森の中に不気味な鳥の鳴き声が響き、それから間もなくして銃声が聞こえる。

森の中を誰かが走る音が聞こえると狼のような唸り声が聞こえ、木が倒れた。

その場所はレグノ王国から西に位置し、開拓はされていない森である。

クイールの巣と化したその森・フォレスタには一般人は近寄ろうとはしないからだ。

「うおぉぉぉ!!」

テルが叫びながら森を走り、振り向きざまに二発発砲する。

銃弾はテルを追いかける狼の群れの二匹にあたるが、群れ自体はひるまずに突き進んでくる。

それに加えて、前方から怪鳥が奇声を出して、テルを目掛けて突っ込んでくる。

「くっそぉ!」

テルはそう叫び、急いで進路を右へ変えた。

怪鳥は一度、空へと舞い上がり狼との衝突を避け、狼の群れは体勢を崩しながらも右にカーブしてテルを追いかける。

ショウがテルの進行方向に現れ、大剣を構えた。

「……波動の斬[はどうのざん]!!」

テルがショウの横を通り過ぎる瞬間、大剣は空を斬り、その勢いで生まれた衝撃波が狼たちを吹っ飛ばす。

「助かった。」

そう安心するのもつかの間で、先ほど空へ逃れた怪鳥が奇声をあげ、急降下してきた。

テルが慌てて、銃を向け、発砲する。

銃弾が当たり、怪鳥はうめき声を上げながら落ちてきた。

それを合図とするかのように木の隙間を縫って巨大な蜂が大群をなして二人に襲い掛かる。

「ファイアボール!!」

炎の塊がそれを一蹴し、残った蜂たちも恐れをなして逃げていった。

「ふー……」

テルが安堵して、額の汗を拭う。

「あんた、もうちょっと落ち着いたら?」

アヤがそう言ってため息をつく。

「うるせぇ、あんな狼大量に相手できるかよ!!」

「フォレ・ウルフだな。」

ちなみに怪鳥はフォレ・バード…蜂はフォレ・ビーである。

「俺の武器、これだぞ?」

そう言ってテルが銃を見せ付ける。

「文句あるなら返してよ!」

アヤがそう言って奪い取ろうとするがテルはひょいっとそれを避ける。

「いや、これは感謝してるよ。」

テルはそう言うと微笑み、銃をしまう。

「この馬鹿!」

アヤがそう言ってテルを思いっきり蹴っ飛ばす。

テルは痛みに蹴られた足を押さえ悶えていた。

「まぁ、武器にも向き不向きがあるしな…倒せる敵を倒しゃあいいんだ。それより、アヤは戦うときの動きがいいな。」

ショウはそう言って大剣を背中に戻す。

「えっとね。私の目は、動くものの軌道がはっきりと見えるのよ。」

そう言ってアヤは自分の目を指差す。

「その時の軌道がはっきり見えるだけじゃなくて、それからの軌道もはっきりと予想できるの。」

「あ、だからルーレットのとき、一発で当ててたんだな。」

テルは初めてアヤに会ったときのことを思い出す。

アヤはルーレットでかける際に、一点に大金を賭け、見事に当てていた。

「そうよ、あれはまぐれじゃない。どこに入るかが私にははっきりと分かってた。」

「そうだったのか。道理でバトルの時の動きが必要最低限なわけだ。」

これまで、テルが全力で攻撃から逃げるのに対し、アヤは少ない動きで先読みしているかのように避けていた。

ショウは単に経験の差だと認識していたが、こういう秘密があるとは思っていなかった。

テルに至っては自分に必死でそんなことに気がつくわけもない。

「で、こっからどこに行けばいいの?」

話を変えるかのようにアヤが言い出した言葉に対し、テルは母親から貰った地図を取り出した。

すると『ヴェリタ』ではなかった赤い点が1つ地図に浮かび上がっていた。