海に囲まれ静かに眠る神隠しの島・間宮島…。

海から見えるその島は崖と山、そして廃れた町の跡の面影を見せる。

人の声、それは何一つ聞こえない。



テルたちが闇に吸い込まれ、次に意識を取り戻した場所はまたも森の中であった。

「……いった。」

アヤが目を覚ますとテルが自分を抱きかかえていた。

「いやっ!!」

慌ててテルを突き飛ばそうとするが、テルのいたるところが傷だらけになっているのに気がつき、アヤは何とか衝動的に出た手を止めた。

アヤがホールに吸い込まれ、崖を落ちたとき、テルはアヤを助けるために迷わず崖下へと飛んだ。

そしてアヤを掴み、抱き寄せるとともに吸われる岩や木の枝などからアヤを守ったのである。

「……好き……」

アヤはそう呟き、幸せそうな表情をする。

するとテルが意識を取り戻したのか、苦しそうに息を吐く。

そして、ゆっくりと目を開けるとテルとアヤは目が合った。

「……アヤ?」

テルがそう呟くと同時にアヤは顔を真っ赤にし、叫び声を上げながらテルを突き飛ばした。

「うおっ!!」

テルがショウとぶつかり、ショウも意識を取り戻す。

「いって……」

ショウは背中を押さえながらゆっくりと起き上がった。

「って毎回毎回なぐんなよ!!!」

テルが立ち上がってアヤに向かってそう怒鳴る。

「だって!」

アヤはそう叫ぶと反対を向いて座り込んだ。

(……聞こえてた?)

アヤは鼓動を高ぶらせながらそう思う。

しかし、そんなひと時も聞こえるはずのない唸り声がかき消した。

「えっ?」

巨大な黒い狼が息を荒げながらアヤを覗きこむ。

「きゃあああ!!」

アヤの叫び声と同時に狼は鋭い牙を見せつけながら大きく口を開けた。

アヤが恐怖から目を閉じると、銃弾が狼の口に二発打ち込まれる。

すると狼はうめき声をあげ、少し後退した。

「アヤ!!」

テルの叫び声に感化され、アヤは立ち上がってテルの方へと逃れる。

それと代わる様にショウが大剣を握りしめ、駆け出して、追い討ちをかける。

狼は斬りつけられた首から血を垂らしながらも体勢を立て直し、怒りの唸り声をあげる。

「んで、何でここにクイールがいんだよ。」

ここはヴェリタ、普通に考えてクイールがいるわけもない場所である。