自分に起きた現象をゆっくりと話したテル。

「あんた、やっぱり記憶喪失じゃないじゃん……」

アヤはそう呟いて寂しそうに俯く。

「私には、幼少の記憶が無いの……」

アヤの言葉にテルだけでなくショウも驚いた顔をする。

「リョウは事故にあって記憶喪失だって言ってた。もう10年前らしいけど、それ以前が思い出せない。」

「ちょっと待て、リョウ?」

珍しくショウが反応を示す。

「え? 私を育ててくれたのがリョウって人。事故で両親は亡くなったから……そういえばショウと同じような金髪の男の人だった。」

ショウの目が大きく見開く。

「どこにいるんだ!? そのリョウって男は!」

ショウが身を乗り出して聞くため、アヤは驚いて後ろに体を傾ける。

「お、おい、落ち着けよ。」

もはや話の中心でなくなったテルが焦るショウをなだめる。

「わ、悪い。」

ショウは落ち着いて、元々座っていた椅子に座った。

「リョウは、2年前に突然姿を消した。私にも何も言わずに。」

アヤはそう言って寂しそうに寝転がった。

それを聞いてショウも悲しそうに息を吐く。

「そうか……話がそれてすまなかった、さっきの話を聞いていて思ったんだが、今もテルにとってはこれが夢なのか?」

ショウは気をとりなおしてテルに疑問を投げかける。

「あ……そうなのか?」

あまりにも夢と思えない内容であるため、テルはこの世界が夢であるということを忘れかけていた。

(これが、夢だったら……おれは今、校庭で寝てるのか? それに夢にしては長くないか?)

「わからねえ……」

テルはそう言って首を横に振った。

コンコンと扉をノックする音が聞こえ、3人の間に少し緊張感が漂った。

扉が開くと、そこには王の間にいた赤い鎧の男がいた。

今は鎧を身に着けてはいないが、最低限の装備は携帯している。

「突然の訪問すまない。」

男は扉を閉めると小さな声でそう言うと頭を軽く下げた。

「あまり時間も無いので、率直に聞く。テル、君の父親は今日会った男と瓜二つであるのか?」

テルは突然の来訪に加え、突然の質問に一度固まってしまうがゆっくりと頷いた。

「ならば君の父親は彼では無い。私は2年前に君の父親に会っている。」

「父さんに会った? 二年前に死んだんだぞ?」

テルが声を少し荒げると、男は人差し指を立てて自分の唇の前へと持っていく。

「それは『ヴェリタ』からこっちの世界『ソグノ』に戻ってきたからだ。その話は真実だ。今から話すことをとりあえず一度聞いて欲しい。」

そう言って、男は2年前のことを話し始めた。