照の母親は、照たちを中に通すと、リビングにあるテーブルの椅子に皆を座らせ、暖かいお茶を注いだ。

「母さん……説明してくれよ。どういうことなんだよ?」

照の母親は、頷いて残っている席に座った。

「まず、私もあなたの父親もその『ソグノ』で生まれたのよ。そして、20年前ある兵士の反逆によって追い詰められた私とテラスは『ヴェリタ』に逃げてきた。」





1993年某日・・・

「ここは……?」

木が生い茂る中に、照の母親であるクヨミと負傷した父親のテラスがいた。

「くっ……」

テラスの肩から溢れる血が止まらない。

「誰かいるんですか?」

どこからか男性の声が聞こえ、テラスとクヨミに緊張感が奔る。

テラスたちの下に現れた男性は、二人のこの場所に似つかない格好に驚き、一度止まるも、テラスが負傷していることに気がつき急いで駆け寄った。

「大丈夫ですか!?」

男性は急いで、持っていたタオルで傷口を押さえると、その両端を脇の下に通し、縛り付ける。

「少し我慢してくださいね。」

男性は少し力を強め、ぐっと締めた。

「何故、あなたがたはここにいるんですか? 見たところ島の人でもなさそうですし。」

「私は、テラス……レグノ王国で王をしている者です。」

男性は一度、しかめっ面をするが、テラスの目を見て気が狂っているわけでも、からかっているわけでもなさそうであることが分かり、少し表情を緩める。

「聞いたことありませんが、とりあえず村に向かいましょうか。少し待っていて下さい。助けを呼んできますから。」

男性はそう言うと、立ち上がり森の中を駆け出していった。

「レグノ王国を知らない……? それに……島といったか……」

先ほどまでいたのはレグノ王国の東にある森・フォレスタであったはずの二人。

それがどこか島の中にいるらしいのだ。



それから程無くして、男性が連れてきた村人たちがテラスたちを村へと運んだ。

ベッドに寝かされ、医者の治療を受けるテラス。



「私はここの間宮島で長をしている者だが、いったい君たちは何者なんだね?」

待合室では座るクヨミを村人たちが取り囲むように座っていた。

クヨミは正直に話すが、村人たちはほとんど真面目に聞いていないようであった。

「レグノ王国なんざ聞いたことねえな。」

「密猟者かなんかじゃねえのか?」

クヨミとテラスに対する不信感が高まっていく。

その空気を変える様にある村人が駆け込んできた。

「どうした?」

息を荒げて入ってきたその村人を見て、ざわめく他の村人たち。

「さっき、こいつらがいた近くになんか得体の知れない黒い塊ができてる!」