「まずは階段を降りて、中庭を通って外に出る。」
テルは渡された地図を見て、そう小さく言う。
「っと、ストップ!」
ショウがアヤとテルを止める。
「あそこに兵士が立ってる。二人か……どうやって通り抜けるかだな。」
ショウが柱の影から階段の前にいる兵士二人の様子を見る。
「何食わぬ顔で行くのは無理かな?」
「武器持っていく散歩があるか? それも3人そろって。」
ショウはそう答えながら兵士二人を見つめていた。
「じゃあ強行突破か?」
「あのね、仲間呼ばれたらどうすんの?」
テルの軽はずみな言動にアヤが突っ込む。
「いや、考えている暇はない。ここは強行突破して早く城下町へ逃げ込むぞ。」
ショウはそう言って二人より先に駆け出した。
「え、ちょっと!」
アヤが驚くのも意に介さずに走っていく。
「ほーら。」
テルが舌を出してアヤを挑発すると逃げるようにショウの後を追っていく。
「ムカッ……」
アヤもテルにイラつきながら後を追って走り出した。
「……静かに、頼むぜ!!」
兵士が気がつき、構える前にショウは一人の兵士を一閃する。
もう一人が構えると同時にショウは体を回転させ、二人目を斬った。
「容赦ねぇなー…」
後から追いついたテルがのびている兵士たちを見て苦笑いをする。
「死なないように手加減してるし、みねうちだ。急ぐぞ」
ショウはそう言うとすぐに階段を駆け降りていく。
そこに追いついたアヤがテルに対し、蹴りを食らわして通り過ぎていった。
「イテッ!!」
テルは蹴られた足を抑えた後、ため息をついて二人の後を追った。
階段を降りきった所にも二人の兵士がおり、ショウは回転斬りで二人を倒す。
階段から少し廊下を走っていくと3人は中庭へと到達した。
「ここは、中庭か?」
中庭の4方向はレンガ式の壁に囲まれており、その方向それぞれに中へと入る穴が開いている。
そんな中庭の中心に位置するベンチに座る少女が一人いた。
透明感のある白のドレスに身を纏いながら空を眺めている。
3人の気配に気がついたのか少女は3人のほうに目を移す。
「あなたたちは?」
少女はどこかぼーっとした感じでそう聞く。
「えっと抜け出そうと……」
少女の質問の答えには一切ならない返答をするテル。
「出口はあっちです。」
そう言って少女は自分から見て右側の壁の穴を指差す。
「あ、ありがとう……えっと、君は?」
テルは頭を掻き、苦笑いしながら少女に聞く。
「私はマユ。ここの王女候補です。」
マユは寂しくテルにそう呟いた。
「王女……候補?」
「はい、テラス様の御曹司・テル様の嫁候補としてこの城へ参りました。」
マユはそう言って微笑む。
「よ、嫁候補!?」
テルがおどおどする横でアヤはなにやらムスッとした表情になった。
「はい、お会いしたこともないのですが、テラス様のお眼鏡にかかり、故郷・ラゴ村から……」
マユが答える表情はどこか寂しそうであった。
「そうか。」
ショウはそう呟いて、先ほどマユが指差した方へと走り出した。
「お、おい!」
テルが挙動不審になりながらも慌ててショウの後を追っていく。
その横ではアヤとマユは何故か見つめ合っていた。
(何なんだろう……どこか同じ感じが……)
そんな違和感を持ちながらマユを見つめるアヤ。
「おい、行くぞ?」
ショウの声にはっとなりアヤは慌てて走り出した。
そして中庭から再び建物内へと入る3人。
「私を解き放って下さる王子様ではなかったのですね……」
皆がいなくなった中庭でマユは一人出口を眺めながら寂しそうにそう呟いた。