翌朝、テルが目を覚ますと、アヤが自分の腕を抱えながら眠っていた。
テルは一瞬びっくりして動きそうになるも起こさないようにと思い留まる。
そのままで、首を反対のほうへ回すとショウはもうテントから姿を消していた。
そんな気配を察してかアヤが、んーと声を出しながら目を開けた。
そして、自分が抱えているものを確認する。
アヤは顔を上げ、テルと目が合うと叫び声を上げながらテルを思いっきり蹴っ飛ばした。
「ぐぅっは!!!」
すねに蹴りを喰らったテルは悶えながらテントを転がる。
そんな二人の叫び声をテントの外で朝食の準備をしていたショウは聞いて、笑っていた。
「ホント、面白いな。」
ショウはそんな事を言いながら、昨日ゴウから買った缶詰を3つお湯の中で温めていた。
「な……なんで!?」
アヤが顔を真っ赤にしながらそう慌てふためく。
「いってぇな! アヤが掴んでたから起こさないようにしてただけだよ!!」
すねを押さえながらテルが怒鳴る。
「そうじゃないわよ!」
アヤの蹴りを慌ててよけるテル。
「じゃあ、何だよ!?」
テルは連続で繰り出されるアヤの蹴りから逃げるべくテントを飛び出した。
「な、何ってその……えっと……」
顔を真っ赤にしながらもテントから顔だけ出して怒るアヤ。
「もう、最悪!!」
そう叫んでアヤはテントの中へと引っ込んだ。
「ホント訳わかんねぇや……」
はーとため息をつきながら周りを見渡すテルの目にはお湯の中から缶詰を出すショウが映った。
「ホント正直じゃないし、鈍感だな。」
そう言ってショウは温まった缶詰を開けていく。
「正直じゃない? 俺が?」
テルはショウの近くによってそう聞く。
「ん? ああ、正直じゃないのはアヤの方な。」
そう言って開けた缶詰の二つをテルに渡すショウ。
中には炊き込みご飯のようなものが入っていた。
「それがテルとアヤの分。」
そう言って微笑むショウに言いかけたことを飲み込んで、再びため息をつきながらテントに向かうテル。
そしてテントの中を覗き込むと、一人寝転がるアヤの姿があった。
「な……何よ!?」
そう言って起き上がるアヤにテルは缶詰と箸を渡すとすぐにテントから出て行った。
しばらくアヤはポカーンとなっていたが、缶詰の中を覗き込み一人テントの中でこう呟いた。
「……ありがと。」