「アヤ!?」

照が心配そうにアヤの肩を抱える。

アヤは息を荒げ、青ざめた顔をしながら震えていたのだ。

照の声で正気を取り戻したアヤは照の手を掃うと、お茶を飲んで一度深呼吸をする。

「……何……なの……」

アヤは両手で頭を抱え、俯く。

「大丈夫か? アヤ?」

「誰なの? 誰なの……」

アヤはそう呟き、ついに涙を溢れさせる。

この時、アヤの脳裏に映っているのはクイールを統率させ村を襲わせる謎の仮面をつけた男であった。

「なんで、そんなことするの……やめてよ……」

アヤの目の前で女性と男性が倒れる光景……

「イヤッ……お……お父さん?お母さん??」

アヤが髪の毛をバサバサやり始めた。

「やめて!!!!」

叫ぶアヤの腕をを照が掴んだ。

「アヤ!!しっかりしろ!!」

それによってアヤの動きが止まり、アヤは必死に息を整える。

落ち着いてきたのを見て、照は掴んでいた腕を離した。

「……間宮島……私の故郷……?」

アヤが息を荒げながらもそう呟いたのを聞き、照とショウは驚く。

「私、誰かに助けられた……私だけ……助けられた……」

アヤはそう呟いて、再び顔を下ろした。

どうやらアヤは『間宮島』という名前にわずかな幼少の記憶が引き戻されたのであろう。

「私は……誰?」

「アヤだよ!」

「そうじゃない……どうして?」

アヤ自身でも何が何だか分からなかった。

おそらくまだ失われたままの記憶があるのだろう。

「そのことを知ったテラスは再び『ソグノ』へ戻ることを決意した。私はあなたを育てるために残った。」

クヨミはそう言うと棚の中から、一枚の紙と石を取り出した。

「しかし、その間宮島はもう敵の手中であった。だから、テラスはファントムドームから出る道を選んだ。」

「それが2年前ってことか……」

照の中で話が繋がっていく。

「ええ、それでこれが『ソグノ』の地図とルートよ。」

そう言ってまずは地図を広げるクヨミ。

「ここが、レグノ王国。」

そう言って地図の北の方にある海岸沿いの街を指差す。

「ここが、港町ボルト。」

港町ボルトは地図上では東に位置する。

「そして、ここはエミスフェロ都市。」

その港町ボルトから北の砂漠の真ん中を指差すクヨミ。

「で、ここがそのホールのある場所よ。」

そう言ってクヨミはレグノ王国から西にある山を指差した。

「巨大な木が生えている場所にあるはず……山道のどこかだったわ。」

クヨミは照にその地図を手渡した。

「それに今は何の変哲もない地図だけれど、照、あなたがソグノへ行けばこの地図が自分たちのいる場所を教えてくれるの。役にたつわ。」

そして脇に置かれていたルートを手にするクヨミ。

「私が持っていたルートよ。きっとテラスのいる方向を教えてくれる。テラスに会いたくなったら使いなさい。」

クヨミはそう言って赤く輝くルートもテルに渡した。

「どういうことだよ、母さん……」

「行くなら好きにしなさいって事。」

クヨミはそう言うと照の頭を撫でた。

「きっとあなたは行くって言うと思って準備しといたのよ。」

「母さん……」

照はそう呟いてぐっとルートを握り締めた。

「行くか、その神隠し島に。」

落ち着いたアヤがその言葉を聞き、顔を上げる。

「何か分かるかもしれねえし、アヤも何か思い出すかもしれねえだろ?」

照はそう言うとにっと笑って見せた。

「なんか、むかつく……」

「何だよそれ。」

照が驚いた顔をするとアヤは意地悪そうに笑う。

そんな二人のやり取りを見て微笑むクヨミとショウ。

「神隠し島にいくのなら、警戒の少ない『ソグノ』の側からホールを通っていくといいと思うわ。きっとこっちからは警戒されているから。」

クヨミの言葉に対して頷く3人。



照をまたあの感覚が襲う。

それはアヤとショウも同じであった。

その感覚とはホールに入るときの感覚である。