「君の父親・テラスはこの国の王だった。20年前に反逆に会い、テラスは死ぬところを何とか『ヴェリタ』へ逃げることができた。

反逆をしたものはそれをいいことに、自らをテラスと偽ることで国王として権力を握った。邪魔になるある男を反逆者として仕立て上げたのだ。

そんなときに2年前、私の前に国王とそっくりな男が現れた。それがおそらく本当のテラス、君の父親なんだろう。私と君の直感を信じるのならば。

テラスは単身で偽国王に抗おうとしていたのを私が止めた。力をつけてからでないと、偽国王に潰されることが目に浮かぶ。

どう考えても国民たちには本当のテラスが偽国王だとしか思えないのだ。もうすでに偽国王は18年国王をやっているのだからな。

それでテラスは今、準備をして機をうかがっているはずだ。」

テルは告げられることにただただ困惑するだけだが、男の話にはどこか真実味がある。

知らないことばかりで、自分が麻痺してしまったのかもしれないけれども、その内容なら納得できる自分がいた。

「そして今の国王・偽テラスが君を無理に連れてきた理由も分かる。王家の鍵だ。」

そう言ってテルの首にかかっている鍵を指差した。

「その鍵だけじゃなく、何か父親から聞いているだろう? それが王家の鍵になる。内容は言うな。」

テルは自分の首に下げてある鍵を見つめる。

テルの頭には昔、父親が言っていたあることが思い出される。

「そして、ここまでが前提の話だ。私は君たちを逃がしにここまでやってきたのだ。」

男はそう言うと立ち上がり、一枚の紙をテルに手渡した。

「ここから、今出入りができる西門までの地図、そして脱出用の舟が止まっている場所を示す地図だ。」

男は部屋を先に出るために扉に手をかける。

「これから先は表立って君たちに助力はできない。あとは頑張って逃げてくれとしか言えない。」

そういい残すと男は部屋から出て行った。

「さて、あの男は信じていいものか。」

ショウは小さく呟いた。

「俺は……いいと思う。」

テルはそう言って二人のほうを向く。

「何でかは分からないけど。」

テルの言葉にアヤはまたため息をつく。

「まぁ、考えても意味無いか。私もここ窮屈だからさっさと逃げよ。」

アヤはそう言って自分の魔槍を手にする。

「仕方ねえな。行くか。」

ショウも自分の大剣を背に担いだ。

テルも二丁の拳銃を手にする。

「自分の身は……」

「自分で守るだろ?」

アヤの言葉をさえぎるとテルはそう言って悪戯に笑う。



3人は夜も更けた城内の廊下へ静かに抜け出した。