「あ、あんたテントとか張ったことあんの?」
アヤがそう言ってテルを睨む。
「いや、ないけど……何とかなるだろ。」
そう言ってテルはショウの広げたテントに向かう。
テントの橋には丸いわっかがついており、ショウに渡された小道具とにらみ合い、使う部品を探すテル。
アヤにとっては触ったこともないものにどうしていいか分からず、ただテントが飛ばないように押さえるだけであった。
その脇でテルが部品を見つけ、ハンマー片手にくいの様なものをわっかに通し、地面に打っていく。
それを四方順番にやっていくテル。
アヤは何も出来ず、ただそれを眺めるだけであった。
テントの準備が終わり、そこにはちゃんとした姿をなしたテントがあった。
「へー、テントってこういうもんか。」
アヤが中を覗き込んでそう呟く。
しかしショウが一人で使っていたということもあって3人寝るには狭そうだ。
「次は、うーん……火だな。」
テルはそう言って小道具の一つを地面に置く。
「火だったら私が簡単にできるわよ。」
アヤがテントの中から出てきてそう言う。
「魔法?」
「そうよ、あんたにはできないもんね。」
アヤは得意げに笑って見せ、槍を取り出すとルートのついたほうを簡易コンロのようなものに向けた。
「ファイア……」
小さな炎が噴き出し、コンロのようなものに火をつける。
「おー!」
テルがそう感心するとアヤはテルに見えない角度で少し嬉しそうな表情をしていた。
「でも、なんか二人に出会えてよかったな。」
テルは炎を見つめながら、そう呟いた。
「突然何よ?」
アヤはそう言い、テルの横に座りながら炎に向け手をかざした。
「だってよ、俺一人だったら、ワームにも勝てなかっただろうし、普通に生きてねぇよ。それに偽者の父さんの事を冷静に考えられなかったと思う。」
テルはそう呟いて、夜空を見上げた。
ヴェリタで見るときよりも鮮明に無数の星が目に入る。
そんな鮮やかさに心が奪われそうであった。
「綺麗な星空だな……」
「……うん……」
(私のほうが二人に出会えてよかっただよ……二人がいなかったら私はあそこで死んでた……)
見上げた星空の美しさにアヤも心を奪われていた。
エミスフェロ都市ではネオンが輝き、星はほとんど見えなかったのだろう。
「おやおや、こんなところに人がおりやすよ……」