟いた。
「まあな、でも、思い出したよ……俺はおそらく間宮島からソグノに渡ったんだ。」
ショウの言葉にテルとアヤがショウのほうを見る。
「あん時は分かんなかったけど、きっとそうだと思う。」
ショウのあやふやな感じに戸惑いながらも3人は海岸沿いを歩いていく。
そして数分歩くと、段々と崖が低くなり、ついには港町らしき場所に着いた。
港町といえども人の気配はなく、また戦乱の跡のように崩れ、廃れていた。
「ここ……」
アヤがそう呟くと、またしてもアヤの脳裏には大量の映像がフラッシュバックし始める。
町を襲う大量のクイール……
そしてそれを統括する謎の仮面の男……
自分を抱きかかえ逃げまとう両親……
クイールに殺される自分の母親……
そして父親……
投げ出された自分を拾い上げる男……
「リョウ……」